代表的な頭語・結語の「拝啓・敬具」はどんな手紙にも使える万能の言葉ではありません。目上の人と話すときと親しい友人との会話では、立場をふまえた話し方に変えるように、手紙についても状況や相手に応じて、頭語・結語を使い分ける必要があります。
手紙を送る相手との関係性や、目的に応じた頭語・結語の組み合わせや正しい書き方について、お伝えします。
頭語・結語とは
たとえば、人の家を訪れたときには、いきなり中に入るのではなく、まず「ごめんください」などの挨拶で呼びかけます。それと同様に、手紙や文書を書くときには、一般的に「拝啓(はいけい)」など独特の言葉をつかって挨拶をします。頭語・結語の意味は以下の通りです。
- 頭語:「こんにちは」などの挨拶にあたる言葉
- 結語:「さようなら」「それではまた」といった挨拶にあたる言葉
頭語は、文章の書き出しに記入する言葉であり、結語は文書の末尾を結ぶ言葉です。
頭語・結語の組み合わせ
頭語と結語には一定の対応関係があります。たとえば頭語に「拝啓」を用いたら、結語は「敬具」となります。間違った組み合わせを使用しないよう、正しい組み合わせを覚えておきましょう。以下をご覧ください。
太字を組み合わせるのが一般的です。それ以外はどう組み合わせても良いとされています。
手紙の種類 | 頭語 | 結語 |
一般的な手紙・文書 |
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丁寧な手紙・文書 (祝い状・礼状・ 詫び状など) |
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急ぎの手紙・文書 (見舞状など) |
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略式の手紙・文書 (抗議状など) |
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初めての相手に 出す手紙 |
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重ねて出す手紙・文書 |
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返信の手紙・文書 |
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お悔やみ状 | ※頭語は省略する |
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また、女性の私信の場合には「拝啓」「謹啓」といった一般的な頭語のほかにも「一筆申し上げます」などの女性ならではの頭語を使うこともあります。以下をご覧ください。太字が一般的に使用されます。赤字の「あらあらかしこ」「めでたくかしこ」は、最近ではほとんど使われない結語です。
手紙の種類 | 頭語 | 結語 |
一般的な手紙 |
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あらたまった手紙 |
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急ぎの手紙 |
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前文を省略する手紙 |
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返事の手紙 |
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再信の手紙 |
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初めての相手に 出す手紙 |
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「かしこ」のような、文章をやわらげる、女性特有の言い回しは、ビジネスに関する手紙や文書には不向きです。「かしこ」は避け、「拝啓・敬具」などを使用しましょう。また、頭語・結語の組み合わせを混同すると、相手は非常識な印象を持ってしまいます。マナー違反となるので気をつけましょう。
頭語・結語の使い方
頭語・結語をつかうときの決まりはしっかり覚えておきましょう。
1.頭語・結語を書く位置
文章に記載する箇所は、書式で決まっています。縦書きと横書きの頭語・結語の記入箇所は以下のとおりです。
縦書きの頭語・結語を書く位置
手紙・はがき・社交文書を書くときは、縦書きが適しています。頭語・結語も上記のように前文の書き出しと、文章の末尾に書きます。
横書きの頭語・結語を書く位置
実務に関係したビジネス文書を書くときは、横書きを使用します。頭語・結語の位置を文中に書いてしまわないよう、注意しましょう。
2.頭語・結語の書き方
頭語は、行頭に書きます。頭語の前にスペースを取る必要はありません。また、頭語のあとには、読点(、)句点(。)はいれず、1文字分のスペースを取りましょう。結語は、末文を改行して書きます。横書きの場合は右端に記入し、縦書きの場合は行末から1字上がったところで終わるように書きます。また、結語を入れ忘れてしまうことのないよう、最後にチェックしましょう。
3.前文を省略したいとき
手紙を書くときは前文から書き始めます。前文は通常、「頭語→時候の挨拶→相手の安否を気づかう挨拶→感謝の言葉」の順に書きますが、これらは「前略~草々」を使うことで、省略することも可能です。前略には「冒頭の挨拶を省かせていただきます」、草々には「あわただしくて申し訳ございません」という意味があります。前略を書くときの例文を以下に記載します。
上記のように、お見舞い状を書くときは「前略」を使用します。※お悔やみ状では前文・前略ともに不要。ですが、お礼状やお祝い状などの手紙や、ビジネス文書を送るときには適しません。前略には「前文を省略します」という意味があるため、使用を控えましょう。もちろん、相手が目上の人の場合も好ましくありません。家族や親しい間柄の人に手紙を書くときでも、頭語からはじまる書式のルールは守りましょう。
さいごに
さいごに、状況や相手に応じて使い分ける、一般的な頭語・結語の組み合わせ例をご紹介します。
- 一般的な手紙:拝啓-敬具
- あらたまった手紙:謹啓-謹言
- 前文を省略する手紙:前略-草々
- 緊急の手紙:急啓-草々
- 返信の手紙:拝復-敬具
頭語は文章を読み始める冒頭にくる言葉。失礼があってはなりません。相手との関係性や状況に適した言葉を使い分けましょう。