突然ですが、「衷心より」という言葉の意味や使い方はご存知ですか?
「衷心」の読み方は「ちゅうしん」です。
- 衷心より御礼申し上げます。
- 衷心よりお詫び申し上げます。
- 衷心よりお悔やみ申し上げます。
手紙の文中やビジネス文書で、上記のような表現で使われているのを目にすることがありますね。
かしこまった印象を受ける言葉ですが、意味や使い方が曖昧なまま何となく使用している方も少なくありません。
ここでは「衷心より」の意味や使い方・類語について詳しくご説明します。「衷心」を使ったビジネス文書の例文も紹介するので参考にしてくださいね。
目次
「衷心より」の意味
「衷心」とは「心の中。心の底。衷情」という意味です。※「衷情(ちゅうじょう)」とは「嘘や偽りのない本当の心」のこと。
そのため「衷心より」とは「心の底から思うこと」という意味になります。
「衷心」の「衷」の漢字は音読みで「ちゅう」、訓読みで「こころ・まこと」と読み、「まごころ」「偏らないこと」という意味をもちます。
「心」は「偽りや飾りのない本当の気持ち」という意味、「より」という表現は「から」の改まった丁寧な言い回しとなります。
「衷心より」の使い方
「衷心より」は「心の底から思うこと」という意味でした。
「衷心より」はそれ単体で使うものではなく、あとに続く言葉を強調するための表現です。
たとえば、「衷心よりお祝い申し上げます」という表現は「心の底から祝福の気持ちを言わせていただきます」という意味となり、より深く丁寧に心の底から思うことを伝えるときに使います。
「衷心より」の言葉は、挨拶状やお祝い状、結婚式の祝辞やお悔やみの言葉など、かしこまった場面において幅広く使われます。取引先の方が開業したときや創業の周年式典のお祝いの言葉や、不幸があった場合に弔電で使います。
礼状や挨拶状、電報といった書き言葉で定型文として使用することが多い言葉であり、話し言葉ではあまり使いません。
また、「衷心より」は目上の人に対して使う表現です。同等の立場や目下の人に対しては基本的に使いません。かしこまった表現なので、使ってしまうとよそよそしい印象を与えてしまう可能性があります。
同等の立場や目下の人には、「衷心より」の本来の意味であり柔らかい表現の「心から」や「心より」という言葉を使いましょう。なお、目上の人であっても親しい間柄であればこれらの表現を使った方が、気持ちが伝わりやすい場合もあります。相手との関係性に応じて適切に使い分けることが大切です。
「衷心より」の例文集
つづいては「衷心より」を使ったシチュエーション別の例文をご紹介します。
お祝いの言葉
- 新会社を設立されました由、誠におめでたく、衷心よりお祝い申し上げます。
- この度は新店舗の開店祝いにお招きいただき誠にありがとうございます。所用で残念ながら出席できませんが、新規開店を衷心よりお祝い申し上げます。
- 後日新しいお店に伺いたく存じますが、まずは書中にて衷心よりお祝い申し上げます。
感謝の言葉
- ご厚情を賜り、衷心より感謝申し上げます。
- このたび第〇回定時株主総会および取締役会をもちまして、株式会社〇〇〇〇取締役を退任することとなりました。在任中に賜りました格別のご厚情に衷心より御礼申し上げます。
- 日頃のご愛顧に感謝し、衷心より御礼申し上げます。
- この度定年を迎えられ、我が社への長年の功労に衷心より感謝の意を表します。
- 平素は何かとお引き立てをいただき、衷心より感謝申し上げます。
お詫びの言葉
- 本件の不手際に際し、深く反省し今後このようなことがないよう社員一同努めてまいります。衷心よりお詫び申し上げます。
- この度はお客様に多大なるご迷惑をお掛けし、衷心よりお詫び申し上げます。
- 私の判断でこのような問題が多発してしまいました事態を、大変重く受け止めております。まずは衷心よりお詫び申し上げます。
お悔やみの言葉
- この度は突然の訃報を聞き、大変驚き残念に思っております。衷心よりお悔やみ申し上げます。
- 病との長い闘いを終え、ようやくゆっくり休むことができますね。天国で安らかにお過ごしください。衷心よりお悔やみ申し上げます。
- 仲のよかった奥様の急逝に、旦那様の悲しみは計り知れないものがあると思います。衷心より哀悼の意を表します。
「衷心より」を使ったビジネス文書の例文
さて、つづいては「衷心より」を使った手紙や書状の例文を紹介します。
「衷心よりお祝い申し上げます」
拝啓 薫風の候、〇〇様にはますますご壮健の由、お喜び申し上げます。〇〇支社ご在職中は一方ならぬご懇情を賜りました。改めて心からお礼申し上げます。 敬具 |
なお、その他の栄転祝いのお礼状を見たい方は「昇進祝い(栄転祝い)の手紙の書き方|文例つき」をご覧ください。
「衷心よりお願い申し上げます」
謹啓 盛夏の候、各位にはますますご清祥のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご懇情を賜り、深く感謝申し上げます。 謹言 |
なお、その他の新築祝いのお礼状を見たい方は「新築祝い(引っ越し祝い)のお礼状の書き方|文例つき」をご覧ください。
「衷心より御礼申し上げます」
下記文例は、香典返しを兼ねた会葬礼状を送るときの文面です。
このたびはご多忙のところ わざわざ弔問賜り またご鄭重なるご芳志を頂戴し 誠にありがたく 衷心よりお礼申し上げます 喪主 |
その他の文例を見たい方は「会葬礼状の書き方|文例つき」をご覧ください。
「衷心よりお詫び申し上げます」
会社廃業のご挨拶 拝啓 初秋の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素はひとかたならぬご厚誼を賜り、心より御礼申し上げます。 敬具 |
「衷心よりお悔やみ申し上げます」
ご尊父様逝去の報に接し、ご冥福をお祈りし、衷心よりお悔やみ申し上げます。 合掌 |
その他の文例は「お悔やみ状の手紙の書き方」をご覧ください。
「衷心より哀悼の意を表します」
ご母堂ご他界の悲報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます。今は驚きのあまり呆然としており、お悔やみの言葉をいうほか、何と申し上げてよいか、慰めの言葉が見つかりません。 合掌 |
上記文例は親しい友人に宛てるときの文例です。その他の文例は「お悔やみ状の手紙の書き方」をご覧ください。
「衷心より拝謝申し上げます」
謹啓 早春の候、貴社益々ご隆昌のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご愛顧を賜り衷心より拝謝申し上げます。 謹白 |
その他の文例は「開店祝い・開業祝いの手紙の書き方|文例つき」をご覧ください。
「衷心より」の類語・言い換え表現
次に、「衷心より」の類語や言い換え表現をご紹介します。
- 心から
- 心より
- 切に
- 誠に
- 心底
- 深厚な
どの表現も「衷心より」の類語に当たります。「心より」「心から」「心底」はどれも本当の気持ちで言動がなされるさまを表しており、「心の底から思っている」という気持ちを伝えることができます。「心から」は話し言葉として用いられることが多く、「心より」は文章で用いられることが多いです。
「切に」は「心を込めてするさま」「身に染みて強く感じるさま」という意味があり、「とても」の同義語にあたります。「切に」も「本当に思っている」という気持ちを強調するフレーズです。ちなみに「切に」のあとには「願っています」という表現が続くことが一般的です。
なお、「誠に」は「偽りなく」「本当に」という意味があり、誠実な気持ちを伝える言葉です。
「深厚な」とは「意味が奥深いこと」「心情が極めて深く厚いこと」という意味で、心を込めた気持ちを表すことができます。
「衷心より」はかしこまった表現であり書き言葉なので、親しい間柄の友人との会話で使うと堅苦しい印象を与えることもあります。相手や状況に応じて使い分けることを心がけましょう。
【例文】
- この度の災害で被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。
- お母様の病状が早く回復されますことを切に願っております。
- 会社のために尽力くださった〇〇さんに、深厚な敬意を表したいと思います。
さいごに
ここでは「衷心より」の意味や使い方についてお伝えしました。状況別のフレーズや手紙の文例を詳しくご説明しましたが、理解できましたか?
「衷心より」は書き言葉なので主に手紙や書状で使うことが多い表現です。あなたの気持ちを強調して伝えたいときに便利な言葉なので、この機会に使い方をしっかり覚えて上手く活用してくださいね。