4月に適した時候の挨拶を知りたい人に向けて、上旬・中旬・下旬のそれぞれの時期にふさわしい季節の挨拶を、例文つきでご紹介します。
取引先などに礼節をわきまえたビジネス文書を送るときと、親しい友人に手紙を送るときでは、書く内容は変わります。マナーが身につくよう、押さえるべきポイントも記載しているので、ご覧ください。
目次
4月の時候の挨拶を書く前に理解すべき2つのこと
時候の挨拶を書く前に理解しておくべき2つのポイントからお伝えします。
手紙の送付日によって「書き出し」がかわる
夏の暑い時期に「酷寒の候」や「寒冷の候」など冬の挨拶を用いると不自然なように、時候の挨拶は、手紙を出す時期によってかえる必要があります。手紙を送付する日が、二十四節気(太陰太陽暦)や旧暦のいつ頃かによって、時候の挨拶もかわるのです。まずは手紙を出す日がいつなのかを確認し、その上で、以下に記載している4月の二十四節気のどの時期に該当するかを理解しましょう。
- 春分(しゅんぶん):3月21日頃~4月4日頃
- 清明(せいめい):4月5日頃~4月19日頃
- 穀雨(こくう):4月20日頃~5月5日頃
※二十四節気の変わる時期を「頃」と目安にしているのは、その年によって季節感が異なるためです。
暖冬や冷夏があるように、季節もその年によって移り変わる時期や気候はさまざま。今の季節は例年と比べて暖かいのか、寒いのか、移り変わりの早さなどを考慮して、時候の挨拶を選びましょう。
4月の季語を入れる
時候の挨拶は、季節や天候に応じた心情や季節感を表す言葉。手紙にも4月の季語を使うのがマナーです。書くときの参考になる、4月の季語をご紹介します。
- 動物:雀(すずめ)・雲雀(ひばり)・燕(つばめ)・おたまじゃくし・蝶々
- 植物:桜・山桜・八重桜・チューリップ・山吹・金鳳花(きんぽうげ)・木蓮(もくれん)・連翹(れんぎょう)・菜の花・卯の花・筍(たけのこ)
- 風物:お花見・花見団子・草もち・桜前線・花吹雪・潮干狩り・入学式
続いては4月に適した時候の挨拶と、文例を見ていきましょう。
改まった手紙に適した「漢語調」の時候の挨拶・書き出し
漢語調の時候の挨拶は、ビジネス文書を書くときや、かしこまった表現を用いるときに適しています。
春分:4月上旬(4月4日頃まで)の時候の挨拶
4月上旬は、二十四節気のうち、春分(3月21日頃~4月4日頃)の時候の挨拶を用います。以下に読み方や意味について記載します。
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時候の挨拶 | 読み方 | 意味・由来 |
春分の候 | しゅんぶんのこう | 今年もいよいよ春分を迎え |
春暖の候 | しゅんだんのこう | 春の暖かさを感じる今日この頃 |
春陽の候 | しゅんようのこう | 春の日差しを感じるこの頃 |
仲春の候 | ちゅうしゅんのこう | 春もちょうど折り返しの時期になりました |
※「〇〇の候」は「〇〇というふうに季節も移り変わってきましたが」という意味です。
春分は二至(夏至・冬至)、二分(春分・秋分)として四季の中央におかれています。春分の日は、昼夜の長さがほぼ等しくなるとされていますが、日本では昼のほうが14分ほど長いです。
時候の挨拶の例文
4月上旬に適した時候の挨拶を例文で見ていきましょう。
文章の書き出しは、書式が決まっています。その順序は「頭語→時候の挨拶→相手の安否を気遣う挨拶→日頃の感謝→(主文・末文)→結語」です。ビジネス文書の構成が正しく書けているか自信のない方は「ビジネス文書の基本構成と書き方」を確認しておきましょう。
丁寧な表現の例文 粛啓 春分の候、貴社にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃は特段のご愛顧にあずかり誠にありがとうございます。 (主文・末文省略) 敬白 |
粛啓は「つつしんで申し上げる」という意味です。その他の丁寧な文書に適した頭語は「謹啓・恭啓・謹白」などがあります。結語は「敬白・謹言・再拝」にしましょう。なお、頭語・結語の正しい組み合わせを理解し、相手によって上手く使い分けたいときは「頭語・結語の正しい使い方・組み合わせ」をご覧ください。
一般的な表現の例文 拝啓 春陽の候、貴殿におかれましてはいよいよご清祥の趣、お喜び申し上げます。いつもなにかとお引き立てにあずかり誠にありがとうございます。 (主文・末文省略) 敬具 |
親しい間柄の人に送る場合や、一般的な表現を用いるときは、頭語は「拝啓」、結語は「敬具」にしましょう。
清明:4月中旬(4月5日頃~4月19日頃)の時候の挨拶
4月中旬は、二十四節気のうち、清明(4月5日頃~4月19日頃)の時候の挨拶を用います。読み方や意味を以下に記載します。
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時候の挨拶 | 読み方 | 意味・由来 |
桜花の候 | おうかのこう | 桜の花が咲く季節となりました |
麗春の候 | れいしゅんのこう | 日が柔らかくのどかに照る春の季節 |
清和の候 | せいわのこう | 空が晴れてのどかな今日この頃 |
春爛漫の候 | はるらんまんのこう | 春の花が美しく咲き乱れる季節 |
春風駘蕩の候 | しゅんぷうたいとうのこう | 春の暖かい風が穏やかに吹く季節 |
春粧の候 | しゅんそうのこう | すっかり春らしくなったこの頃 |
桜が満開になる春の美しさは、四季のなかでもひときわ目立つ存在です。4月の時候の挨拶は、春の到来を表現する言葉が多く、手紙を読んだ相手に強い印象を与えるでしょう。
時候の挨拶の例文
4月中旬の時候の挨拶をご紹介します。
丁寧な表現の例文 謹呈 麗春の候、貴社ますますご清栄のことと慶賀の至りに存じます。平素は身に余るご高配にあずかり誠にありがとうございます。 (主文・末文省略) 謹白 |
頭語の「謹呈」は「つつしんで申し上げます」、「慶賀」は「よろこび祝うこと」という意味です。「高配」は「相手の配慮や気遣いなどを敬っていうこと」。文章の意味を理解し、送る相手にふさわしい言葉かどうか見極めましょう。
一般的な表現の例文 拝啓 春粧の候、貴殿いよいよご健勝のこととお喜び申し上げます。いつもひとかたならぬご配慮をいただき誠にありがとうございます。 (主文・末文省略) 敬具 |
ビジネス文書の頭語は一般的に「拝啓」、結語は「敬具」を用いますが、相手が目上の人の場合、「謹啓・謹白」の頭語・結語の組み合わせをつかいましょう。
穀雨:4月下旬(4月20日頃以降)の時候の挨拶
4月下旬は、二十四節気のうち、穀雨(4月20日頃~5月5日頃)の時候の挨拶を用います。以下に読み方や意味を記載します。
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時候の挨拶 | 読み方 | 意味・由来 |
晩春の候 | ばんしゅんのこう | 春もいよいよ終わりに近い今日この頃 |
惜春の候 | せきしゅんのこう | 過ぎ行く春を惜しむ今日この頃 |
穀雨の候 | こくうのこう | 五穀豊穣をもたらす春の雨が降る季節 |
※「〇〇の候」以外にも、「〇〇のみぎり」「〇〇の折」もつかえます。
二十四節気の春は、立春に始まり、穀雨で終わります。穀雨には百穀を潤すという意があり、季節を表す七十二候では、穀雨は5日おきに以下の表現をされています。
- 葭始生(あしはじめてしょうず):葦(あし)が芽生え始める時期(4月20日頃)
- 霜止出苗(しもやんでなえいずる):霜が終わって稲の苗が生長する時期(4月25日頃)
- 牡丹華(ぼたんはなさく):牡丹の花が咲く時期(4月30日頃)
覚えてきましょう。
時候の挨拶の例文
丁寧な表現の例文 恭啓 晩春の候、貴社にはいよいよご盛栄の段、お慶び申し上げます。平素は格別のご厚情をいただき厚く御礼申し上げます。 (主文・末文省略) 頓首 |
恭啓は「うやうやしく申し上げる」、盛栄は「商売などが盛んになること」という意味です。
一般的な表現の例文 拝呈 惜春の候、貴殿にはますますご健勝のことと、お喜び申し上げます。常々なにかとお心配りを賜り誠にありがとうございます。 (主文・末文省略) 敬具 |
健勝は「健康で元気な様子」の意です。時候の挨拶に限らず、言葉の意味を理解して用いるようにしましょう。
親しい人に送る「口語調」の時候の挨拶
気心の知れた友人や長年の付き合いのある相手に手紙を送るときは、堅苦しい挨拶を避けて、やわらかい表現の口語調を用います。親しい相手に送る時候の挨拶をご紹介していきます。
春分:4月上旬(4月4日頃まで)の時候の挨拶・結びの言葉
季節感のある挨拶と、慣用句として使いやすい結びの言葉は以下のとおりです。
時候の挨拶
- 桜花満開の好季節がやってまいりました。
- 春爛漫の好季節、お健やかにお過ごしのことでございましょう。
- 桜の樹下を花衣の人々が行き交う、うるわしい春の日となりました。
- 花祭りの時期となりましたが、つつがなくお過ごしでしょうか。
- どんよりとした花曇りの日が続いておりますが、つつがなくお過ごしでしょうか。
- 花嵐のうらめしい今日この頃、お元気でいらっしゃいますか。
- 春宵一刻価千金の頃となり、ますますご壮健にてお過ごしのことと存じます。
- 川面に美しい花筏が流れるこの頃、お元気でいらっしゃいますか。
結びの言葉
- 花の季節ですが、まだ朝晩は肌寒くございます。どうかご自愛ください。
- 花冷えのする折から、油断されませんようおからだにご留意ください。
- 新年度に入り、なにかとお忙しい毎日でしょうが、ご自愛専一に。
春爛漫とは、春になり、光り輝いてでもいるかのように桜の花が咲き乱れる様子を表しています。
時候の挨拶の例文
丁寧な表現の例文 謹啓 桜の樹下を花衣の人々が行き交う、うるわしい春の日となりました。ますますご隆盛の由、欣快の至りに存じ上げます。日頃は何かとご高庇にあずかり、厚く御礼申し上げます。 (主文省略) 花の季節ですが、まだ朝晩は肌寒くございます。どうかご自愛ください。 謹白 |
花衣は、桜の花びらが人に降りかかっていることを、人が桜の花でできた衣を着ているように見立てていった言葉です。
一般的な表現の例文 拝啓 春宵一刻価千金の頃となり、ますますご壮健にてお過ごしのことと存じます。常々たくさんのお心尽くしをいただき、感謝の念にたえません。 (主文省略) 花冷えのする折から、油断されませんようおからだにご留意ください。 敬具 |
春宵一刻値千金(しゅんしょういっこくあたいせんきん)は、中国の有名な詩の一節。花が盛りであり、月もおぼろにかすむ春の夜はあまりにすばらしく、千金の価値があるという意味です。
清明:4月中旬(4月5日頃~4月19日頃)の時候の挨拶・結びの言葉
4月中旬に適した時候の挨拶・結びの言葉は以下のとおりです。
時候の挨拶
- 春の夜のおぼろ月に風情を感じる季節となりました。
- 天も地も躍動し、ここかしこ生命の力があふれる時節となってまいりました。
- 若草の緑がまぶしい季節となりましたが、お健やかにお過ごしでしょうか。
- 色とりどりにさまざまな花が咲き競う、美しい季節を迎えました。
- 川辺の柳も青々と芽吹き、すっかり春めいてまいりました。
- 葉桜のみぎり、いかがお過ごしですか。
- 春のうららかな日差しが、顔をのぞかせた若草にも降りそそいでいます。
- 野辺にかげろうの燃える季節となりました。
結びの言葉
- 春暖のみぎり、お元気にてご活躍ください。
- 急に寒さのもどることもございます。おからだを大切になさってください。
- おぼろ月にさそわれるままに、とりとめのないことを書き綴りました。
葉桜とは、花が散ってしまった後、若葉の出始めたころの桜を指して言います。
時候の挨拶の例文
丁寧な表現の例文 粛啓 春の夜のおぼろ月に風情を感じる季節となりました。あなた様にはその後もお変わりなく、ご精勤なさっていることと拝察いたします。私事ではございますが、当方一同無事消光いたしておりますのでご安心ください。 (主文省略) 春暖のみぎり、お元気にてご活躍ください。 頓首 一般的な表現の例文 拝啓 色とりどりにさまざまな花が咲き競う、美しい季節を迎えました。日々お元気でお勤めのこととお喜び申し上げます。私どもも誰一人病気もせず、壮健にしておりますのでご安心ください。 (主文省略) 急に寒さのもどることもございます。おからだを大切になさってください。 敬具 |
おぼろ月とは、春の夜空に浮かんだ、ほのかにかすんで光のやわらかくなった月のことです。
穀雨:4月下旬(4月20日頃以降)の時候の挨拶・結びの言葉
4月下旬に適した時候の挨拶・結びの言葉は以下のとおりです。
時候の挨拶
- 花の盛りもあわただしく去り、いよいよ春も深まってまいりました。
- しめやかな雨に、川辺の柳の緑もかすんで見える静かな春の午後となりました。
- 頬をなでて吹き過ぎていく南風の暖かさにも、なぜか心が浮き立つ今日この頃です。
- 雨に濡れた新緑のますますあざやかな今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
- 心地よい春の陽気を惜しむように、時もゆったりと流れていくようです。
- 春光をいっぱいに浴びつつ、野山を散策したい今日この頃です。
- 卯月にふさわしく、庭の卯の花がようやく白い花を咲かせました。
- 春風にさそわれて、つい外出の多くなるこの頃です。
結びの言葉
- 春光あまねく満ちわたる季節、皆様のご多幸をお祈りいたします。
- 春の陽気にさそわれたなら、どうか当地へもぜひお出かけください。
- ウィークエンドをご家族と思う存分楽しんでください。
春に移り変わる季節感のある挨拶を手紙に書きましょう。
時候の挨拶の例文
丁寧な表現の例文 謹呈 花の盛りもあわただしく去り、いよいよ春も深まってまいりました。おからだの具合はいかがでしょうか。ご案じいたしております。私どもは皆変わりなく壮健に暮らしておりますので、余事ながらご休心ください。 (主文省略) 春光あまねく満ちわたる季節、皆様のご多幸をお祈りいたします。 謹白 一般的な表現の例文 拝啓 卯月にふさわしく、庭の卯の花がようやく白い花を咲かせました。ご機嫌いかがでいらっしゃいますでしょうか。私どもも誰一人病気もせず、壮健にておりますのでご安心ください。 (主文省略) 春の陽気にさそわれたなら、どうか当地へもぜひお出かけください。 敬具 |
卯の花は、ユキノシタ科の落葉低木である「うつぎ」の花のこと。「うつぎ」は山野に自生し、庭木として植えられます。春の終わりから初夏に、白い花を咲かせます。
さいごに
4月はエイプリルフール(1日)、釈迦誕生日(8日)、ゴールデンウィークなどの行事・祝日があります。
入学や入社、転勤・異動で環境が変わる人も多いため、そのような相手に手紙を送るときは門出の言葉を添えるのもよいでしょう。