社会人にとって、敬語を正しく使い分けることは基本マナーです。
友人との日常会話のなかでは使う機会のなかった言葉でも、ビジネスシーンや目上の人との会話で使用する言葉や敬語表現ってたくさんありますよね。
そのひとつが「お察しします」という言葉です。
たとえば、相手が大変な状況に陥ったときに、相手の胸中を推し量ったり、同情する姿勢を伝えたりする場面で使われる表現ですよね。
でも「お察しします」の敬語は、上司や目上の人に失礼な表現ともいわれていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
ここでは「お察し」の意味や使い方、目上の人に使える表現か、また類語についてご説明します。ビジネスメールで使うときの例文もお伝えするので参考にしてくださいね。
目次
「お察し」の意味・読み方
「お察しします」の読み方は「おさっしします」です。
「お察し」は、動詞「察する」を名詞にした「察し」の丁寧語です。
「察」の漢字には「調べて明らかにする」「おしはかる。思いやる」という意味があることから、「察する」は「人の心中や物事の事情を推し量る。推測する。思いやる。同情する」という意味になります。
丁寧表現の「お察し」は「明示されるまでもなく、推測して了解すること」という意味になります。
分かりやすく言うと、「その場の雰囲気から状況を推察する」に「相手の気持ちを押しはかって同情する」という意味が加わった語句ですね。
「お察し」の使い方
「お察し」は、相手の心中や物事の事情を推し量って了解するという意味でした。
「お察し」には2つの使い方があります。
まず一つ目は「お察しください」という使い方です。
「お察しください」は「わたしの状況や心中を推測してください」という意味になります。
辛い状況にあるときや、言いづらいことなので分かって欲しいというときに「理由を説明しないけど、理解してください…」というニュアンスで使われます。
二つ目の使い方は「お察しします」です。
相手が大変な状況に置かれているときや、説明してもらうのもどうかという場面で「わかりますよ」という意味で使います。
定番フレーズでは「心中お察しします」「お気持ちお察しします」「ご心労お察しします」「胸中お察しします」などがあります。
【例文】
- 被災地にご縁のある皆様のご心痛のほど、お察し申し上げます。
- 先日の事故につきましては、ご心労お察しします。
- こちらの事情をお察しいただきたくお願い申し上げます。
- 皆様のご心中はいかばかりかとお察しいたします。
- ご遺族はもとより貴社社員ご一同様のご落胆、いかばかりかとお察し申し上げます。
- 何卒窮状をお察しいただき、ご配慮いただきますようお願い申し上げます。
- ご事情はお察し申し上げますが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
- お察しのように、あれこれと入り用がございますので、大切に使わせていただきます。
- お早い全快となりましたのも、慎重なご静養と、ご家族みなさまのあたたかいご看病の賜物とお察しいたします。
「お察しします」は目上に失礼?
「お察し」は丁寧な表現なので、「お察しします」や「お察しください」も目上の人に使えます。
しかしながら、「お察しします」を目上の人に使うのは失礼だという意見も少なくありません。ビジネスシーンやかしこまった場面で使っても不自然ではありませんが、目上の方に「お察しします」を使う場合は注意が必要です。
その理由は、目下の人が「あなたの気持ちや辛さはわかりますよ」と、利いた風な口をきくように感じてしまうからです。
例えば、あなたがある会社の社長だとします。今後の経営方針について悩んでいるときに、入社間もない新入社員から「心中お察しします」と言われたらどのような気分になるでしょうか。
口には出さないものの、「偉そうに。お前に何が分かるんだ!」と憤りを覚える場合もあると思います。
「お察しします」は、相手の状況や心情を推察した上で、思いやりや同情の気持ちを表した言葉なので、この表現自体は失礼にあたる言葉遣いではありませんが、気軽に「お察しします」を使わないほうが無難な場合もあると覚えておきましょう。
また、相手に「お察しします」を使う際は、その状況を誰から聞いたのかがポイントとなることもあります。
本人から直接事情を聞いたのであれば問題ありませんが、第三者からまた聞きした場合は気をつけてください。突然「お察しします」と言われて、「何をどこまで知っているのか?誰から聞いたのか?」と逆に不信感を与えてしまう可能性もあります。
「お察しします」を使ったビジネス文書
つづいては「お察しします」を使ったビジネス文書を紹介します。
病気のお見舞い状(例文)
急啓 入院・手術のことを伺い、心よりお見舞い申し上げます。 敬具 |
病気に関するそのほかの例文は「病気のお見舞いの手紙の書き方」をご覧ください。
地震のお見舞い状(例文)
御地で大地震が発生し、甚大な被害が出ているとの報道、大変心配しております。 |
地震に関するそのほかの例文は「地震のお見舞いの手紙の書き方」をご覧ください。
お悔やみ状(例文)
貴社代表取締役社長 〇〇〇〇様のご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。 合掌 |
お悔やみ・訃報に関するそのほかの例文は「お悔やみ状の手紙の文例」をご覧ください。
「お察しします」を使ったビジネスメール
つづいては「お察しします」を使ったビジネスメールの文例を紹介します。
事情を汲み取ってほしいときに送るメール(例文)
件名:納期短縮のお願い 株式会社〇〇〇〇 いつも大変お世話になっております。 現在着工しております△△工事に関してですが、 掛け合ってみましたが、これ以上の日程調整は難しいようです。 つきましては、現在のスケジュールですと工期内の完成が間に合わない為、 ご迷惑も顧みずのお願いで恐縮ですが、 ==================== |
相手の状況は推測するが受け入れらないときに送るメール(例文)
件名:お見積もりの件 株式会社〇〇〇〇 いつも大変お世話になっております。 さて、この度のお見積もりの件につきまして、 ご事情はお察し申し上げますが、 取り急ぎ、ご返事申し上げます。 ==================== |
「お察し」の言い換え・類語
次に、「お察し」の言い換え表現や類語を紹介します。
- 拝察(はいさつ):人の心情などを推測することをへりくだっていう表現。
- 恐察(きょうさつ):他人の事情を推察することをへりくだっていう語。
- 賢察(けんさつ):相手を敬って、その人が推察することをいう語。
- お見受け:状況や心中を推測する。
「拝察」は「お察し」よりもかしこまった印象になり、主に手紙やビジネスメール、スピーチなどに用いられます。「察」に「拝見」や「拝聴」という言葉に使う「拝」がついていることから、謙譲表現だということが分かりますね。「皆様のご心労、拝察いたします」と自分が相手を気遣う際には使えますが、「ご拝察ください」のように相手に拝察をお願いすることはできません。
「恐察」は「拝察」と同じく、察することの謙譲語です。使い方も「拝察」と同じように、「ご多忙のことと恐察申し上げます」となります。
「お見受け」は、見て判断するという意味の「見受ける」を名詞にし、丁寧にした表現です。「拝察」と同様に、「お見受け」も「お忙しいこととお見受けします」のように、自分が相手の状況に対して使う表現となります。
「賢察」は相手が推測することを敬って表す尊敬語です。自分の状況や心中を分かってほしい時に、「事情をご賢察ください」といった使い方ができます。
【例文】
- ご多忙のこととお見受けします
- 心中いかばかりかと拝察申し上げます。
- 事情ご賢察の上、ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
- 皆様の悲しみはいかばかりかと拝察申し上げます。
さいごに
ここでは「お察し」の意味や使い方、例文についてお伝えしましたが、いかがでしたか?
「お察し」の意味やニュアンスはなんとなく知っていた方も、目上の人に使うときの状況によっては「お察しします」が失礼にあたる場合もあることは知らなかったのではないでしょうか。
相手に同情の意を表したつもりが、逆に不快な思いをさせてしまっては元も子もありません。
「お察しします」を使うときは、相手との関係や状況、また誰から聞いたのかを考慮してから口に出すようにしてください。また、今回紹介した例文や類語についても、シチュエーションに合わせて上手に使ってくださいね。