お歳暮には、一年間の感謝の気持ちが込められています。相手の心遣いを考えながら喜びを表現し、こちらも一年間お世話になった返礼の挨拶をしましょう。
ここでは、お歳暮のお礼状の書き方やマナーについてお伝えします。取引先などのビジネス関係者や、親しい友人からお歳暮をいただいたときの、お礼の手紙の文例もご紹介するので、参考にしてくださいね。
目次
お歳暮のお礼状のマナー
お歳暮とは、年の暮れのことで、その年に受けたお世話に感謝するための贈答の習慣を意味しています。まずは、お歳暮のお礼状のマナーや注意事項についてお伝えします。
お歳暮のお礼状を送る時期
お歳暮を贈る時期は、12月上旬から12月20日頃が一般的。品物を受け取ったら、当日中にお礼状を書いて発送するのがベストです。遅くても到着後、3日以内を目処に送りましょう。
お礼状を送るのが3日後以降になりそうなときは、さきに電話でお礼を伝えておくのがマナー。お礼状には、感謝の意を表するとともに、お詫びの言葉も添えておくとよいでしょう。電話やメールは略式のため、それだけで済ませず、必ずお礼状を出しましょう。
お歳暮にお返しは不要
基本的に、お歳暮にはお返しは不要です。お礼状だけ送りましょう。ですが、相手との関係性によってはお返しをしないといけない場合もあると思います。そのときは、高額な品物は避け、いただいたお歳暮の3分の1程度の金額を目安に購入しましょう。
「お元気ですか」「お返しに」の表現はNG
お歳暮が届いたのは、相手が元気でいる証拠。そのため、「お元気ですか」「いかがお過ごしですか」など、安否を尋ねる表現は避けましょう。「お元気でお過ごしとのこと、お喜び…」「お変わりなくお過ごしの由、大慶に…」といった、相手の息災を喜ぶ言葉に置き換えるのがマナーです。
また、お礼状とお返しの送り状を兼ねる場合は、「お返しに」という表現を使うと、「贈られたから送った」と捉えられてしまうので注意しましょう。「本日、ささやかながら心ばかりの品を別便にてお送りしました」などの表現を用いるのが基本です。
夫の代筆をするときの注意点
お歳暮を受け取ったら、相手の心遣いへの感謝の気持ちを込めて、具体的な感想を伝えるのが基本です。感想を述べる際は、「主人や子どもたちもたいへん喜んでおりました」など、夫や家族の様子も書き添えると、相手に喜ばれます。
夫の代わりにお礼状を出すときは、差出人の署名の書き方に注意しなくてはなりません。まずは、夫の苗字・名前をフルネームで書き、その横に「内 自分の名前」を忘れずに入れます。ただし、お歳暮のお礼状は、受け取った本人から出すのが基本です。やむを得ない事情がない限り、代筆は避けましょう。
お歳暮を断るときのポイント
勤務先の方針や決まりにより、取引業者などからのお歳暮を受け取ってはならない場合があります。また、ときには筋違いの贈答と思えるようなケースもあり得ます。そのような場合、ただ単に「受け取れません」と意思表示するだけでは角が立ちます。断る理由を具体的にはっきりと示して、返信を書きましょう。
お歳暮を断る場合、送られてきた品を送り返すやり方と、同額程度の品を贈るやり方の二通りがあります。勤務先の決まりで断る場合は、その方法に従います。自分で判断しなければならない場合は、一般的には同額程度の品を贈る方法をとったほうが、角が立ちません。
ただし、とくに今後の交誼を続けるつもりのない相手や、筋違いの贈答の場合は、送り返す方法が適切です。送り返すときは、届いた梱包を解かず、その上からさらに包装して発送しましょう。
お歳暮のお礼状の書き方
つづいては、お歳暮のお礼状を書くときの基本構成と書き方についてお伝えします。お礼状は「前文」「主文」「末文」「後付け」の4項目で構成されています。以下に示したのでご覧ください。
取引先などの仕事の関係者などの改まった相手に出すときは必ず縦書きにしましょう。親しい友人や後輩などの場合は横書きでもかまいませんが、カジュアルな印象を与えてしまうため、相手によって使い分けることが大切です。
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お歳暮のお礼状の文例
知人へ(1)
拝啓 初冬のみぎり、ご家族一同様にはますますご清祥の由、何よりと存じます。平素は格別のご指導を賜り、心より御礼申し上げます。 このたびはご丁重なお歳暮の品を頂戴しまして、誠にありがとうございました。妻も子も大喜びで、めったにない豪華な食事になりました。本当にご馳走様でした。 年末ご多忙の折、お風邪など召しませんよう、ご自愛のほどお祈り申し上げます。 まずはお礼のみにて、失礼いたします。 敬具 |
お歳暮の贈答は、感謝の気持ちのやり取りが主な目的ですから、先方の気持ちへの感謝と、それに応える姿勢を示すことが、お礼状を書くうえでの大切なポイントとなります。決まり文句を連ねる文面になりがちですが、心境の部分などで具体的な表現となるよう工夫しましょう。
知人へ(2)
今年も余日少なくなりました。〇〇様はじめご家族の皆様、お元気でお過ごしとうかがい、安心いたしました。 さて、本日は心のこもったお手紙とご丁寧なお歳暮の品を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。日頃は私どもが大変お世話になっておりますのに、このようなお心遣いをいただき、申し訳なく存じております。 寒さ厳しい折から、どうぞお身体を大切に。お健やかな新年をお迎えになりますよう、お祈りいたしております。 |
上記は、相手からお歳暮が先に届いてしまった場合の文例です。そのほか、別の言い回しや、お返しを贈る場合のフレーズを以下にご紹介します。
- こちらのほうから先にご挨拶申し上げねばならないところ、大変恐縮に存じます
- 遅くなりましたが、新潟の実家から、今年の新酒をお送りいたしました
- 大変遅くなりましたが、当方からもご挨拶させていただきます
また、めずらしい食品やめったに手に入らない品物をいただいたときは、贈り物を誉めそやすだけでなく、その品を選ぶための努力や苦労を想像すると、より心の込もった礼状となるでしょう。
夫の友人へ
拝啓 師走の候、皆様にはお元気でお過ごしとのこと、お喜び申し上げます。日頃より、主人がお世話になりまして、心より感謝申し上げます。 このたびは、ご丁寧なお歳暮の品をいただきまして、誠にありがとうございます。早速、家族みんなで美味しくいただきました。 本来であれば、主人がお礼を申し上げるべきところ、失礼ながら代わってご挨拶申し上げました。 皆様のご健勝とご多幸をお祈りいたしまして、まずは御礼申し上げます。 敬具 |
代筆をする場合は、文例中の下線部のようにお詫びの一文を書き記します。下線部を「失礼とは存じましたが、主人の代わりにご挨拶申し上げました」と書き換えるのもよいでしょう。
お歳暮のお礼状の文例(ビジネス)
取引先関係者へ(1)
拝啓 師走の候、皆様におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。また本年も弊社の事業に多大なるご協力を賜りまして、厚く御礼申し上げます(1)。 さて、このたびはご丁寧なご挨拶に加え、お歳暮の品をお贈りいただきまして、誠にありがとうございます(2)。弊社一同でおいしく頂戴いたしました。 今後ともご厚誼のほど、よろしくお願い申し上げます。 向寒の折、ご自愛のうえ、来る年の皆様のご多幸をお祈り申し上げます。 略儀ながらまずはお礼まで。 敬具 |
文例中の下線部は、別の表現に書き換えることができます。(1)は「平素はひとかたならぬお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます」、(2)は「結構なお品をご恵贈いただきまして、誠にありがとうございます」などと述べてもよいでしょう。仕事のお付き合いのある相手先には、丁寧な文面を心がけることが大切です。
取引先関係者へ(2)
謹啓 歳末の候、皆様にはますますご隆昌の由、お喜び申し上げます。平素は一方ならぬご芳情にあずかり、心から感謝いたしております。 さて、このたびは誠に結構なお歳暮の品をご恵贈賜り、ありがたく厚くお礼申し上げます。いつもお世話になっておりますうえ、このようなご配慮まで頂戴し、恐縮に存じます。 昨今は、経済状況が持ち直しているとは申せ、上昇軌道に乗ったと断言できる段階には至っておりません。弊社といたしましては、さらに業務に精励し、当業界の発展にいささかでも貢献して参る所存でございますので、皆様には倍旧のお引き立てを賜りますよう、改めてお願い申し上げます。 寒さ厳しき折柄、皆様にはくれぐれもご自愛のうえ、ご活躍いただきますよう、深く祈念申し上げます。 本来なら拝眉のうえお礼申し上げるべきところ、略儀ながら右、書中にてごあいさつ申し上げます。 謹白 |
ビジネスの取引先など、改まった相手にお礼の手紙を送る場合は、形式に従って文章をまとめることが大切です。相手の心遣いに対する感謝の気持ちを表現するとともに、相手の会社の繁栄や健康を祈る言葉を書き添えましょう。
お歳暮を断るときの文例
取引先関係者へ
拝啓 歳末の候、〇〇様にはお変わりなくお過ごしの由、お喜び申し上げます。 このたびは結構なお品をお贈りいただき、誠にありがとうございました。 せっかくのお心遣いですが、私の仕事柄、お受けすることができません。今後はお気持ちだけいただきますので、どうぞ季節のご挨拶のお心遣いなどなさいませんよう、お願い申し上げます。 皆様のご多幸とご繁栄をお祈りし、まずは御礼とお願いを申し上げます。 敬具 |
今後はお歳暮の受け取りを辞退したいときは、相手の気分を損なうことのないよう伝え方には注意しましょう。職務内容によっては、文例中の下線部を「公職の身にありますので、せっかくのご厚意ですが、贈答品はお受けすることができません」と置き換えるのもよいでしょう。
知人へ
拝復 例年に比べ、今年は寒さが厳しいようですが、皆様にはお健やかにお過ごしとのこと、何よりのことと存じます。私どもも、全員変わりなく過ごしております。 本日、お心尽くしのお歳暮の品を拝受いたしました。いつも何かとお心遣いをいただくばかりでお礼の申し上げようもありません。どうか今後は、このようなお気遣いはなさいませんようにお願い申し上げます。 皆様のご健康とご多幸を心よりお祈り申し上げます。 まずは御礼のみにて。 敬具 |
友人関係やプライベートのお付き合いのある知人に、今後のお歳暮のお断りを伝えるときは、柔らかい印象を与える言葉でまとめることを心がけましょう。相手の心証を害することのないよう、気をつけましょう。