年賀状に必ず書き添える「賀詞(がし)」は、一年の始まりの挨拶状には欠かせないもの。ですが賀詞は、相手との関係性によって使い分ける必要があります。上司や取引先といった目上の人に、目下(部下・後輩)に使う賀詞を選ぶと失礼な印象を与えかねません。年始早々、失敗でスタートしないよう、気をつけたいものです。
ここでは、賀詞の一覧を意味も含めて解説するとともに、相手との関係性によってどの賀詞を使えば良いのか、お伝えします。
目次
賀詞とは
賀詞とは、祝意を表す言葉であり、祝詞(しゅくし)ともいいます。本来、年賀に限らずお祝いのときに用いる言葉ですが、現在では新年を祝う語句という認識が一般的になっています。
賀詞は5種類に分かれる
賀詞は大きく分けて5種類あります。それぞれは以下の通りです。
- 1文字の賀詞(寿、福、賀など)
- 2文字の賀詞(賀正、迎春、新春など)
- 4文字の賀詞(謹賀新年、恭賀新春など)
- 文章の賀詞(新年おめでとうございます)
- 英語の賀詞(Happy New Yearなど)
年賀状に賀詞を書く位置
基本構成に則った場合、縦書きの場合は年賀状の右側、横書きの場合は上部に書くことが一般的です。詳しくは年賀状の書き方とマナーをご覧ください。目上の人に宛てるときは、基本のルール(書式)に則って賀詞を書くのが無難です。ですが、気心の知れた友人に宛てるときは、形式にこだわりすぎなくても良いでしょう。
近年、年賀状の裏書きにイラストを挿入することが多くなっています。なかには自由度の高いデザインもあるため、賀詞が変わった位置にあるものもありますが、相手との関係性に応じて使い分ければ問題ないでしょう。
賀詞の使い分け方・選び方
5種類ある賀詞を、相手との関係性に応じて正しく使い分けることが大切です。
上司・取引先・恩師・目上の人には「4文字の賀詞」
もともと、賀詞は「謹賀新年」「恭賀新年」などの4文字を用いるのが基本です。年賀状を出す相手に対して敬意や丁寧な気持ちを表す「謹」「恭」「敬」「頌」などが入ることによって、礼儀にかなった挨拶の敬語となります。そのため、上司や取引先、目上の人には4文字の賀詞が適しています。
4文字の賀詞の意味と一覧
以下に4文字の賀詞をご紹介するので、意味を確認して相応しい祝詞を選びましょう。
賀詞 | 読み方 | 意味 |
謹賀新年 | きんがしんねん | 謹んで新年をお祝い申し上げます |
謹賀新春 | きんがしんしゅん | 謹んで新しい年をお祝い申し上げます |
恭賀新年 | きょうがしんねん | うやうやしく新年をお祝い申し上げます |
恭賀新春 | きょうがしんしゅん | うやうやしく新しい年をお祝い申し上げます |
恭頌新禧 | きょうしょうしんき | うやうやしく新年の喜びをおたたえ申し上げます |
敬頌新禧 | けいしょうしんき | うやうやしく新年の喜びをおたたえ申し上げます |
敬寿歳旦 | けいじゅさいたん | 元日の朝を迎え、お祝い申し上げるとともに幸運をお祈りいたします |
慶賀光春 | けいがこうしゅん | 輝かしい新年のお喜びを申し上げます |
新春来福 | しんしゅんらいふく | 新しい年に福が来ることをお祈り申し上げます |
瑞祥新春 | ずいしょうしんしゅん | 新年を喜び、吉兆をお届けいたします |
迎春万歳 | げいしゅんばんざい | 新年を迎え、お喜び申し上げます |
笑門来福 | しょうもんらいふく | 笑顔でいられるよう、幸福をお祈りいたします |
鶴寿千歳 | かくじゅせんざい | 千年生きる鶴のように長生きすることをお祈り申し上げます |
麗雅懿春 | れいがいしゅん | 鮮やかにして奥ゆかしく麗しい春をお喜び申し上げます |
一陽来復 | いちようらいふく | 新年を迎え、お喜び申し上げます |
友人・後輩・部下・目下の人には「1文字の賀詞」「2文字の賀詞」
漢字1文字や2文字の賀詞は、新年を迎えたことやおめでたいことを述べているだけで、相手に対する敬意や丁寧さに欠けてしまいます。そのことから、目上の人に宛てる年賀状には向いていませんが、親しい友人や後輩、部下などの目下の人に使うのは構いません。以下に1文字・2文字の賀詞の意味を記載しておきます。
1文字の賀詞の意味と一覧
賀詞 | 読み方 | 意味 |
寿 | ことぶき | おめでたいことです |
賀 | が | おめでたいことです |
春 | はる | おめでたいことです |
禧 | き | おめでたいことです |
福 | ふく | 幸せなことです |
2文字の賀詞の意味と一覧
賀詞 | 読み方 | 意味 |
迎春 | げいしゅん | 新年を迎えました |
慶春 | けいしゅん | 新年を喜びます |
寿春 | じゅしゅん | 新年を祝います |
福春 | ふくしゅん | 新年です |
賀正 | がしょう | 正月を祝います |
初春 | しょしゅん | 年の初めです |
賀春 | がしゅん | 新年を祝います |
新春 | しんしゅん | 新しい年です |
頌春 | しょうしゅん | 新年をたたえます |
「文章の賀詞」「英語の賀詞」は万人に使える
文章や英語の賀詞は万人に使えます。しかし、英語の賀詞の多くは、新年をお祝いする言葉のみであり、正式には向きません。目上の人に宛てるときは避けたほうがよいでしょう。文章の賀詞は万人に使えますが、こちらも目上の人に出す年賀状には「謹んで」の言葉が入っているほうが好ましいでしょう。
文章の賀詞の意味と一覧
賀詞 |
新年おめでとうございます |
あけましておめでとうございます |
新春を寿ぎ謹んでごあいさつ申し上げます |
新春を寿ぎ謹んでご祝詞申し上げます |
謹んで新年のご祝詞を申し上げます |
謹んで新春のお祝いを申し上げます |
謹んで年始のお喜びを申し上げます |
謹んで年頭のごあいさつを申し上げます |
謹んで初春のお祝いを申し上げます |
謹んで新春のお喜びを申し上げます |
謹んで年始のご祝詞を申し上げます |
新春のお慶びを申し上げます |
謹んで年始のご挨拶を申し述べます |
英語の賀詞の意味と一覧
賀詞 | 意味 |
HAPPY NEW YEAR | 新年おめでとう |
A Start of a New Year | 新しい年の幕開け |
New Year’s Greetings | 新年のご挨拶 |
賀詞のタブー
最後に、年賀状に書くときに気をつけたい賀詞のタブーをご紹介します。
「新年あけましておめでとうございます」はNG
「あける」とは、ある期間や状態が終わり、新しい状態になるという意味。「新年あけまして」だと、新年が終わるという意味になってしまうため、書くときは「新年おめでとうございます」もしくは「あけましておめでとうございます」のどちらかにしましょう。
賀詞の重複使用はNG
「恭賀新年 あけましておめでとうございます」の書き方は、「恭賀新年」と「あけましておめでとうございます」という賀詞を重ねて表現しているため、誤りです。あいさつが重複しないように、どちらかひとつにしましょう。
「A Happy New Year」はNG
英文の頭にある「A(a)」は不定冠詞のため、この書き方だと「よいお年を」という意味となり、年越し前に伝える表現となってしまいます。正しくは「Happy New Year」です。