忌明けの法要をすませたら、法要を終えた報告を兼ねて、忌明けの挨拶状を送ります。挨拶状は、香典返しの品を添えて送るのが一般的ですが、弔問や会葬、香典などのお礼についても、あらためて伝えることが大切です。
ここでは、忌明けの挨拶状・香典返しの手紙の書き方やマナーについてお伝えします。文例もご紹介するので、手紙を書くときの参考にしてくださいね。
目次
忌明けの挨拶状・香典返しの手紙のマナー
まずは、忌明けの挨拶状や香典返しの手紙を書くときのポイントをお伝えします。相手に失礼のないよう、マナーや注意点について理解しておきましょう。
忌明けの儀式とは
仏教や神道、キリスト教でも喪に服する習慣はあり、それが明ければ挨拶状を出すのが礼儀です。それぞれの忌明けの時期の目安を理解しておきましょう。
仏教の忌明け
仏教では死亡後の7週間を中陰といい、「7日に1回、生前の罪が審判される」とされます。最初の7日目を「初七日」といい、最近では葬儀の後、骨迎えと合わせて行うことが多くなっています。
最後の裁きがある49日目は「満中陰(まんちゅういん)」といい、冥福を祈る「四十九日法要」を行います。「忌明け法要」「七七日忌の法要」「満中陰の法要」ともいわれ、これを過ぎると忌明けとなります。
神道・キリスト教の忌明け
法要は仏教の言葉ですが、仏教以外でも追悼儀式があります。神道では霊祭といい、葬儀の翌日から数えて50日目の「五十日祭」をもって忌明けです。
キリスト教では本来、忌明けや香典返しのしきたりはありませんが、日本では、プロテスタントの場合、死後1ヶ月目の「召天記念式」、カトリックの場合は30日目の「追悼会(追悼ミサ)」を忌明けと考え、返礼品も用意するのが通例になっています。
忌明けの挨拶は「頭語+お礼の言葉」から書き出す
忌明けの挨拶では、文頭に頭語をいれます。ただし、時候の挨拶や、相手の健勝を祝う言葉などは省きます。頭語を書き記したら、弔問や香典をいただいたお礼の言葉を述べ、忌明け法要が無事に済んだことを伝えましょう。ここでは、故人が生前お世話になった方々の心遣いに対する感謝の気持ちを伝えることが大切です。
そのあとは、戒名や法号を披露してもよいでしょう。香典返しを発送した場合はその旨を報告して、手紙での簡略な挨拶になることを詫びて結びます。
句読点はつけない
句読点は本来、文章を読みやすくして、読み手の理解を助けるためのもの。しかし、法要の書状では句読点をつけず、1字空きにするのが一般的です。
これは、毛筆で手紙を書いていたころの名残りであり、礼儀を重んじる弔事に際して、敬うべき相手に対して句読点を用いるのは失礼だという考えから、儀礼的な手紙では句読点を用いません。今でも、かしこまった手紙は手書きが正式とされており、印刷の書状でもその形式に則しています。
忌明けの挨拶状・香典返しの手紙の書き方
つづいては、忌明けの挨拶状・香典返しの手紙の基本構成と書き方についてご紹介します。挨拶状は、以下の図に示した「前文」「主文」「末文」「後付け」の4つの項目に分かれます。形式に従って書きましょう。
弔事に関する手紙は縦書きが基本です。親しい間柄の人に宛てる場合でも、カジュアルな印象を与える横書きは不適切です。間違えないよう注意しましょう。
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忌明けの挨拶状・香典返しの手紙の文例
文例1:忌明けの挨拶状(香典返しあり)
謹啓 皆様にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます さて先般 亡母〇〇の葬儀に際しましては ご懇篤なる御弔詞ならびにご厚情を賜り 厚く御礼申し上げます 本日 〇〇院〇〇〇〇大姉 七七日忌法要をとどこおりなく相営みました つきましては供養のしるしに心ばかりの品をお届けいたしましたので 何卒ご受納くださいますよう お願い申し上げます 本来拝趨のうえ ご挨拶を申し上げるべきところ 略儀ながら書中をもちまして御礼申し上げます 謹白 |
忌明けの挨拶は、時候の挨拶や、安否を尋ねる挨拶をまじえ、少しずつ心の余裕が出てきたことを表現します。宗派ごとの法要に書き換えるときは、文例中の下線部を、仏式の場合は「とどこおりなく満中陰の法要を相すませ 忌明けいたしました」、神道は「おかげ様で無事清祓の儀を執り行いました」、プロテスタントは「おかげをもちまして 本日とどこおりなく記念会を相すませました」、カトリックは「おかげをもちまして本日とどこおりなく追悼会を相すませました」とします。
文例2:忌明けの挨拶状(香典返しあり)
謹啓 向春の候 皆様におかれましてはご清祥のこととお慶び申し上げます 先般 母〇〇永眠の際はご丁寧なる弔慰を賜り なお格別のご芳志にあずかり まことにありがたく御礼申し上げます おかげさまをもちまして本日四十九日法要を相営みました つきましては供養のしるしに心ばかりの品をお送りいたしました 何卒ご受納くださいますようお願い申し上げます さっそく拝趨のうえお礼申し上げるべきところでございますが略儀ながら書中をもってごあいさつ申し上げます 謹白 |
文例中の下線部は「温かいお悔やみの言葉や過分なお心配りを賜りまして」と書き換えてもよいでしょう。忌明けの挨拶状では、法要が無事すんだことの報告とともに、相手の心遣いに対する感謝の気持ちを述べましょう。
文例3:忌明けの挨拶状(香典返しあり)
謹啓 先般 母 〇〇 儀 逝去の際は御懇篤な御弔詞を賜り その上 御鄭重な御供物を辱うし 御芳志の程誠に有難く厚く御礼申し上げます お蔭をもちまして 本日 清善院〇栄大姉 七七日忌法要相営みました 謹んでここに御報告申し上げます 就きましては供養の御印までに甚だ軽少ではございますが 心ばかりの品をお届けいたしました 何卒御受納くださいますようお願い申し上げます 本来ならば 拝趨の上親しく御礼申し上げるべき処でございますが 略儀ながら書中をもちまして謹んで御挨拶申し上げます 謹言 |
文例中の下線部の「辱うし」は「かたじけなうし」と読みます。相手から好意を受けることをへりくだっていう言葉のことです。この文例は、より丁寧で礼儀正しい文面です。
文例4:忌明けの挨拶状(香典返しなし)
謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます 亡夫〇〇儀 葬儀に際しましては ご多用中にもかかわらずご会葬をいただきましたうえ ごていねいなご芳志を賜り 厚く御礼申し上げます おかげをもちまして本日 七七日忌もとどこおりなく相すませました なお 皆様から賜りましたご芳志は 故人の遺志により〇〇〇〇へ寄贈し 供養に代えさせていただきました 何卒ご了承のほどお願い申し上げます まずは略儀ながら書中をもってお礼かたがたご挨拶申し上げます 謹白 |
香典返しをしない場合は、その理由を明記します。文例中の下線部を別の表現に書き換えるときは「ご厚志につきましては 誠に勝手ながら まだ幼い子どもたちの養育費に充てさせていただきたいと存じます」「はなはだ勝手ながら 葬儀の際拝受しましたご芳志は 故人の供養料に充てさせていただきたく存じます」などと書き添えましょう。