「まずは先方に打診してみよう」「打診があれば検討する」などの使い方で、「打診する」という言葉をビジネスシーンで耳にする機会は多いと思います。
この「打診する」の意味を、正しく理解できていますか?
ここでは「打診する」の正しい意味や使い方について解説します。打ち合わせ日程の調整を依頼するときや、仕事の提案をするときの打診メールについて、社内・社外の例文はもちろん、類義語や対義語も紹介するので参考にしてくださいね。
目次
「打診する」の意味・使い方
「打診する」には下記の2つの意味があります。
- (1)医者が患者の胸や背などを指先や打診器でたたき、その音で診察すること
- (2)相手の意向を確かめるために、前もって事を伝えて様子をみること
「打診」はもともと医療行為に関する言葉で、医師が患者の胸や背中をトントンと打ち、そこから返ってきた音の響き方から体の具合を診ていたことに由来する言葉です。
漢字の組み合わせを見れば、胸や背中を「打つ」と、診察するの「診る」が並び、(1)の意味を持つ言葉だと分かりますね。
ビジネスシーンで使う「打診する」は、そこから派生して「言葉を投げかけて、相手の反応を見る」という(2)の意味で使われるようになりました。
「打診する」は、相手の意向を確かめることを表す語であり、「お願い」や「依頼」の意味は一切含まれないので注意しなくてはなりません。あくまでも「相手の考えを尋ねる」ときに使う言葉です。
打診されたときも同様に、決定事項としてではなく、一つの提案として受け止めましょう。
【例文】
- 部下に営業部への異動を打診する。
- 大型プロジェクトへの参加について、部長から打診があった。
- 競合他社から業務提携の打診を受ける。
「打診する」時点では、相手に承諾させるような効力はなく、相談するときに使う言葉であり、正式な依頼ではないことを理解しておきましょう。上記例文に営業部への異動の打診と明記していますが、「打診する」は「辞令」ではありません。相手の了解を取り付けたとしても、打診しただけでは何も決定していません。
なお、打診するときは敬語を正しく使い、押しつけがましい態度にならないよう丁寧かつ謙虚な姿勢で臨みましょう。
打診するとき・打診されたときのビジネスメールの例文集
つづいては打診メールの書き方・返信の仕方を紹介します。
打ち合わせ日程の打診メールの例文(社外)
件名:打ち合わせ日程のご相談 株式会社〇〇〇〇 日頃より大変お世話になっております。 〇〇サービスのご導入に関するお打ち合わせの日程を 誠に勝手ではございますが、 【お打ち合わせ日時候補】 お手数おかけいたしますが、 いずれの日程もご都合の悪い時には、 ご多忙とは存じますが、 ==================== |
なお、そのほかの文例も確認したい方は「打ち合わせの依頼メールの文例集」をご覧ください。
打診の依頼メールの例文(社外)
件名:追加のご提案のお願い 株式会社〇〇〇〇 お世話になっております。 先日はご提案いただき、 貴社からのご提案は社内でも大変好評で、 今回は当社の商品〇〇についての ご了承いただけましたら追って詳細をお伝えしますので、 まずはメールにてお願い申し上げます。 ==================== |
送別会・飲み会参加の打診メールの例文(社内)
退職が決まっている上司に対して、幹事であるあなたから送別会への参加を打診するときのメール例文です。
件名:送別会の件 〇〇課長 お疲れ様です。△△です。 この度の役職を全うされてのご退職、 社員一同、長年にわたりご指導いただきましたこと、 つきましては社員一同で感謝と慰安の意を込めまして、 お忙しいなか、貴重なお時間をいただきますが、 ご参加可能なお日にちをお教えくださいませ。 ==================== |
なお、送別会の開催日を送るときは「送別会の案内メールの文例集」をご覧ください。
上司に仕事の提案を打診するメールの例文(社内)
件名:営業戦略についての再検討のお願い 〇〇本部長 お疲れ様です。△△です。 昨日の会議で話のあった来期の営業戦略につきまして 現場の意見を集め、一丸となって行動することにより、 不躾なお願いで恐縮ですが、 ==================== |
打診への返信メールの例文(社内)
件名:Re:転勤の相談 〇〇部長 お疲れ様です。 私のキャリアプランにつきまして お話しいただいた内容について 近日中にお返事いたします。 ==================== |
相手から打診を受けたときは「打診ありがとうございます」とは言いません。例文のように「ご提案(ご相談)いただきありがとうございます」や「お心遣い(お気遣い)いただき、ありがとうございます」と返事するのがマナーです。
「打診する」の言い換え・類語
ここでは「打診する」の言い換え表現を紹介します。相手の考えを引き出すために「言葉を投げかける」ときの別の言い回しには下記の言葉があります。
- 提示する
- 提案する
- 表明する
【例文】
- 派遣の契約内容を提示する。
- 新プロジェクトの企画を提案する。
- 参加の意思を表明する。
「相手の意向を尋ねる」という意味では下記の言葉が似た意味を持ちます。
- 是非を問う
- 賛否を問う
- 意見を求める
【例文】
- 国民からの是非を問う。
- 署名を集めて本件に対する賛否を問う。
- 社員たちの意見を求める。
次は、上記よりもさらに深く、承諾の返事を求めてお願いするというようなニュアンスを含む言葉です。
- 頼む
- 申し込む
【例文】
- プロジェクトへの参加申し込みをする。
- 協力したいと頼む。
「打診する」レベルから、しっかりとした返事が欲しいレベルまで、臨機応変に言葉を使い分ける必要がありそうですね。
「打診する」の反対語
「打診する」の反対の意味を表す語にはどのようなものがあるのでしょうか。
実は「打診する」には、明確な対義語が存在しません。ただ、「打診する」には「相手の意向を確かめる」という相手の意思を尊重する意味合いを持つため、それに反する以下の言葉を反対語として使えます。
- 無理強いする
- 強いる
- 指示する
- 命令する
- 有無を言わさず
【例文】
- 有無を言わさず決定する。
- 部下の他部署への異動を命令する。
- イベントへの参加を強要する。
- 無理強いしてみんなの前に立たせる。
これらを反対語だと見ると「打診する」は相手の意向を尊重した言葉だと分かります。なにか確認をされたとき、それが「打診」の段階だと分かれば、断るという選択肢も可能だと理解しておきましょう。
まとめ
「打診する」の意味や使い方について詳しく解説しましたが、いかがでしょうか。
要望や交渉ではなく、相談のニュアンスが強い言葉ですが、特に、メールで打診するときは言葉遣いに気をつけ、相手の反応を得られたとしても柔軟に対応できるような心構えをしておくことが大切です。
誤解を与えたりトラブルになったりしないよう、適切な敬語表現を用いた正しい使い方をマスターしましょう。