社交文書や儀礼文書は、実務的な業務と結びつくことは少ないものの、顧客や取引先との信頼関係を築く基礎となるものです。常識やマナーが問われるので、書式に則り、誠意を尽くして書き上げないといけません。先方の心に響く文書になるよう、敬意のこもった表現も大切です。
横書きのビジネス文書だけでなく、改まった手紙を書くときに使用することの多い縦書きの社交・儀礼文書の書き方も覚えておきましょう。
社交・儀礼文書の基本構成と書き方
実務的なビジネス文書と違って、社交文書や儀礼文書は縦書きで書くのが一般的です。社交・儀礼文書を構成する以下の7つの構成要素をご覧ください。
縦書きのビジネス文書に比べ、タイトル(件名)を省略し、日付・発信者名・宛名を本文の後にまわす書式を用いるケースが増えています。それでは7つの構成要素の書き方を順に見ていきましょう。
1.前文
前文は、主文で用件を伝える前置きの挨拶言葉です。大きく分けて4つの項目で構成されています。前文からそれぞれの挨拶言葉に該当するのは以下のとおりです。
前文 | 挨拶言葉 |
拝啓 | 頭語 |
新緑の候 | 時候の挨拶 |
いよいよご清栄のこととお慶び申し上げます。 | 相手の安否を気遣う挨拶 |
平素は格別のお引き立てをいただき厚く御礼申し上げます。 | 日頃の感謝の挨拶 |
頭語~日頃の感謝の挨拶までの、4つの項目について解説していきます。
(1)頭語
社外文書は一般的に「拝啓」「謹啓」といった頭語から書きはじめ、「敬具」「敬白」などの結語で締めくくります。書くときは用件や先方との関係を考慮して、適切な頭語と結語を選ばなくてはなりません。詳しくは、頭語・結語の組み合わせをご覧ください。頭語は行頭に書き、頭語の後には読点(、)や句点(。)は入れず、一字分の空きを取ります。
(2)時候の挨拶
頭語のあとは、時候の挨拶を書きます。時候の挨拶とは、文書を出す時期の気候や季節感を表す挨拶言葉であり、漢語調のものと口語調の2種類が存在します。
また、月ごとに決まった表現があり、上記の例文にある「新緑の候」は5月の漢語調の表現となっています。ビジネス文書やあらたまった手紙では、一般的に漢語調の表現を用いられるため、覚えておきましょう。文書を出す時期に合った挨拶言葉を調べたい人は「時候の挨拶」をご覧ください。
(3)相手の安否を気遣う挨拶
相手の安否を気遣う挨拶では、慣用的な表現を用います。とくにビジネスでは、先方の繁栄を喜ぶ言葉を書くのは大切なマナーです。書き方や種類については、先方の安否を気遣う挨拶を見てくださいね。
注意点:お見舞い状やお悔やみ状といった弔事など、先方が明らかに喜ぶべき状態にない場合は、書きません。
(4)日頃の感謝の挨拶
日頃から付き合いのある顧客や取引先に対して、感謝の言葉を入れることでより丁寧な文書になります。こちらも慣用的な表現を用いますが、相手に好印象を与えることができます。日頃の感謝の言葉は、場合によっては「ご無沙汰のお詫び」や「突然の連絡のお詫び」といった表現で書くときもあります。詳しくは、日頃の感謝の挨拶で確認してください。
2.主文
主文では、文書の用件(本題)を伝えます。
起こし言葉を用いよう
主文を書きはじめるときは「さて」「ところで」などの起辞(起こし言葉)を用いると、読み手も「ここからが本題か」とすぐに理解することができます。詳しい書き方は起辞(起こし言葉)をご覧ください。
主文を書くときの注意点
主文では敬意のこもった自分なりの表現を工夫することが大切です。しかし、尊敬語や謙譲語などの敬語の使い方や、二重敬語には気を付けないといけません。また不幸が繰り返すことを連想させる「重ね重ね」などの忌み言葉にも注意しましょう。
3.末文
末文とは、本文を締めくくる挨拶のことです。まずは結びの挨拶を入れ、「敬具」などの結語を記します。
(1)結びの挨拶
主文で用件を伝えたら、改行して一字分下げ、結びの挨拶を書きます。文書の種類に合わせて「結びの挨拶の例文」から選びましょう。
(2)結語
結語は「敬具」「敬白」などの言葉のことで、頭語とセットで用います。頭語と結語は組み合わせが決まっているので、なんでも使っていいという訳ではありません。詳しくは頭語・結語の組み合わせをご覧ください。結語は意外と書き忘れてしまうことも多いのですが、本文は一般的に「頭語」ではじまり「結語」で終わるとしっかり覚えておきましょう。
4.日付
日付には文書の発信日を和暦で書き、漢数字(一、二、三…)を用います。ビジネス文書では一般的に和暦を使用するのがマナーです。ただし、海外に子会社や取引先があるとき、もしくは外資系企業では、西暦を用いることもあるため、会社のルールに則って書くようにしましょう。
5.発信者名
発信者名には、文書の差出人について書きます。書く項目は以下の4点です。
- 会社名
- 部署名
- 役職名(肩書き)
- 氏名
発信者名を書くときの例をご紹介します。以下をご覧ください。
上記の例では会社名を行末に合わせていますが、部署名や役職名の高さに合わせて書いても良いでしょう。ただし、長くなりすぎると、宛名と同じ高さになってしまう場合もあると思います。文書の基本マナーとして、宛名は発信者名よりも上の位置にくるように書かないといけません。その場合は、行末に合わせるほうが無難です。
6.宛名
宛名は、文書を送る相手のことを書く項目です。差出人のときと同様、会社名、部署名、役職(肩書き)、氏名を間違いのないように書きます。宛名は、発信者名を書き終えたら改行して、行頭から書きはじめます。見た目のバランスを考えて、2列で書きましょう。
7.別記
別記は、主文に入れなかった詳細について書きます。書きはじめは中央に「記」、必要事項を書き終えたら、最後は「以上」と書いて締めくくります。具体的な別記の例文やパターンについては別記の書き方をご覧ください。