自分では正しいつもりで、自覚がないまま間違った敬語を使い、知らないうちに相手の心証を損ねていることもあります。
敬語を使うにあたって、どんな間違いを起こしやすいか、どこに注意すべきなのかを知っておくことが大切です。
覚えておきたい敬語のルールをご紹介していきます。
1.自分方に尊敬語を使ってはいけない
自分や自分の身内の動作などを尊敬語で表現するのは間違いです。たとえ会社の上司のことについて話すときでも、相手に伝えるときは、へりくだった表現をするのが正しい伝え方です。
間違った敬語の表現 | 正しい敬語の表現 |
おいしく召し上がりました | おいしくいただきました |
弊社の部長がおっしゃっています | 弊社の部長が申しております |
当社の課長がお訪ねになります | 当社の課長がうかがいます |
身内に関する話題をお客様に話すとき、それぞれの立ち位置が分からなくなって、間違って身内に尊敬語を用いてしまうことがあります。注意しましょう。
2.相手に謙譲語を使わない
尊敬語と謙譲語を混同して、相手の動作などを謙譲語で表現してはいけません。相手に不快な思いをさせるかもしれないので、絶対に避けましょう。
間違った敬語の表現 | 正しい敬語の表現 |
どちらにいたしますか | どちらになさいますか |
担当者にうかがってください | 担当者にお尋ねください |
資料を拝見してください | 資料をご覧ください |
相手に間違って謙譲語を使ったことのある方、敬語の使い分けに自信のない方は、尊敬語・謙譲語・丁寧語の敬語表現を復習し直しましょう。それぞれの使い分けを整理した「敬語の正しい使い方」をご覧ください。
3.謙譲語を尊敬語のように用いない
相手の動作に「申す」「参る」「いただく」といった謙譲語を使ってはいけないのはもちろんですが、たとえそれらに尊敬語の「れる」をつけ加えても。相手を敬った表現にはならないので注意しましょう。
間違った敬語の表現 | 正しい敬語の表現 |
〇〇様が申されたことです | 〇〇様がおっしゃったことです |
いつ弊社へ参られますか | いつ弊社へいらっしゃいますか |
皆様でいただかれてください | 皆様で召し上がってください |
4.二重敬語は避ける
丁寧に表現すればいいと思い、1つの言葉に二重に敬語表現を用いないようにしましょう(※日本語には、天皇陛下や皇族に対してだけ二重敬語が用いられる習慣がありました)。
間違った敬語の表現 | 二重に用いた敬語 | 正しい敬語の表現 |
お読みになられる | (1)「読まれる」+(2)「お~になる」 |
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お読みになっていらっしゃる |
(1)「お~になる」+(2)「いらっしゃる」 |
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ご注文になられる | (1)「注文される」+(2)「ご~になる」 |
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ご覧になられる | (1)「ご覧になる」+(2)「~られる」 |
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お見えになられる | (1)「お見えになる」+(2)「~られる」 |
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おっしゃられる | (1)「おっしゃる」+(2)「~られる」 |
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敬語表現が重複しないよう、言葉の使い方には注意しましょう。しかし、慣用的な表現として許容されている二重敬語もあります。たとえば「お召し上がりになる」や「おうかがいする」は二重敬語ですが、ごく普通に使用されています。
- お召し上がりになる:「食べる」に二重に敬語表現を用いている
- おうかがいする:「訪ねる」あるいは「尋ねる」に二重に謙譲の敬語表現を用いている
正しい使い方と許容されている二重敬語の表現を理解し、相手によって使い分けができれば完璧です。
さいごに
敬意を表す言葉には注意が必要です。メールなどに「ご苦労様です」と書かれてきても、まったく気にならない人もいれば、それは「目上から目下にかける言葉」だとして不快に思う人もいます。「お疲れ様です」や「お世話様です」なら大丈夫かといえば、これも同様に「目上から目下にかける言葉」と考える人がいます。つまり、こちらが敬意を払ったつもりでも、相手はそう受け止めてくれないことがあるのです。そうした言葉の使い方は、相手の慣例に合わせるといいでしょう。