一年のはじまりの挨拶は、手紙や文書を受け取る相手にとっても特別なもの。礼儀や作法、相手への敬意などの気持ちを表現したいですね。
特に、文章の書き出しは、非常に重要です。
移り変わる季節の変化を書き表し、相手に礼を尽くすなど、手紙の書式に則って書くことが気持ちを伝える上で大切です。
では、1月にふさわしい時候の挨拶にはどのような言葉があるのでしょうか。注意点や押さえておきたいポイントも含めてお伝えしていきます。
目次
1月の時候の挨拶を書く前に理解しておきたい2つのこと
手紙やビジネス文書を書く前に、理解しておくべき2つのポイントをお伝えします。
手紙の送付日によって「書き出し」がかわる
寒い冬の時期に「秋涼」や「秋晴」などの秋の言葉を用いると違和感を覚えるように、手紙の書き出しで使用する時候の挨拶は、季節の変化に合わせて変えていく必要があります。つまり、手紙を送付する日が「二十四節気(太陰太陽暦)」や「旧暦の時期のいつ頃か」によって、時候の挨拶もかわるのです。
まずは手紙を出す日がいつごろか把握しましょう。その上で、以下に記載している1月の二十四節気のどの時期に該当するかを確認しましょう。
- 冬至(とうじ):12月22日頃~1月4日頃
- 小寒(しょうかん):1月5日頃~1月19日頃
- 大寒(だいかん):1月20日頃~2月3日頃
「頃」としているのは、その年によって移り変わる時期が異なるためです。
1月の季語を入れる
時候の挨拶は、季節や天候に応じた心情や季節感を表す言葉です。手紙にも季語を使うのがマナーです。季語を書くときの参考になる、1月の季語をご紹介します。
- 動物:うぐいす・白鳥・鶴・さぎ
- 植物:松竹梅・福寿草・水仙・春の七草(せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ)
- 風物:初詣・お年玉・書き初め・初荷・鏡開き・すごろく・かるた・羽子板・成人式・富士山・雪だるま・雪合戦
続いては1月に適した時候の挨拶と、文例を見ていきましょう。
ビジネス文書・改まった手紙に適した「漢語調」の時候の挨拶・書き出し
まずはビジネス文書を書くときや、かしこまった表現を用いるときにふさわしい、漢語調の時候の挨拶を解説していきます。
冬至:1月上旬(1月4日頃まで)の時候の挨拶
1月上旬は、二十四節気のうち、冬至(12月22日頃~1月4日頃)の時候の挨拶を用います。以下に読み方や意味について記載します。
時候の挨拶 | 読み方 | 意味・由来 |
新春の候 | しんしゅんのこう | いよいよ新しい年を迎え |
初春の候 | しょしゅんのこう | 新春のこの良き日に |
迎春の候 | げいしゅんのこう | 新春を迎えました |
※1:「初春」は春の初めを指す季語のため、1月に用いるのは不適切な印象を持ったかもしれません。しかし、初春は旧暦1月の別称です。旧暦の表現では、お正月辺りを意味して用いられることから、問題なく使用できます。
※2:「〇〇の候」の「候」は「〇〇というふうに季節も移り変わってきましたが」という意味です。
時候の挨拶の例文
1月上旬に適した時候の挨拶を例文で見ていきましょう。文章の書き出しは、書式に則って記入します。その順序は「頭語→時候の挨拶→相手の安否を気遣う挨拶→日頃の感謝→(主文・末文)→結語」です。ビジネス文書の構成が正しく書けているか自信のない方は「ビジネス文書の基本構成と書き方」を確認しておきましょう。
丁寧な表現の例文 謹啓 新春の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は特段のご高配を賜り (主文・末文省略) 謹白 |
頭語・結語を上手く使い分けることによって、相手により丁寧な印象を与えることができます。目上の人に対してかしこまった文書を作成するときや、敬う気持ちを表す際の頭語は「謹啓」や「謹呈」を用いましょう。その時に用いる結語は「謹白」や「敬白」「頓首」などが望ましいでしょう。
また、親しい間柄の人に送る場合など、一般的な表現を用いるときは、下記のように頭語は「拝啓」、結語は「敬具」にします。なお、頭語・結語の正しい組み合わせを理解し、相手によって上手く使い分けたいときは「頭語・結語の正しい使い方・組み合わせ」をご覧ください。
一般的な表現の例文 拝啓 初春の候、貴殿におかれましてはますますご健勝の由、何よりと存じます。いつも身に余る (主文・末文省略) 敬具 |
「ご健勝」とは、健康で元気なさまを意味します。手紙を送る相手が個人のときに用いる言葉です。
小寒:1月中旬(1月5日頃~1月19日頃)の時候の挨拶
1月中旬は、二十四節気のうち、小寒(1月5日頃~1月19日頃)の時候の挨拶を用います。読み方や意味を以下に記載します。
時候の挨拶 | 読み方 | 意味・由来 |
小寒の候 | しょうかんのこう | 寒い時期を迎えた今日この頃 |
厳寒の候 | げんかんのこう | 厳しい寒さの今日この頃 |
寒風の候 | かんぷうのこう | 冬の冷たい風が吹く頃 |
寒冷の候 | そうかんのこう | 寒く冷たい時期になりました |
1月中旬に適した時候の挨拶は、冬の厳しい寒さを表現した言葉が多いです。
時候の挨拶の例文
1月中旬の時候の挨拶をご紹介します。
丁寧な表現の例文 謹呈 小寒の候、貴社にはいよいよご盛栄の由、お喜び申し上げます。平素は特段のご厚情を賜り (主文・末文省略) 謹白 |
「謹呈」には「つつしんで申し上げます」という意味があります。「拝啓」より敬意が高く、目上の人に送るときに適しています。「ご盛栄」とは、商売が盛んであることを祝う言葉です。覚えておきましょう。
一般的な表現の例文 拝啓 厳寒の候、貴殿にはいよいよご活躍のこととお喜び申し上げます。いつも過分のお心配りを (主文・末文省略) 敬具 |
ビジネス文書を相手に送る場合は、上記のように書式に則った簡単な挨拶で済ませ、本題に入ります。長ったらしくならないようにしましょう。
大寒:1月下旬(1月20日頃以降)の時候の挨拶
1月下旬は、二十四節気のうち、大寒(1月20日頃~2月3日頃)の時候の挨拶を用います。以下に読み方や意味について記載します。
時候の挨拶 | 読み方 | 意味・由来 |
酷寒の候 | こっかんのこう | 厳しい寒さが続く今日この頃 |
大寒の候 | だいかんのこう | 一年で最も寒い時期を迎え |
降雪の候 | こうせつのこう | 雪が降り積もる季節を迎え |
大寒のみぎり | だいかんのみぎり | 一年で最も寒い時期を迎え |
ポイント:「〇〇の候」以外にも、「〇〇のみぎり」「〇〇の折」もつかえます。「降雪の候」など季語を含む言葉を用いるときは、手紙を受け取る相手の居住地の季節感に合わせましょう。雪が降りにくい地域の人にこの言葉を用いると、しっくりきません。
時候の挨拶の例文
丁寧な表現の例文 恭啓 大寒の候、貴社には益々ご隆昌の段、拝察いたします。常々身に余るご愛顧を賜り厚く御礼 (主文・末文省略) 頓首 |
恭啓とは「うやうやしく申し上げる」、隆昌は「勢いが盛んなこと」という意味があります。頓首は、相手に対する敬意を表しています。
一般的な表現の例文 拝呈 酷寒の候、貴殿におかれましてはますますご活躍の趣、何よりと存じます。過日は過分の (主文・末文省略) 敬具 |
拝呈は、謹んでお贈りすること。「酷寒」は冬の季語です。
ビジネス文書を書くときに確認しておきたい参考記事 |
親しい人に送る「口語調」の時候の挨拶
気心の知れた友人などに手紙を送るときは、やわらかい表現の口語調を用います。堅苦しい挨拶だと、相手も違和感を持つでしょう。親しい相手に送る時候の挨拶をご紹介していきます。
冬至:1月上旬(1月4日頃まで)の時候の挨拶・結びの言葉
季節感のある挨拶と、慣用句として使いやすい結びの言葉は以下のとおりです。
時候の挨拶
- 皆様おそろいで、よき初春をお迎えのことと存じます。
- ご機嫌うるわしく、新春を祝われたことでございましょう。
- 初春を迎え、ますますご壮健のことと拝察いたします。
- 新春とはいえ厳しい寒さが続く毎日ですが、いかがお過ごしでしょうか。
- 寒の入りとともに、厳しい寒波がやってまいりました。
- 三が日は寒さもゆるみ、晴天に恵まれました。
- 早いもので松の内も過ぎ、おとそ気分からも抜ける頃となりました。
- 今年は家族の健康を折念して、なつかしい七草がゆをいただきました。
結びの言葉
- 皆様にとりまして本年が幸多き年でありますよう、お祈り申し上げます。
- 本年も昨年と相変わりませず、ご厚情のほどをよろしくお願い申し上げます。
- 今年はお互いに切磋琢磨してがんばりましょうね。
松の内とは、元旦から7日までの、正月の松飾り(門松)を立てておく間のことをいいます。また、それを取り払うことは「松納め」といいます。「おとそ」とは、お正月に無病長寿を祈って飲む祝い酒のこと。お酒に酔った心地を「おとそ気分」といいます。
時候の挨拶の例文
丁寧な表現の例文 謹啓 新春とはいえ厳しい寒さが続く毎日ですが、いかがお過ごしでしょうか。ご健勝にてお過ご (主文省略) 皆様にとりまして本年が幸多き年でありますよう、お祈り申し上げます。 謹白 一般的な表現の例文 拝啓 寒の入りとともに、厳しい寒波がやってまいりました。皆様にはその後お変わりなくお過ご (主文省略) 本年も昨年と相変わりませず、ご厚情のほどをよろしくお願い申し上げます。 敬具 |
2月4日頃の立春を迎えるまでの30日を「寒」といい、「寒の入り」は1月5日頃になります。「寒」はさらに、その前半を「小寒」、後半を「大寒」といい、冬の寒さが一番厳しいとされる時期です。時候の挨拶では、季節が移り変わる様子を入れます。身の回りの季節の変化をとらえ、ほんの少し自分なりの言葉でアレンジすれば、趣のある親しみやすい挨拶になるでしょう。
小寒:1月中旬(1月5日頃~1月19日頃)の時候の挨拶・結びの言葉
1月中旬に適した時候の挨拶・結びの言葉は以下のとおりです。
時候の挨拶
- 松の内のにぎわいも過ぎて、ようやく平生の暮らしがもどってまいりました。
- 鏡開きも終わり、お仕事にも新たな気持ちでご精励されていることと存じます。
- このたびご子息が成人式を迎えられるとのこと、誠におめでとうございます。
- 吹雪に閉ざされた部屋の中で、筆をとっております。
- 寒さが一段とつのってまいりましたが、ご無事にお暮らしでございますか。
- 小雪の舞う寒空を眺めつつ、ただひたすらに春の待たれる今日この頃です。
- 今朝になって外は一面銀世界。雪合戦に興じる子どもたちの歓声もどこからか聞こえてまいります。
- 例年にない大雪だそうで、スキーを楽しみにしているあなたは大喜びでいることでしょう。
結びの言葉
- 朝夕は冷え込んでまいりますので、いっそうのご自愛をお祈りいたします。
- 道路も凍っています。お足元にお気をつけくださいね。
- 寒さもこれからが本番。どうぞお風邪など召されませんようご自愛専一に。
- 鏡開きとは、1月11日に、それまでお供えしていた鏡餅を割って、あずきがゆや、おしるこに入れて食べる風習。「鏡割り」ともいいます。
時候の挨拶の例文
丁寧な表現の例文 粛啓 松の内のにぎわいも過ぎて、ようやく平生の暮らしがもどってまいりました。あなた様には (主文省略) 朝夕は冷え込んでまいりますので、いっそうのご自愛をお祈りいたします。 頓首 一般的な表現の例文 拝啓 寒さが一段とつのってまいりましたが、ご無事にお暮らしでございますか。日々お元気でお (主文省略) 道路も凍っています。お足元にお気をつけくださいね。 敬具 |
「結び」では季節感を込めましょう。そのときどきの季節に合った話題をそえると、より説得力が増します。
大寒:1月下旬(1月20日頃以降)の時候の挨拶・結びの言葉
1月下旬に適した時候の挨拶・結びの言葉は以下のとおりです。
時候の挨拶
- こたつの中からの雪見酒が楽しみな季節がやってきました。
- 大寒と呼びますとおり、まさしく寒さは今が極みといったところです。
- 酷寒のみぎり、吹きすさぶ北風がいっそう身にこたえます。
- 冷え冷えとした大気に、星も凍てつくような寒夜が続いています。
- 今日は雪晴れの空がすがすがしく、寒いながらも気持ちのよい朝を迎えました。
- おこたでみかん、冬の日はこれが一番ですね。
- 雪の中、健気に咲いている福寿草の花を見つけうれしくなりました。
結びの言葉
- 寒さ厳しき折から、おからだをおいといくださいますように。
- 悪い風邪が流行っております。くれぐれもおからだを大切になさってください。
- 春を待ちわびつつ、あなたのご多幸をお祈りしています。
- 福寿草は、キンポウゲ科の多年草であり、1月の季語です。正月の祝い花として栽培され、早春に黄色の花をつけます。
時候の挨拶の例文
丁寧な表現の例文 謹呈 酷寒のみぎり、吹きすさぶ北風がいっそう身にこたえます。あなた様にはその後もお変わり (主文省略) 悪い風邪が流行っております。くれぐれもおからだを大切になさってください。 謹白 一般的な表現の例文 拝啓 今日は雪晴れの空がすがすがしく、寒いながらも気持ちのよい朝を迎えました。皆様お障り (主文省略) 春を待ちわびつつ、あなたのご多幸をお祈りしています。 敬具 |
雪晴れとは、雪が降りやんで、空が晴れわたることをいいます。
さいごに
1月は、元旦(1日)にはじまり、書き初め(2日)や鏡開き(11日)、成人の日(第2月曜日)など、多くの行事があります。
文章を書くときは、時候の挨拶や1月ならではの季語を入れて、趣のある手紙を相手に届けたいですね。
1月は、1年をスタートする大事な時期です。年始早々、相手に失礼な印象を与えないためにも、しっかり確認して文章を作成してくださいね。