日頃お世話になっている人に感謝の気持ちを込めて、贈り物をすることがありますよね。
贈り物を渡すときの言葉に「ささやかですが」「ささやかながら」といったフレーズがあります。
贈り物に添えられた手紙には、この表現がよく使われています。
日本人ならではの謙遜した表現ですが、この「ささやかですが」「ささやかながら」の意味や使い方が曖昧なまま、何となく使ってしまっている方も少なくありません。
ここでは「ささやかですが」「ささやかながら」の意味や使い方についてご説明します。類語や手紙・ビジネスメールの例文も紹介するので参考にしてくださいね。
目次
「ささやかですが」「ささやかながら」の意味・使い方
「ささやか」を辞書で調べると、下記の2つの意味が出てきます。
- 形や規模があまり大げさでなく、控えめなさま。小ぢんまりしたさま。
- 形ばかりで粗末なさま。わずかなさま。
また「ですが」は、「けれど・だけど」の意味をもつ「だが」の丁寧な言い方です。
これらの意味から「ささやかですが」は、「大したものではありませんが」と自らを謙遜して用いるときの表現だと分かりますね。
贈り物を渡すときに、「つまらないものですが」や「お口に合うかどうかわかりませんが」と前置きを入れることがありますが、それと同じ意味合いとなります。
また、よく似た表現に「ささやかながら」があります。
「ながら」は「~にも関わらず」「~ではあるが」という意味があり、「ささやかながら」は「ささやかですが」と同じ「大したものではありませんが」という意味で使われます。
贈り物を渡すときの決まり文句のひとつと覚えておきましょう。
「ささやかですが」や「ささやかながら」は、相手より自分を低い位置に置く、慎み深さが美しいとされる日本ならではの表現ですが、相手が贈り物を受け取りやすくするための気遣いも含んでいます。また、品物が好みに合わない場合に備えて、念のため前もって伝えておく、という保険のような側面もありますね。
なお、「ささやかですが」には贈り物を渡すとき以外にも、「ささやかですが、幸せに暮らしています」「ささやかですが、懇親会を開きます」というように、謙遜して伝えるときに使われる表現です。
【例文】
- ささやかですが、お祝いの気持ちです。
- ささやかですが、受け取ってください。
- ご卒業と新しい門出を祝い、ささやかですがお祝いの品をお贈りいたします。気に入っていただけたら幸いです。
- ささやかですが、部一同よりお祝いをお贈りします。ご主人にもよろしくお伝えください。
- ご成人のお祝いのしるしとして、ささやかですが心ばかりの品をお送りします。何かの足しにしてください。
- ささやかですが、お祝いのしるしを別送いたしました。使っていただけましたら幸いです。
- ささやかですが、誕生日のお祝いの品をお贈りします。喜んでもらえると嬉しいです。
- ささやかですが、気持ちばかりの品をお送りしました。喜んでもらえると嬉しいです。寒さ厳しい折から、どうぞお体を大切に。まずはお礼まで。
- ささやかですが、お見舞いを同封いたしましたので、当座のご用にお使いいただければ幸いです。
- 日頃の感謝の気持ちを込めまして、ささやかながらお食事会を開催させて頂きます。
- ささやかながらご披露の小宴を催しますので、お忙しいなかを恐縮に存じますが、ぜひご臨席をいただきますようよろしくお願い申し上げます。
- ささやかながらお祝いの品を別便にてお送りいたしました。ご笑納いただければ幸いです。
「ささやかながら」「ささやかですが」を使った手紙・ビジネス文書の例文集
懇親会
平成〇〇年〇月〇日 社員各位 営業企画部 歓迎会のお知らせ このたび、4月1日より〇〇〇〇さんが入社されることとなりました。 記 日時 平成〇〇年〇月〇日(〇)18時 恐れ入りますが、出欠のお返事は各課でとりまとめて、〇月〇日までに総務部〇〇までお知らせください。 以上 |
その他の文例を確認したい方は「歓迎会の案内状の書き方|文例つき」をご覧ください。
出産祝い
謹啓 早春の候、ご家族様にはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。 謹言 |
出産祝いのその他の文例は「出産祝いの手紙の書き方|文例つき」をご覧ください。
贈り物
拝啓 猛暑の候、皆様にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご愛顧を賜りありがたく感謝申し上げます。 敬具 |
その他の贈り物のお礼状の文例を確認したい方は「贈り物のお礼状の書き方|文例つき」をご覧ください。
結婚式
拝啓 深緑の候、〇〇伯父様ご家族の皆様におかれましてはご健勝のことと存じます。 敬具 |
結婚祝いのその他の文例は「結婚祝いの手紙の書き方|例文つき」をご覧ください。
「ささやかながら」「ささやかですが」を使ったビジネスメールの例文集
飲み会
件名:〇〇キャンペーン打ち上げのご案内 営業員各位 お疲れ様です。 この度、営業部は今期の売上目標を 成功を収めることが出来たのも、ひとえに〇〇部長を始めとした 本当に有難うございました。 つきまして、ささやかながら労いの気持ちを込めて 詳細を以下に記載致します。 ■飲み会の詳細 恐れ入りますが、出席のお返事は各課で取りまとめて ご多忙中とは存じますが是非ご参加頂きますよう ================== |
打ち上げの案内メールの詳しい書き方は「打ち上げの案内メールの文例(社内・社外)」をご覧ください。
歓迎会
件名:新入社員歓迎会のご案内 社員各位 お疲れ様です。総務の〇〇です。 皆様既にご承知のことと存じますが、 つきましては〇月〇日、ささやかでありますが 詳細は以下の通りです。 ■新入社員歓迎会の詳細 出席についてのご返答は〇月〇日までに ご質問やご不明な点がある方は 新入社員の皆さんとの交流は勿論、 何卒宜しくお願い申し上げます。 ================== |
歓迎会の案内メールの詳しい書き方は「歓迎会の案内メールの文例(新入社員・転勤・人事異動)」をご覧ください。
お菓子
件名:贈り物への御礼 株式会社〇〇〇〇 平素より大変お世話になっております。 この度はご丁寧なご挨拶に加え、 頂戴したお品は早速、社員一同で 名産地ならではの格別の品に感激しております。 ささやかではございますが、お礼の品をお送りいたしますので 〇〇様のいつもながらのお心づくしに応えるため、 メールにて恐縮ですが、取り急ぎお礼まで。 ==================== |
その他の文例は「贈り物(贈答品)のお礼メールの文例集」をご覧ください。
「ささやかですが」「ささやかながら」の類語
つづいては、贈り物を渡すときの「ささやかですが」の類語や言い換えフレーズを紹介します。
「つまらないものですが」
贈り物やお土産を渡すときのフレーズに「つまらないものですが」という言葉があります。
この言葉は、自分を下に置く謙譲の心からきている語で、「取るに足りないものですが」という気持ちを込めた表現です。
しかし、「つまらない」には「価値がない」や「無意味でばかばかしい」という意味も含まれるため、相手によっては不快な気持ちになる場合もあります。
一応、使い方を紹介しておきます。
【例文】
- つまらないものですが、どうぞお受け取りください。
- つまらないものですが、お納めください。
「お口に合うかわかりませんが」
相手に渡す贈り物やお土産が食べ物のときに使われる表現です。
「つまらないものですが」と同様に謙遜して用いる言葉ですが、儀礼的な決まり文句であることから、最近では「よろしかったら、皆様でお召し上がりください」とシンプルに気持ちを添える表現が主流となっています。
【例文】
- お口に合うかわかりませんが、手土産を持参いたしました。
- お口に合うかどうかわかりませんが、お召し上がりください。
「心ばかりの品でございますが」
「心ばかり」とは「ほんの気持ちだけを示すしるし」という意味があり、贈り物をするときなどに謙遜していう語です。
「心ばかりの品ではございますが」「心ばかりではありますが」といった使い方で、相手に贈り物をするときに使います。
上司やお客様など、目上の人にも使える表現です。
【例文】
- 心ばかりの品ではありますが、お受け取りください。
- 心ばかりのお祝いの品物をお送りいたしましたので、どうぞご笑納ください。
「ほんの気持ちばかりのものですが」
「ほんの」とは「まったくわずかの」、「ばかり」はおおよその程度・分量を表す「ほど。くらい」といった意味をもちます。
簡単に言えば「ちょっとしたものですが」という意味の言葉ですね。こちらも謙遜の気持ちを表す語です。
「心ばかり」よりも少し砕けた表現のため、親しい間柄の上司や先輩、友人などに使うとよいでしょう。
【例文】
- ほんの気持ちばかりのものですが、よろしければお受け取りください。
- ほんの気持ちですが、どうぞお召し上がりください。
プレゼントや贈り物をするときの言い換えフレーズ集
さいごに、「ささやかですが」「ささやかながら」以外の、プレゼントや贈り物を渡すときのフレーズをお伝えします。
「お納めください」
「納める」の意味は「金や物などを受け取って自分のものとする。手に入れる。受納する。獲得する」であることから、「お納めください」は「これを受け取ってしまってください」という意味になります。
贈答品をどうか受け取ってほしいという気持ちを表した言葉であり、フォーマルな場面でもよく使われる表現です。目上の人にも使えます。
【例文】
- 先日のお礼です。どうぞお納めください。
- 心ばかりですがお見舞いの品をお送りさせて頂きました。お納めくださいますと幸甚でございます。
「お祝いのしるしです」
入学や卒業、結婚、出産などのおめでたいことがあったとき、贈り物やお祝い金を渡すときに添える言葉です。
「しるし」というのは「気持ちを品物で表したもの」という意味です。
【例文】
- 息子さんの大学合格おめでとうございます。わずかばかりですが、お祝いのしるしです。
- 日ごろの感謝の気持ちも込めまして、心ばかりですが、お祝いのしるしを別送いたしました。
「感謝の気持ちです」
感謝の気持ちを贈り物で表すときに使うフレーズです。
ストレートな表現のため、気持ちが伝わりやすいでしょう。
【例文】
- この度は大変お世話になりました。感謝の気持ちにお受け取りください。
- この度は誠にありがとうございました。感謝の気持ちをお送りいたします。
「ご笑納ください」
「ご笑納ください」は「つまらないものですが、笑って納めて(しまうこと・自分のものにすること)ください」という意味です。
「笑」という字が入っているので、謝罪や葬儀の席といった場面では使いません。マナー違反にならないよう注意しましょう。
【例文】
- アンケートにお答えいただいたお礼として記念品をご用意しておりますので、ご笑納ください。
- ささやかなものですが、ご笑納くださいませ。
「ご受納くださいませ」
「受納」は贈り物の金品を受けて納めること。
「お納めください」と同じように使われますが、よりフォーマルな表現となります。
「ご受納くださいませ」は「ご笑納ください」のように「つまらないものですが」という意味は含みません。
【例文】
- 心ばかりの品ですが、ご受納くださいませ。
- 心ばかりの記念品をお送りいたしましたので、ご受納ください。
さいごに
ここでは「ささやかですが」「ささやかながら」の意味や使い方についてお伝えしましたが、いかがでしょうか。
相手のことを想って一生懸命選んだものだったり、高価な品物だったり、本当は喜んでもらえる自信がある贈り物でさえ、謙遜しながら渡すというのがいかにも日本人らしい感覚ですね。
贈り物に手紙を添えるときは、文面に「ささやかながら」をはじめ、今回ご紹介した類語を使って、あなたの気持ちを謙遜して表現することも大切です。
この機会に使い方を覚えておいてくださいね。