「拝啓・謹啓・前略」の違い|意味・使い方・類語まとめ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
「拝啓・謹啓・前略」の違い|意味・使い方・類語まとめ

「拝啓」「謹啓」「前略」の意味や使い方はご存知ですか?

これらは頭語(とうご)と呼ばれ、手紙やビジネス文書の書き出しの挨拶言葉です。

現代ではビジネスメールがコミュニケーションツールの主流になっていることから、かしこまって手紙を書く機会は少なくなっています。

そのため、「拝啓」や「謹啓」といった頭語を見聞きしたことはあるけど、使い方が分からないという方も少なくありません。

また、頭語には結語と組み合わせて使うルールもあります。

ここでは「拝啓」「謹啓」「前略」の違いについてご説明します。意味や使い方、類語についてもお伝えするので参考にしてくださいね。

まずは「頭語」と「結語」を理解しよう

「拝啓」や「謹啓」「前略」などの頭語や、「敬具」「謹言」といった結語は、手紙での挨拶を意味する言葉です。

たとえば、人の家を訪れたとき、何も言わずにいきなり中に入るのではなく、まずは「ごめんください」「こんにちは」などの挨拶を呼びかけますよね。

それと同様に、手紙や文書を書くときは、一般的に「拝啓」や「謹啓」といった独特の言葉をつかって挨拶をするのが基本です。頭語・結語の意味は以下の通りです。

  • 頭語:「こんにちは」などの挨拶にあたる言葉
  • 結語:「さようなら」「それではまた」といった挨拶にあたる言葉

頭語は、文章の書き出しに記入する言葉であり、結語は文書の末尾を結ぶ言葉です。

「拝啓」の意味・使い方(例文つき)

「拝啓」の読み方は「はいけい」です。

「拝啓」とは手紙の冒頭に記す頭語であり、「つつしんで申し上げます」という意味があります。

「拝啓」に対応する結語は「敬具」です。

「拝啓」は、一般的な手紙やビジネス文書の書き出しなどで最もよく使われる頭語といえます。同様に使われる頭語には「拝呈」「啓上」「敬白」などがあり、その頭語に対応するのは「拝具」や「敬白」です。

これは決まりなので覚えておきましょう。詳しくは「頭語・結語の正しい使い方・組み合わせ」をご覧ください。

例文を下記に記載します。

手紙の例文:贈り物へのお礼状

拝啓 朝夕の凍てつくような北風が肌身にしみるこの頃です。
 本日、大きなカニが届きました。ご丁寧な季節の贈り物を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。私も主人もカニに目がなく、さっそく今晩、みんなで本場の味を堪能したいと思います。いつも優しいお心配りに感謝しています。
 なお、ささやかですが、気持ちばかりの品をお送りしました。喜んでもらえると嬉しいです。
 寒さ厳しい折から、どうぞお体を大切に。まずはお礼まで。本当にありがとう。

敬具

ビジネス文書の例文:会社説明会の案内状

平成〇〇年〇月〇日

株式会社〇〇〇
総務部 〇〇 〇〇 様

株式会社〇〇〇〇
経理部 〇〇〇〇

送金のお知らせ

拝啓 向夏の候、貴社におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のお引き立てを賜り誠にありがとうございます。
さて、〇月〇日付にてご請求いただきました「〇〇〇〇」の代金につきましては、下記の通り、〇月〇日、貴社指定口座に代金を振り込ませていただきましたので、ご案内申し上げます。
つきましてはご確認の上、お手数ですが、折り返し領収書をお送りくださいますようお願い申し上げます。

敬具

お振込先   〇〇銀行〇〇支店貴口座
お振込金額     〇〇〇,〇〇〇円
お振込日          〇月〇日

以上

上記のように「拝啓・敬具」の頭語・結語は、お知らせを伝えるときや、一般的な案内状・お礼状を書くときに使います。

また、差出人が女性の場合のみ「かしこ」という結語も使うことができますが、ビジネス文書には適しません。

「謹啓」の意味・使い方(例文つき)

「謹啓」の読み方は「きんけい」です。

「謹啓」の意味は「拝啓」と同様に「謹んで申し上げます」です。

なお、「謹啓」に対応する結語は「謹言」「謹白」「敬白」です。

「謹啓」は「拝啓」よりも敬意が高く、目上の人に改まった手紙や丁寧な手紙を送るときに用いられます。

たとえば、ビジネスシーンだと「開業祝い」や「昇進祝い」といったお祝い状を書くときや、「社長就任・交代」の挨拶状などが挙げられます。

「謹啓」や「謹白」といった頭語・結語を書く位置は下記の通りです。

手紙の例文:弔電のお礼状

謹啓 亡父〇〇の葬儀に際しましては、丁寧な弔電を賜りまして、誠にありがたく厚く御礼申し上げます。おかげさまをもちまして、葬儀をとどこおりなく相営むことができました。
 本来であれば、さっそくお伺いのうえ御礼申し上げるべきところ、取り込んでおりましてごあいさつが遅れ、申し訳ございません。
 まずは書中にて謹んでごあいさつ申し上げます。

謹白

「謹啓」は祝い事だけでなく、弔電や弔辞へのお礼状にも使われます。

ビジネス文書の例文:社長就任の挨拶状

謹啓 新緑の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。平素はひとかたならぬご愛顧にあずかり心から御礼申し上げます。
 さて、私こと、このたびの株主総会および取締役会の決議により代表取締役社長に選任され、〇月〇日をもちまして就任いたしました。
 つきましては、誠に微力ではございますが、前社長の方針を受け継ぎつつ、この重責を全うすべく誠心誠意、社業に打ち込む覚悟でございます。今後とも、一層のご指導ご鞭撻を賜りますよう心よりお願い申し上げます。
 まずは略儀ながら書面をもちまして就任のご挨拶を申し上げる次第です。

謹白

平成〇〇年〇月吉日

株式会社〇〇〇〇
代表取締役社長 〇〇〇〇

あなたがこれから書こうとしている文章の文例を確認したい方は、この記事の最後に、当サイトで「謹啓」を使った手紙やビジネス文書の文例をまとめて紹介しているので、そちらをご覧ください。

「前略」の意味・使い方(例文つき)

「前略」の読み方は「ぜんりゃく」です。

「前略」とは、手紙文で冒頭の時候の挨拶などを省くという意で用いる頭語です。

文章の前の部分を省略して書く、略式となることから、目上の人に「前略」を使うのは失礼にあたります。

親しい人に宛てるときや、急用があるとき、抗議状を書くとき、お詫びの手紙を書くときに使われます。

「時候の挨拶を省略します」という意味で「前略」を使うので、「前略」のあとに時候の挨拶を書くのは不適切です。気を付けましょう。

「前略」以外の略式の頭語には「冠省」「略啓」「寸啓」「草啓」などがあります。

また、「前略」に対応する結語は「草々」「不一」で、それ以外にも「不尽」「早々」「不二」などがあります。

手紙の例文:結婚式欠席のお詫び状

前略 ご招待いただいた結婚披露宴に欠席してしまい、誠に申し訳ございませんでした。
 わたしから出席のお返事をしておきながら、当日はやむを得ない事情により出席がかなわなくなりましたこと、深くお詫び申し上げます。
 おふたりの幸せなお姿を拝見できますことを楽しみにしておりましたのに、参列できず断腸の思いでございます。
 このたびのことでは、〇〇様に大変ご迷惑をおかけしてしまいましたが、ご寛容賜りますようお願い申し上げます。非礼は承知いたしておりますが、どうか事情をご理解いただき、お許しくださいませ。
 後日改めてお祝いに伺い、幸福に満ちたおふたりのお顔を拝見できれば幸甚でございます。
 略儀ながら、おふたりの末永い幸せをお祈り申し上げ、まずは書中にてお詫び申し上げます。

草々

「拝啓」「謹啓」「前略」の文例集

つづいては「拝啓」「謹啓」「前略」のそれぞれの頭語を使った文例を紹介します。

「拝啓」を使った手紙・ビジネス文書の例文集

「謹啓」を使った手紙・ビジネス文書の例文集

「前略」を使った手紙・ビジネス文書の例文集

「拝啓」や「謹啓」以外の頭語・結語の組み合わせ

上記でご紹介した「拝啓」や「謹啓」「前略」といった頭語や結語の組み合わせを下記にまとめたので参考にしてくださいね。

手紙の種類 頭語 結語
一般的な手紙・文書
  • 拝啓
  • 拝呈
  • 啓上
  • 啓白
  • 拝進
  • 敬具
  • 拝具
  • 敬白

丁寧な手紙・文書
(祝い状・礼状・詫び状)

  • 謹啓
  • 謹呈
  • 粛啓
  • 恭啓
  • 謹白
  • 謹言
  • 敬白
  • 再拝
  • 頓首

急ぎの手紙・文書
(見舞状など)

  • 急啓
  • 急呈
  • 急白
  • 草々
  • 不一
  • 不尽
  • 不二
  • 早々
  • 不備

略式の手紙・文書
(抗議状など)

  • 前略
  • 冠省
  • 略啓
  • 寸啓
  • 草啓
  • 草々
  • 不一
  • 不尽
  • 不二
  • 早々
初めての相手に出す手紙
  • 初めてお手紙を差し上げます
  • 突然お手紙を差し上げます
    ご無礼をお許しください
  • 敬具
  • 拝具
  • 敬白
重ねて出す手紙・文書
  • 再啓
  • 再呈
  • 追啓
  • 敬具
  • 拝具
  • 敬白
返信の手紙・文書
  • 拝復
  • 復啓
  • 謹復
  • 敬具
  • 拝答
  • 敬白
お悔やみ状
  • ※頭語は省略
  • 合掌
  • 敬具

※より詳しい内容は「頭語・結語の使い方・組み合わせ」をご覧ください。

また、女性の私信の場合には「拝啓」「謹啓」といった一般的な頭語のほかにも「一筆申し上げます」や「かしこ」といった、女性ならではの頭語・結語を使うこともあります。

「あらあらかしこ」「めでたくかしこ」といった結語もありますが、最近ではほとんど使われません。

さいごに

ここでは「拝啓」「謹啓」「前略」の意味や使い方、それぞれの違いについて解説してきましたが、いかがでしょうか。

現代では手紙を書く機会は少なくなり、形式や基本マナーに触れることもあまりないために、頭語の使い方が曖昧になっている方もいると思います。

手紙やビジネス文書の書き方は決められたルールが多く、書き慣れないと面倒に感じてしまうかもしれません。

ですが、慣れてしまえばとても簡単です。この機会に覚えておいてくださいね。

なお、頭語の組み合わせが決まったら、次は時候の挨拶ですね。時候の挨拶は、手紙やビジネス文書を出す時期にふさわしい言葉を選ばないといけません。

まだ時候の挨拶が決まっていない方は「時候の挨拶の一覧」をご覧ください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket