友達との会話のなかで、以前の出来事を挙げるときなら「この間のアレ」なんて曖昧な表現をしても伝わりますが、相手が目上の人である上司や取引先となれば、もう少し改まった言い方をしたいものです。
そんな時に使える「先般」という言葉をご存知ですか?「この間のアレ」と同じような意味を持つ「先般」ですが、過去の出来事ならいつでも使えるわけではありません。また、文中で「先般」だけが浮いてしまわないよう、他の言葉とのバランスを考える必要もあります。
ここでは「先般」の意味・正しい使い方やよく似た「先日」や「過日」との違い、またこれらの言葉が具体的にいつからいつまでの期間を指すのかを見ていきましょう。
「先般」の意味・使い方
「先般(せんぱん)」とは「この前の・先ごろの」という意味で、少し前の出来事を指して使います。「先般」には名詞としての使い方と副詞的用法があるのもポイントです。
かしこまった場面で用いるのが一般的なので、親しい友人との砕けた会話の中で使うと「先般」だけが浮いてしまって不自然な印象を与えるので注意しなくてはなりません。どのようなシーンで使うと自然に聞こえるのか、例文を参考にして確認しておきましょう。
【例文】
- 日程については、先般ご説明したとおりでございます。
- 先般の決定を踏まえて、プロジェクトを進めて参ります。
- 先般の事情により納品が遅れることをご了承ください。
- 先般は出張先で大変お世話になり、ありがとうございました。
- 先般申し上げました通り、
上の例からも分かるように、「先般」を使うことで「説明・決定・事情」の詳しい内容を省略して話すことができます。相手がその出来事を忘れるくらい時間が経っている場合には、「先般」を使わずに「〇月〇日の会議の件ですが」「昨夏の出荷先でのトラブル」などと具体的な日時や時期を示して内容をはっきりさせた方が適切ですね。
「先日・過日」との違い
次に、過去の出来事を表す「先般」と同じように使える「先日(せんじつ)」と「過日(かじつ)」という言葉について、それぞれの意味や使い方の違いを見ていきましょう。
- 先般:このあいだ
- 先日:このあいだ
- 過日:このあいだ(先日」よりも前)※口語では使わない
「先般」が以前起きた出来事そのものを指すのに対し、「先日」と「過日」は過去の特定の日を指します。
「先日」はビジネスシーンでは頻繁に使われる便利な言葉で、誰でも一度は使ったことがあるのではないでしょうか。それに比べて「過日」を使ったことのある方は少ないかもしれません。「過日」は口語で使うことはなく、文書やメールで使う書き言葉です。
それでは、どのようなシチュエーションで使うのか、例文をみてみましょう。
【例文】
- 先般お伝えした件につきまして、ご回答いただけると幸いです。
- 先日は、偶然お会いできて大変嬉しかったです。
- 過日お目にかかりました際には、大変お世話になりました。
「先般」は「この前お伝えした件」という出来事を表しており、「先日」「過日」は「〇月〇日」と具体的な日にちを表していることが分かります。
「先般・先日・過日」の期間の目安
「先般・先日・過日」が、全て過去を表す言葉だということが分かりました。しかし、1分前も数年前も「過去」。ここでは、それぞれの言葉がどれくらい前の期間を表しているのかを解説していきます。
- 先般:2、3日前~1週間前の出来事・人によっては1ヶ月くらい前の出来事に対して使う場合もある
- 先日:2、3日前~1ヶ月ほど前の特定の日
- 過日:数ヶ月前~1年くらい前の特定の日
「先般」と「先日」は、どちらも記憶に新しい期間に使うのが相応しい表現ですが、当日や昨日に対しては使いません。そして「先日」に比べて「先般」を使える期間が短いことも覚えておきましょう。
一方で、「過日」には「過ぎ去った日」と遠い過去を表す意味合いが強く、数ヶ月前から1年ほど前の特定の日を指す時に使うのが相応しいと言えます。文書やメールで過去の特定の日を表したい時は、最近のことなら「先日」、少し時間が経った場合は「過日」と使い分けるといいですね。
「先般」を使ったビジネスメールの例文
- 支払いの催促:先般お送りしております〇月〇日付のご請求書につきまして、〇月〇日の支払期限を過ぎた現在も、入金の確認ができておりません。
- 打ち合わせの日程調整:先般日程のご調整をお願いしておりました、〇〇プロジェクトの次回打ち合わせ日程が決定致しましたのでお知らせいたします。
- 上司への催促:さて、先般ご依頼しております〇〇課長の源泉徴収票につきまして、未だ総務部への提出が確認できておりません。
- 飲み会の出席確認:さて、先般ご案内しております〇月〇日の忘年会の件、〇〇様のご都合はいかがでしょうか。
なお、「先般」を使ったビジネスメールの書き方について、件名から挨拶文、締めくくりまで一通りチェックしておきたい方は下記の例文をご覧ください。
【ビジネスメールの例文集】
- 面談の依頼メールの書き方・文例
- 打ち合わせの連絡メールの文例
- 進捗状況を確認するときの催促メールの文例
- 提出期限を設ける催促メールの文例
- 上司に確認後の返信を催促するメールの文例
- 支払いの催促メールの文例
まとめ
過去の出来事や特定の日を表したい時に使う「先般・先日・過日」の使い方を解説してきました。期間についても、おおよその目安を覚えておくとよいでしょう。
また、「先般」と「先日」「過日」とでは、指し示しているものに違いがあることも分かりましたね。「先般」が過去の出来事を表すのに対し、「先日」「過日」は漢字からも理解できるよう過去の特定の日を表します。
それぞれの言葉が意味するもの、使うのに相応しい期間を覚えておけば、お礼状やメールを作成する際も適切な言葉を選ぶことができるでしょう。