手紙やメールは本来、相手に用件を正確に伝えるためのものですが、体調を気遣う言葉や繁栄を願う言葉を書き添えることにより、相手との関係を良好に保つ役割も果たします。
会話や文章のなかで、相手を思いやる言葉を添えることによって、相手に対する気持ちも表すことができるのです。
その代表格となる言葉が「ご自愛ください」というフレーズです。
手紙の結びの挨拶で用いられることの多い言葉ですが、意味や使い方を正しく理解していますか?
ここでは「ご自愛ください」の意味や使い方について詳しく解説します。類語や言い換え表現、それにビジネスメールの例文(1月~12月)や返信・返事の伝え方についても紹介するので参考にしてくださいね。
「ご自愛ください」の意味・使い方
「自愛」は「自分の体を大切にする」という意味があることから、「ご自愛ください」は「お体を大切になさってください」を丁寧な言い方にした表現です。読み方は「ごじあい」です。
「ご自愛ください」は季節の変わり目に手紙やメールを送るとき、相手の健康を気遣う定型句として使用されることが多いフレーズで、目上の人だけでなく同等の立場の親しい友人や、後輩や部下といった目下の人にも使えます。
暑中見舞いや寒中見舞いをはじめ、お中元のお礼状に書いたり、お世話になった方と久しぶりに連絡を取ったときのメールに「くれぐれもご自愛ください」と結びの挨拶として使用したりできます。
なお、「お体にご自愛ください」は二重表現のため誤りです。「自愛」には「自分の体を大切にする」という意味があるため、「お体に」をつけると「上を見上げた」や「腹痛が痛い」と同じ理由で、文法的に間違いなのです。
【例文】
- これからも暑さが続きますので、くれぐれもご自愛ください。
- 季節の変わり目ですので、ご自愛ください。
- くれぐれも無理をなさらず、ご自愛ください。
- 末筆ですが、時節柄、皆様のご自愛をお祈り申し上げます。
- ご自愛専一にお過ごしください。
「ご自愛専一(ごじあいせんいつ)」とは「まず第一に自分を大切になさってください」という意味です。
「ご慈愛」は全く違う意味のため間違い!正しくは「ご自愛」
「自愛」と間違えて使いやすい表現に「慈愛」があります。
「慈愛」は「自分への深い愛情」という意味があることから、「ご慈愛ください」と使ってしまうと「私を大切にしてくださいね」という意味合いになり、お見舞いのときなどに使うフレーズとしては不適切です。相手の健康を気遣う表現は「ご慈愛ください」ではなく「ご自愛ください」です。覚えておきましょう。
「ご自愛ください」を使ったビジネスメールの例文集
「ご自愛ください」を使った1月・2月のメール例文
件名:懇親会のお礼 株式会社〇〇〇〇 お世話になっております。 昨晩は会食の席にお招きいただき、 お店のスタッフの方々の配慮、おもてなしが素晴らしく、 また、仕事とは違った雰囲気のなかで、〇〇様をはじめとした 機会がございましたら、後日、お返しなどをさせて頂けると幸甚です。 また、寒さはこれからが本番です。 メールでのご連絡となり大変恐れ入りますが、 昨晩は本当にありがとうございました。 ==================== |
1月・2月の「ご自愛ください」を使った文例は下記の通りです。
- 寒さはこれからが本番です。皆様には、なおご自愛くださいますよう、お祈り申し上げます。
- 厳寒の折、お風邪など召されませぬようご自愛ください。
- 朝夕は冷え込んでまいりますので、いっそうのご自愛をお祈りいたします。
- 寒さ厳しき折、くれぐれもご自愛くださいませ。
- 寒さもこれからが本番。どうぞお風邪など召されませんようご自愛専一に。
なお、寒中見舞いを送るときは「寒中見舞いの正しい書き方とマナーまとめ」をご覧ください。
「ご自愛ください」を使った3月・4月のメール例文
件名:〇〇支店着任のご挨拶 株式会社〇〇〇〇 平素より大変お世話になっております。 さて、この度〇月〇日付で無事、 在任中は大変お世話になりました。 〇〇様とのお仕事を通じて、私自身、 〇〇支店では〇〇様の教えを生かして業務に精励いたす所存です。 〇〇様におかれましてはご多忙とは存じますが、 〇〇様と貴社の益々のご健勝とご発展を 〇年もの間、本当にありがとうございました。 ==================== |
3月・4月の「ご自愛ください」を使った文例は下記の通りです。
- 思いがけぬ春風にお風邪など召されませんようご自愛専一に。
- 浅春の折、何卒ご自愛下さい。
- 天候不順の時節柄、ご自愛専一にてご精励くださいますようお願い申し上げます。
- 花の季節ですが、まだ朝晩は肌寒くございます。どうかご自愛ください。
- 陽春のみぎり、どうかご自愛専一に、ますますのご活躍をお祈り申し上げます。
- 新年度に入り、なにかとお忙しい毎日でしょうが、ご自愛専一に。
なお、着任の挨拶メールを送るときは「着任の挨拶メールの文例集」をご覧ください。
「ご自愛ください」を使った5月・6月のメール例文
件名:取引先ご同行のお礼 株式会社〇〇〇〇 いつもお世話になっております。 この度の出張の折には大変お世話になりました。 ご多忙にもかかわらず取引先にご同行頂き、 おかげさまで無事任務を果たし、 これもひとえに〇〇様のご支援あってのことと 今後とも変わらぬお引き立ての程、 向暑の折、くれぐれもご自愛下さい。 取り急ぎ、ご同行のお礼を申し上げます。 ==================== |
5月・6月の「ご自愛ください」を使った文例は下記の通りです。
- 軽暑のみぎり、どうかご自愛専一に、ますますのご活躍をお祈り申し上げます。
- 向暑の折、くれぐれもご自愛下さい。
- もうすぐ梅雨がやってまいります。どうかご自愛専一に。
- 時節柄、ご自愛専一にてお願い申し上げます。
「ご自愛ください」を使った7月・8月のメール例文
件名:お中元への御礼 株式会社〇〇〇〇 貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。 この度はお心づくしのお中元の品を頂戴し、 いつもながらのご厚意に深く感謝しております。 お送りいただいた名産品のお菓子は、 向暑の折、これから繁忙期を迎えますが、 今後ともお引き立てのほど、よろしくお願い申し上げます。 ==================== |
7月・8月の「ご自愛ください」を使った文例は下記の通りです。
- これからいっそう暑さは厳しくなります。くれぐれもご自愛ください。
- 今年の夏の暑さは格別でございますので、くれぐれもご自愛ください。
- 今年の夏の暑さは格別です。どうかご自愛専一に。
- 猛暑はこれからが本番です。どうぞご自愛のうえ、今年の夏をお過ごしくださるようお祈り申し上げます。
- 立秋を過ぎたとはいえ、暑さはいましばらく続きます。ご自愛専一に。
- 酷暑の折から、〇〇様のご壮健とご自愛をお祈り申し上げます。
なお、暑中見舞いを手紙で送るときは「暑中見舞いの正しい書き方とマナーまとめ」をご覧ください。
「ご自愛ください」を使った9月・10月のメール例文
件名:会食の御礼 株式会社〇〇〇〇 日頃からなにかとお心配りをいただき、深く感謝申し上げます。 先日は会食の席にお招きいただき、ありがとうございました。 落ち着いた雰囲気の素敵なお店でいただいた魚介料理は格別で、 また、普通なら知ることのできない、御社業界特有の常識や風土について、 今後ともご指導・ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。 取り急ぎ、お礼を申し上げたく、お便りいたしました。 ==================== |
9月・10月の「ご自愛ください」を使った文例は下記の通りです。
- 夏の疲れが秋に出ると申します。どうかご自愛ください。
- 朝夕はしのぎやすくなりましたが、ご油断なさらずご自愛専一に願います。
- 残暑なお厳しき折、くれぐれもご自愛ください。
- ここのところ天候不順が続いておりますが、くれぐれもご自愛ください。
- 長雨の季節ゆえ、風邪など召されませぬようご自愛ください。
「ご自愛ください」を使った11月・12月のメール例文
件名:お歳暮への御礼 株式会社〇〇〇〇 平素より大変お世話になっております。 この度は、けっこうなお歳暮のお品をお届けいただき、 常日頃、〇〇様にはご指導頂いている上に お送り頂いた〇〇県の名産品のお品は、 忘年会にて皆で賞味させて頂く予定が今から楽しみです。 寒さに向かう折、お風邪など召されませんようご自愛専一に。 引き続きご指導の程、何卒宜しくお願い申し上げます。 ==================== |
11月・12月の「ご自愛ください」を使った文例は下記の通りです。
- 向寒の折、くれぐれもご自愛ください。
- 寒さに向かう折、お風邪など召されませんようご自愛専一に。
- 落ち葉舞い散る深秋の候、体調を崩されませぬようご自愛ください。
- 時雨の多い時節柄、ご自愛くださいますようお祈り申し上げます。
なお、お歳暮をいただいたときのお礼を送るときは「贈り物のお礼メールの文例」か「贈り物へのお礼状」をご覧ください。
「ご自愛ください」への返信・返事の書き方(メール)
手紙やメールなどで「ご自愛ください」と言われた場合、相手の気遣いに対してお礼の言葉を伝え、そのうえでこちらからも相手を気遣う言葉を伝えるのが基本マナーです。
「ご自愛ください」メールへの返信(1)
件名:Re:お土産のお礼 株式会社〇〇〇〇 お気遣いいただきまして、 〇〇様もお元気で過ごされますよう ==================== |
「ご自愛ください」メールへの返信(2)
件名:Re:転勤の挨拶 〇〇部長 〇〇部長のお気遣いのお言葉、 〇〇部長も何卒お身体おいといください。 ==================== |
「ご自愛ください」に返信する際のその他の例文は下記のとおりです。
- 温かいお心遣いに心から感謝申し上げます。〇〇様も健康にはくれぐれもご留意くださいませ。
- お気遣い、心より感謝いたします。〇〇様もどうぞお体にはお気をつけください。
「ご自愛ください」の類語・言い換え表現
相手が病気や怪我で体調を崩していたり、入院したりしているときに、「お体大切に」という意味で「ご自愛ください」と使いたくなるかもしれません。
ところが「ご自愛ください」の表現は、体調が悪くない人に対して「体調を崩さないように気をつけてね」という意味で使うのがマナーです。
また、「ご自愛ください」は「これからもお元気で」という意味を含んでいるため、病気の人や入院中の人に向けて使うのは不適切です。入院している人や体調が悪い人に使うと、非常識な印象を受けたり、不快に思うためくれぐれも避けましょう。
既に病気の人には下記の定型句を使いましょう。
【例文】
- 一日も早いご回復を願っています。
- お大事になさってください。
- お体お気をつけください。
- お労りください。
- おいといください。
- 体調を崩されませぬようお気をつけください。
- 時節柄、お体をお大事になさってください。
- ご健康を心よりお祈り申し上げます。
- ご健勝をお祈り申し上げます。
なお、病気や風邪の相手にお見舞いメールを送るときは下記のメール例文を参考にしてくださいね。
まとめ
ここでは「ご自愛ください」について徹底解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
ビジネスメールでのやりとりは、味気ない印象を与えがちですが、相手の健康を気遣う言葉を添えることによって、温かく柔らかみのある文面にまとまります。
日頃仕事のやり取りをする相手に、季節の変わり目やひと段落ついた場面で一言添えることにより、関係性をより深く築くことができるでしょう。
しかし、そんな言葉でも正しく使いこなさないと失礼な印象を与えることもあるため気をつけなくてはなりません。
この機会に「ご慈愛ください」の正しい使い方をマスターしてくださいね。