「不徳の致すところです」という言い回しを聞いたことはありませんか。
不祥事を起こした企業の謝罪会見や、政治家が謝罪する記者会見の場で耳にすることがあると思います。
自身の反省の意を表す言葉として、謝る際に使われますが、正しく意味を理解していない方は意外に多いものです。
ここでは「不徳の致すところ」の意味や正しい使い方・類語について詳しく解説します。謝罪文や謝罪メールの例文も紹介するので参考にしてくださいね。
目次
「不徳の致すところ」の意味
「不徳の致すところ」とは「自分の徳が足りなくて起こしたこと」「自身が不道徳であったために引き起こしたこと」という意味です。
失敗や不都合のあったとき、自分に責任があると表明する誠実さをもって謝罪するときに使われる言葉です。
【例文】
- 私の不徳の致すところであり、深く反省しております。
- この度の不祥事はすべて私の不徳の致すところです。申し訳ございませんでした。
- 妻子ある身でありながら他の女性と交際していたのは、私の不徳の致すところです。
- 異物混入の原因は、ひとえに工場長である私の不徳の致すところです。
- 先日の不適切な発言は私の不徳の致すところと、深くお詫び申し上げます。
「不徳の致すところ」の前に「ひとえに」を置いて、さらに強調する場合もあります。
意味を正確に理解するためにも、「不徳」「致す」「ところ」にこまかく分けて意味や使い方を説明します。
「不徳」の意味は「人の行うべき道に反すること」
「不徳」には「徳が足りないこと」「人の行うべき道に反すること」という2つの意味があります。
罪を犯して「私の不徳により関係各社にご迷惑をおかけし」という使い方をするときは、「人の行うべき道に反する行為で迷惑をかけてしまい」と言い換えることができます。
ちなみに、「徳」には「その身に得たすぐれた品性。人徳」という意味があり、社会性やバランスのとれた精神、道徳心のことを指します。
これらの「徳」が不足している様子が「不徳」であり、「人として未熟」ということですね。
「致す」の意味は「引き起こす・もたらす」
通常、「致す」は「お願い致します」などと「する」の謙譲語として使われます。
しかし、「不徳の致すところ」の「致す」は「引き起こす。もたらす」という意味があり、「ところ」は場所をさしているのではなく、「事柄・内容」という意味で使われます。
あわせると「引き起こした結果」「もたらしたこと」となります。
「不徳の致すところ」の使い方
これまでに述べた通り、「不徳の致すところ」は「自分の徳が足りなくて起こしたこと」「自身が不道徳であったために引き起こしたこと」という意味があり、謝罪する場面で使います。
しかし、謝罪が必要な場面であれば、どんな状況でも使えるわけではありません。
仕事を失念してしまったことを上司に詫びるときや、取引先との打ち合わせに遅刻してしまったときなど、些細なミスや軽度な過失により相手に迷惑をかけたくらいの状況で使うのは大げさすぎる表現だといえます。
「不徳の致すところ」は、企業がコンプライアンス違反をしたときや、製品の欠陥による重大事故を起こしたとき、脱税や粉飾決算・談合など、ルールや社会的規範に従わなかったときに使うのが基本です。
「不徳の致すところ」を用いた謝罪文には次のようなものがあります。
【例文】
- この度の不手際は、すべて私の不徳の致すところです。
- 息子の不始末は、私ども夫婦の不徳の致すところです。
- 私どもの不徳の致すところにより、御社に多大なるご迷惑をおかけしました。
- 部下の不手際は私の不徳の致すところで、お恥ずかしい限りです。
- システムトラブルを予測できなかったことは、ひとえに弊社の不徳の致すところです。
- このたびのデータ流出は当社の不徳の致すところと、猛省しております。
「不徳の致すところ」を使った謝罪文
製品欠陥のお詫び 先般来報道されました件につきましては、日頃からご支援ご愛顧を賜っておりますお客様、お取引先企業様、株主様、関係者の皆様方に、多大なるご迷惑とご心配をおかけいたしましたこと、謹んで深くお詫び申し上げます。 今回の不始末は弊社の不徳の致すところであり、謙虚にかつ厳粛に受け止め、不良品の回収取り替えはもちろんのこと、多くの皆様から賜りましたご叱責やご激励を肝に銘じ、今後はさらに厳しい商品管理体制のもと全社員が一丸となって、再発防止の徹底に努める所存でございます。 今後とも弊社に対しまして、なお一層のご指導ご鞭撻を賜りますよう、伏してお願い申し上げます。 |
なお、取引先や顧客に宛てる謝罪文の書き方は「クレームへのお詫び状の書き方」をご覧ください。
「不徳の致すところ」を使ったビジネスメールの例文集
社員不祥事の謝罪メールで「不徳の致すところ」を使った例文
件名:不祥事のご報告とお詫び お客様各位 平素より大変お世話になっております。 このたび、誠に遺憾ながら、 この度のことは弊社の不徳のいたすところであり、 本件発覚後、ご迷惑をおかけしたお客様には 弊社は今回の事態を重く受け止め、 今後は社員一人ひとりが社会人としての行動規範を改めて自覚するとともに メールにて恐れ入りますが、 ==================== |
そのほかの社員の不祥事の謝罪メールを確認したい方は「社員不祥事のお詫びメールの文例集」をご覧ください。
部下の不手際の謝罪メールで「不徳の致すところ」を使った例文
件名:弊社社員の不手際へのお詫び 株式会社〇〇〇〇 お世話になっております。 昨日は弊社の〇〇が〇〇様に対して、 確認を致しましたところ、 ▢▢には私から厳しく指導致しました。 本人も、今後二度とこのようなことを繰り返さないと このような不手際のないよう、 後日、改めてお詫びに伺いたいと存じますが、 ==================== |
そのほかの社員の不手際の謝罪メールを確認したい方は「部下の不手際のお詫びメールの文例集」をご覧ください。
「不徳の致すところ」の類語
なお、「不徳の致すところ」の類語には次のようなものがあります。
【類語】
- 私のせいです
- 私の所為です
- 全て私の責任です
- 自分の非を認めます
「不徳の致すところ」以外に、あらたまった場で使える謝罪フレーズをいくつか紹介します。
- この度の事故で多大なご迷惑をおかけした件、誠に遺憾の極みです。
- 失礼な応対によりご不快の念をおかけいたしましたこと、心よりお詫び申し上げます。
- 弊社の不手際でご迷惑をおかけしまして、お詫びの言葉もございません。
- 弊社の認識不足による不祥事につきまして陳謝いたします。
- 製品に不具合がありましたこと、心より謝罪いたします。
- この度は監督不行き届きのため、貴社に多大なご迷惑をおかけしました。
そのほかのお詫びフレーズも確認したい方は「謝罪の気持ちが伝わるお詫びメールのフレーズ集・例文10選」をご覧ください。
さいごに
ここでは「不徳の致すところ」について、意味や使い方を詳しく解説しました。謝罪文やビジネスメールの例文を挙げて紹介しましたが、いかがでしょうか。
「不徳の致すところ」は多用すると軽々しく聞こえたり、真剣味が薄れてしまうため、状況に応じて謝罪の気持ちを表す言葉を使い分けることが大切です。
誠意を伝える表現を活用して、反省や謝罪の気持ちを相手に上手く伝えましょう。