突然ですが、「お忙しいところ」の意味や正しい使い方はご存知ですか?
ビジネスシーンでは「お忙しいところ」の敬語表現が頻繁に使われます。
会話の中やメールの文面で、以下のフレーズを見聞きしたことがあると思います。
- お忙しいところ恐れ入りますが
- お忙しいところ申し訳ありませんが
- お忙しいところ大変恐縮ですが
「お忙しいところ」は便利な言葉ですが、残念ながら間違った使い方をしている人は少なくありません。特に、ビジネス敬語を使い慣れていない就活生の方や、社会人歴の浅い若手社員の方に多いです。
ここでは「お忙しいところ」の意味や使い方をご説明します。「お忙しいところ恐縮ですが・申し訳ありませんが」のフレーズを使ったビジネスメールの例文や、「ご多忙・ご多用」といった言い換え表現の使い方についてもお伝えするので参考にしてくださいね。
「お忙しいところ」の意味・使い方
「お忙しいところ」の意味は「忙しいところ」「多忙の中」です。
相手に依頼するときやお礼、また督促するときなど、さまざまな状況で使うことができるフレーズです。上司や取引先、お客様といった目上の人にも使えます。
なお、「お忙しいところ」は、物言いをやわらかく、より丁寧に伝える「クッション言葉」として使用するのが基本です。
たとえば、相手に負担を強いるお願い事をするときは「お忙しいところ恐れ入りますが」と恐縮の言葉を前置きすることによって、謙虚な姿勢を伝えられます。
では、実際にビジネスシーンではどのような場面で使われるのでしょうか。「お忙しいところ」は以下の3つの状況で使用します。
- 相手に依頼をするとき
- ねぎらいや感謝の気持ちを伝えるとき
- メールやビジネス文書の結びの挨拶
次節では、それぞれの使い方を例文つきでご説明します。
相手に依頼をするとき
相手に依頼事をするときや、対応をお願いするときなど、負担をかけて申し訳なく思う気持ちを伝えるときに使います。
前置きに「お忙しいところ申し訳ありませんが」とつけることにより、相手の状況に思いをめぐらせて「忙しいときにこのようなお願いをするのは申し訳ないのですが」と、配慮を示しつつ用件を伝えることができます。
「お忙しいところ」を使った代表的な定型句は、以下のとおりです。
- お忙しいところ恐れ入りますが
- お忙しいところお手数をおかけしますが
- お忙しいところ恐縮ですが
なお、お願いしたときに相手が実際に忙しいかどうかは重要ではありません。相手が暇を持て余しているような状況でも、負担をかける立場として「お忙しいところ」を使うのがマナーです。
【例文】
- お忙しいところ恐れ入りますが、お返事をいただけますと幸いです。
- お忙しいところお手数をおかけしますが、ご意見頂戴できればと思います。
- お忙しいところ大変恐縮ですが、お手すきの際にご連絡くださいますようお願い申し上げます。
- お忙しいところ度々のお願いとなり恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
- お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認の程、お願い致します。
- お忙しいところ恐縮ですが、ご回答の程よろしくお願い申し上げます。
また、ビジネスメールの挨拶文で使うときや、相手に話かけるときは、以下のフレーズを使います。
- お忙しいところ失礼します。
- お忙しいところすみません。
- お忙しいところ恐縮です。
ちなみに「お忙しいところ」と前置きを入れた上で相手に何かを依頼する場合、対応を急かすのはマナー違反です。クッション言葉を用いて示したせっかくの気遣いが無にならないよう、時間を要する依頼をしたときはあからさまに期日を設けたりしないよう気を付けましょう。
ねぎらいや感謝の気持ちを伝えるとき
相手を労うときや感謝・お礼の気持ちを伝えるときにも「お忙しいところ」を使うことができます。
例えば、相手がこちらの依頼を承諾してくれたときや、協力してくれたとき、またお願い事を聞き入れてくれたときです。
「お忙しいところ」から始まるクッション言葉の後に「ありがとうございます」や「お礼申し上げます」などと謝辞を述べることで、相手の厚意や配慮に対する謝意を表現することができます。
「お忙しいところ」を使った、ねぎらいや感謝の気持ちを伝えるときの例文は、以下のとおりです。
【例文】
- お忙しいところご連絡いただき、ありがとうございました。
- お忙しいところご対応くださり、誠にありがとうございます。
- お忙しいところ、貴重な時間をいただき、誠にありがとうございました。
- お忙しいところお取り計らいくださり、感謝申し上げます。
- 先日はお忙しいところ、弊社までお越しいただき、ありがとうございました。
- お忙しいところ、ご足労いただき誠にありがとうございます。
ビジネスメール・文書の結びの挨拶として
「お忙しいところ」はメールやビジネス文書の結びの挨拶としても使うことができます。文中で相手に何かを依頼をしたあと、その締めくくりとして使用します。
へりくだる気持ちを表して、丁寧な印象を与えることができるので、特に、ビジネスメールでは使われます。
【例文】
- お忙しいところ恐縮ですが、ご検討の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
- この度はお忙しいところ、ご尽力いただきありがとうございました。
- お忙しいところ誠に恐れ入りますが、引き続きよろしくお願い申し上げます。
「お忙しい中」と「お忙しいところ」の使い分け方
「お忙しいところ」と似た表現に「お忙しい中」があります。両者はどのような使い分けをするのでしょうか。
結論からお伝えすると、使い分けに関する明確な基準がある訳ではありません。ただし、それぞれの言葉の意味から細かく使い分けることは可能です。
まず「お忙しいところ」の「ところ(所)」には、「場面」や「局面」という意味があります。
一方で「お忙しい中」の「中」は「物事が進行している最中。また、ある状態が続いているとき」という意味です。ちなみに「最中」の意味は「動作・状態などが、いちばん盛んな状態にあるとき」です。
つまり、「お忙しいところ」は、忙しい状況や状態そのものを指して使う言葉ですが、「お忙しい中」は相手が最も多忙な状態にあるときを言う言葉だといえます。
ただし、どちらも枕詞であり、細かく使い分けがされている訳ではないので、前後の文脈などから判断して使うとよいでしょう。
「お忙しいところ」の類語・フレーズ集
「お忙しいところ」の類語表現は下記の通りです。
「ご多忙」
「ご多忙」とは「非常に忙しいこと」という意味です。
「お忙しいところ」というフレーズをよりかしこまった表現にしたいときに使えます。「ご多忙のところ」「ご多忙にも関わらず」「ご多忙とは存じますが」「ご多忙の折」と使いましょう。
【例文】
- ご多忙のところ大変恐縮ですが、ご検討いただけますと幸甚です。
- ご多忙にも関わらずご参加いただき、誠にありがとうございます。
- ご多忙とは存じますが、ご配慮くださいますようお願い申し上げます。
- ご多忙の折、お手数をおかけして恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。
「ご多用」
「ご多用」とは「用事の多いこと。忙しいこと」という意味です。
「ご多忙」と同じ意味ではありますが、「ご多忙」の「忙」の漢字が「心を亡くす」と書くことから使用を避ける方もいます。そういった理由から、冠婚葬祭でも「お忙しい」や「ご多忙」ではなく「ご多用」を使うのが一般的です。
「貴重なお時間をいただき恐縮です」としても良いでしょう。相手との関係性や場面に応じて言葉を使い分けることも、社会人にとって大切な礼儀のひとつといえます。
【例文】
- ご多用中申し訳ありませんが、諸事情ご勘案の上、ご理解賜りますよう心よりお願い申し上げます。
- ご多用のところ恐縮ではございますが、是非ご来場いただければと思います。
相手にお願いするときの「お忙しいところ」の別の言い回し
「お忙しいところ」は相手を尊重しながら依頼するときのフレーズでした。
忙しいことを気遣う言い回しのほかにも、申し訳ない気持ちを強調した表現や差し迫った状況である中で無理を聞き届けてもらうような表現もあります。
- ご迷惑も顧みずのお願いで恐縮ですが
- 厚かましいお願いとは存じますが
- 身勝手きわまる申し入れだということは承知しておりますが
- 急なお願いで恐れ入りますが
- 勝手なお願いでも申し訳ないのですが
- 唐突なお願いで失礼かと存じますが
- 突然のご無礼をお許しください
「お忙しいところ」以外のクッション言葉や定型句を理解し、状況に応じて上手く使い分けることが大切です。
「お忙しいところ」を使ったビジネスメール例文集
さいごに「お忙しいところ」を使ったビジネスメールの例文を紹介します。社外の取引先や顧客、社内の上司に宛てるときの参考にしてくださいね。
「お忙しいところ恐縮ですが」を使った依頼メール
件名:会議資料ご確認のお願い 〇〇部長 お疲れ様です。△△です。 〇月〇日の営業部会議で使用する資料が完成致しましたので ご査収くださいませ。 なお、修正や変更箇所がございましたら お忙しいところ恐縮ですが、 ==================== |
「お忙しいところ恐れ入りますが」を使った依頼メール
件名:懇親会のお知らせ 営業部の皆様 お疲れ様です。営業部の△△です。 来週〇日に営業部で懇親会を開催することとなりました。 ■懇親会の詳細 参加人数確定後、席の予約を入れますので、 お忙しいところ恐れ入りますが、 ==================== |
その他の文例は「懇親会参加のお願いメール」をご覧ください。
「お忙しいところありがとうございます」を使ったお礼メール
件名:プレゼン資料作成ご協力のお礼 〇〇課長 お疲れ様です。△△です。 本日はお忙しいところ、プレゼン資料の作成に おかげ様で、株式会社〇〇様への提出締切日に 今後は〇〇課長に頼らずとも一人で仕事を進められるよう、 また、〇〇課長のご期待に添えるよう 今後ともご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。 ==================== |
その他の文例は「仕事を手伝ってもらったときのお礼メールの文例集」をご覧ください。
「お忙しいところお時間をいただき」を使ったお礼メール
件名:ご面談のお礼 株式会社〇〇〇〇 お世話になっております。 本日、弊社商品の〇〇をご提案させて頂きました、 お忙しいところ貴重なお時間をいただき 弊社の商品に関しまして、 〇〇様にお会いできましたご縁を大切に、 メールにて恐れ入りますが、 ==================== |
その他の文例は「営業訪問後のお礼メールの文例集」をご覧ください。
「お忙しいところお越しいただき」を使ったお礼メール
件名:ご来社のお礼 株式会社〇〇〇〇 平素より大変お世話になっております。 この度はお忙しいところ、弊社まで遠方からお越しいただき、 〇〇様のご希望・ご要望を率直にお聞きすることができ、 本日ご案内致しました弊社商品「〇〇〇〇」を ご不明点やご質問など御座いましたら、 担当として誠心誠意努力いたす所存でございます。 今後とも引き続き宜しくお願い申し上げます。 ==================== |
その他の文例は「来社・来訪後に送るお礼メールの文例集」をご覧ください。
「お忙しいところ~幸いです」を使ったお願いメール
件名:〇〇プロジェクト第2回打合せ日程のご相談 株式会社〇〇〇〇 いつもお世話になっております。 〇〇プロジェクトに関する第2回目の つきましては、まずは当方のお伺い可能な日時を 【候補日時】 お忙しいところ恐れ入りますが、 お打ち合わせの時間は2時間を予定しております。 他の日時をご希望の場合は、 上記につきまして何卒よろしくお願い申し上げます。 ==================== |
「幸いです」の正しい使い方を知りたい方は「幸いですの意味・使い方|目上に使うときの類語・同義語・例文つき」をご覧ください。
「お忙しいところ~返信お願いします」を使った依頼メール
件名:会議資料の準備に関するご確認 〇〇部長 お疲れ様です。△△です。 来週の会議資料を作成しておりますが、 契約締結は完了しているものの入金の確認ができていない顧客が お忙しいところ恐れ入りますが、 よろしくお願い申し上げます。 ==================== |
さいごに
ここでは「お忙しいところ」の意味や使い方をお伝えしましたが、いかがでしょうか。
ビジネスシーンでは、目上の人に何かをお願いしたりお礼の言葉を述べたりすることは日常茶飯事です。
「お忙しいところ」をはじめとしたクッション言葉は、相手により丁寧でやわらかい印象を与えることができます。
この機会に正しい使い方を是非覚えておいてくださいね。