借金や借用の依頼が断りにくいからと返事をのばしていると、かえって相手に迷惑がかかります。依頼を断るときは、相手が次の策を考えられるように、思いやりをもって早めに返事を出すことが大切です。
ここでは借金・借用の依頼を断るときの手紙の書き方やマナーについてお伝えします。文例もご紹介するので、断り状を書くときの参考にしてくださいね。
目次
借金・借用の依頼を断る手紙のマナー
まずは、借金・借用の依頼を断る手紙を書くときに、押さえておきたいマナーや注意事項をお伝えします。どの項目も大事なので、目を通しておいてくださいね。
やわらかい言葉で断る
借金や借用の申し出を断るのは心苦しく、気が重いものですが、だからといって返事をのばしていては、相手に迷惑をかけてしまいます。返事が遅れることで、相手にいたずらに期待をさせないためにも、断りの手紙は、決断したらなるべく早く出すことが大切です。相手の気持ちや事情を酌み取りつつも、そのうえではっきりと断るのが社会人としてのマナーです。
曖昧な断り方はしない
借金・借用の断り状では、断ることをはっきりと記すことが大切です。断りにくい気持ちから、曖昧な表現をしてしまうと、誤解を招く恐れが生じてしまいます。ただし、強い口調で拒否したり、ただ断るだけでは、相手は自分が嫌われているのかと思い、戸惑ってしまうため注意しましょう。
「余裕がない」「(自分には)荷が重い」など、こちらの事情を伝えて断るようにすると、相手も納得しやすくなります。相手を傷つけないよう、多少の誇張はあっても、やわらかい言葉で理由を添えるとともにはっきりとした態度で断るようにしましょう。
相手の気持ちを慮る
どんな申し出でも、相手は厚意から、あるいは頼りにして声をかけてくれたことに変わりはありません。借金や借用の依頼には「(相手の窮状に)胸が痛む」「お役に立てず申し訳ない」といった心情を伝え、相手の落胆を労わります。
また、最後には、申し出を断ることで関係が気まずくなったり、疎遠になったりしないよう、これまでと変わらぬお付き合いを願う一文を添えて、しこりを残さないようにしましょう。
借金・借用の依頼を断る手紙の書き方
つづいては、借金・借用の依頼を断る手紙の基本構成と書き方についてご紹介します。断り状は、以下の図に示した「前文」「主文」「末文」「後付け」の4つの項目に分かれます。形式に従って書きましょう。
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借金・借用の依頼を断る手紙の文例
借金の依頼を断る手紙(1)
拝復 お手紙拝見いたしました。〇〇様がそのようなご事情を抱えていらっしゃるとは露とも知らず、驚きました。私にまでご相談いただくのは、ご心中を察するだけで胸が痛みます(1)。 なんとかご用立てしたいと家族とも相談いたしましたが、私どもも両親との同居のために家を建て替えたばかりで余裕がなく、お申し越しの金額を工面することはできそうにありません。 ご要望にお応えすることができず、誠に申し訳ございませんが、事情をお酌み取りくださいますようお願い申し上げます(2)。 取り急ぎ、書中にてお詫び申し上げます。 敬具 |
借金依頼を断るときは、窮状にある相手を気遣い、断る理由を明記します。期待に応えられない非力を説明し、無念を伝え、お詫びの気持ちを示すのが、丁寧な断りです。
文例中の下線部(1)は「よくよくのご事情とお察し申し上げます」、(2)は「誠に恐縮ですが事情をご賢察いただき、ご容赦願います」などと書き換えることができます。伝えたいメッセージに合う言葉を選びましょう。
借金の依頼を断る手紙(2)
急啓 寒さが一段と厳しくなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。 本日、お手紙を拝受いたしました。店舗を広げられるとのこと、大変やりがいのあるご計画と存じます。ただ、ご用立ての件でございますが、日頃よりお世話になっている〇〇様のご相談なので、ぜひともご支援させていただきたいところですがお役に立てそうもございません。実は、こちらも経済的な余裕がなく融通することが難しい状態なのです。 ご期待に沿うことができず大変申し訳ございません。どうぞ事情をお察しくださいますようお願い申し上げます。 まずは取り急ぎ、書中にてお詫び申し上げます。 敬具 |
断るときは、自分の力が足りないことへのお詫びを伝え、相手への気遣いを示すことが大切です。文例中の下線部を「せっかくご相談いただいたのに、何の力にもなれずに申し訳ありません」「私を頼ってくださったのに、力不足で申し訳ございません」「何のお役にも立つことができず、情けない限りです」などと伝えましょう。
借金の依頼を断る手紙(3)
ご書状を拝読いたしました。 大変な事態に見舞われましたね。ご心中をお察し申し上げます。 さて、ご依頼の件ですが、申し訳ございませんが、貴意にお応えすることができません。お許しください。 ご厚誼をいただいている〇〇様からのご依頼ですので、私なりに算段もいたしましたが、じつは当方では、身内の事情により多額の用立てをする事態が生じまして、先般、それに対応したばかりでございます。〇万円という金額をご用立てする余裕がございません。事情ご賢察いただければ、誠にありがたく存じます。 ただ、ご依頼の金額には及びませんが、〇万円程度でよろしければ、すぐにでもご用立てすることは可能でございます。ご検討ください。 大変な折、くれぐれもご自愛くださるようお祈り申し上げます。とり急ぎ右、お詫びかたがたご連絡を申し上げます。 |
借金・借用の依頼を断る場合、何らかの理由を書き添えることが必要です。実際のところ、先方のことを信用・信頼していないという理由によるケースもありますが、それをあからさまに書いてはいけません。あくまでも、こちら側の切実な事情を全面に出して、理解してもらう形になります。
借用の依頼を断る手紙(1)
お手紙を拝見しました。 うちの車をお貸しする件ですが、本当にごめんなさい。先約と重なり、その時期手元には車がないのです。 こんなことがなければ、いつでも自由に使ってもらって構わないのに。役に立てなくて、申し訳なさでいっぱいです。これに懲りず、また何かあったらぜひ声をかけてくださいね。 まずはお詫びかたがたご返事まで。 かしこ |
友人や親戚に宛てる手紙の文例です。やわらかい印象の言葉を用いて断りを入れています。断る事情や理由をはっきりとした態度で丁寧に伝えると、相手も理解してくれるものです。
借用の依頼を断る手紙(2)
お申し越しの件、拝読いたしました。 ご連絡いただいたご事情はよくわかりましたが、ご要望に沿うことができません。誠に申し訳ございません。 実は、同様のご依頼が先日ありまして、そちらにお貸ししたばかりで、戻るのは少し先になりそうでございます。そのようなことですので、悪しからずご了承いただきたく存じます。 同様の物を持っている知り合いがおりますので、問い合わせてもよいのですが、いかがでしょうか。まずはご一考ください。 まずは書中にてお詫びかたがたご返答申し上げます。 |
依頼してきた人が信用できない場合、それを直接的に書くことは控えるべきですが、以前に迷惑をこうむり、今後、付き合いが途絶えてもよいと思っている相手には、それを理解させるようなひと言を書き添えることも仕方がありません。その場合は「失礼ながら、以前にお貸しした際に違約をされるということがございましたので、このたびは辞退させていただきます」と明記する方法もあります。