「善処します」は失礼!意味や正しい使い方・丁寧な言い換え表現まとめ

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「善処します」は失礼!意味や正しい使い方・丁寧な言い換え表現まとめ

突然ですが、「善処します」の意味や使い方はご存知ですか?

「善処」の読み方は「ぜんしょ」ですね。

日常生活の中ではあまり使わない言葉ですが、政治家の国会答弁やビジネスシーンでは「前向きに善処します」という使われ方で、たびたび耳にします。

「善処します」の言い回しは便利な言葉ですが、使うときの状況によっては相手に失礼な印象を与えてしまうので注意しなくてはなりません。

ここでは「善処します」の意味や使い方についてご説明します。類義語や対義語についてもお伝えするので参考にしてくださいね。

「善処します」の意味

「善処」の辞書的な意味は「状況に応じて適切に処置すること」という意味です。

「善処」を構成するそれぞれの漢字からも意味を理解することができます。「善(善い)」は「適切・適当な水準に達しているさま」、「処(処する)」は「ある情況に身を置いて、それに応じた行動をとる」という意味があります。

意味や字面からは前向きな印象を受けますが、実際に「善処します」を使うときは「できる限り頑張ります」「達成できるか不安ですが、やれるだけやってみます」というニュアンスを伝えたいときに使用します。

「善処します」の使い方

「善処します」とは「不安な点はあるけれど頑張ってみます」という前向きなニュアンスを含む言葉とお伝えしました。

ちなみに「善処します」は目上の人にも使える表現です。

ビジネスシーンでは、相手から改善を求められたり事態を収拾したりするために、何らかの行動をとる必要が生じたときに「善処する」が使えます。

例えば、上司から仕事のミスに関して注意を受けたときに「同じ過ちを犯さないよう善処します」と返答することによって、誠意を伝えることができます。

なお、「善処します」には「一旦保留にする」という意味合いで使われるときもあります。相手の要望を受け入れることができるか不確かなときや、名言を避けたいときの返事や返信として使われます。

また、目上の人に対応をお願いしたいときや依頼したいときに、丁寧語の「ご」を付けて「ご善処いただきたい」という使い方をすることもできます。

それぞれの使い方を見てみましょう。

「善処します」を返事・返信として使うとき

前述した通り、「善処します」は上司や取引先から依頼されたときの返事として使うことができます。

そのときの「善処します」の意味は「お願いされた内容を適切に処置していきます」です。

しかしながら、「善処」には「可能な限りやってみます」という断定を避けるニュアンスを含むほか、苦し紛れにその場を取り繕う意味でも使われるため、注意しなくてはなりません。

国会答弁で質問攻めにあった政治家が「善処します」とその場しのぎのために使うことがあることから、相手の受け取り方によっては礼儀知らずの印象を与える可能性もあります。

そのため、よりはっきりと誠意を示したいときは、他の表現を使ったほうが誤解を与える心配もありません。

なお、もし公的機関に依頼や要望を出したときに「善処します」と返答されたら、遠回しに断られている、もしくは何らかの対処はしてくれるものの、要望通りの結果は得られない可能性が高いと考えておくようにしましょう。

念のため、返事で使うときの言い回しを紹介します。

【例文】

  • その件につきましては善処します。
  • 誠心誠意善処いたしたく存じます。
  • 同じ過ちを犯さないよう、善処を尽くします。
  • ご要望に関して、善処するよう努めます。
  • 善処いたしますので、今しばらくお待ちいただけると幸甚です。
  • 本件につきましては前向きに善処する所存です。

お願い・依頼するときの使い方

「善処」は相手に何らかの改善や要望を依頼するときや、手段や方法が漠然としているときのお願いフレーズとしても使うことができます。相手にお願いするときは「善処を望みます」といいます。

「善処」はかしこまった表現なので、ビジネスシーンで目上の人にお願いするときに適した言い方です。堅苦しい表現を避けて柔らかい言い回しを使いたいときは別の表現を使いましょう。

相手にお願いするときの「善処」を使った例文は下記のとおりです。

【例文】

  • 何かと事情がおありかと存じますが、善処くださいますようお願い申し上げます。
  • 本件につきまして、原因を明らかにすると共に善処を期待しています。
  • 建物の大規模改修において、善処を望みます。
  • 善処していただきますよう申し入れます。
  • 福利厚生について善処を訴えるつもりだ。
  • サービスにおいて、善処を求める。
  • 今後このようなトラブルが起きないよう、善処してもらいたい。
  • 何卒善処していただけないでしょうか。

「善処」の類語・言い換え表現

「善処」の類語には下記の言い換え表現があります。

対処

「対処」とは「ある事柄・状況に合わせて適当な処置をとること」という意味です。

「善処」と「対処」は似た意味を持ちますが、「善処」は「対応や方法が曖昧でなんとなくうまく処置します」といったニュアンスなのに対し、「対処」はより具体的に「適切に行動する」ときに使われます。

例えば、クレーム対応やシステムの不具合のように、対応策を具体的に講じるときは「対処」を使いましょう。

【例文】

  • 迅速に対処いたします。
  • 何卒迅速な対処をお願い申し上げます。
  • 厳正に対処するとともに、服務規律の確保を徹底して参る所存です。

対応

「対応」とは「周囲の状況などに合わせて事をすること」という意味です。「対応」は状況に応じた相手へのリアクションを指す言葉です。

「善処」は「良くなるよう処置する」と改善や向上といった前向きな対処に使う言葉ですが、「対応」は良い悪いに関わらず使える言葉なので、「善処」に比べて広く使うことができます。

【例文】

  • 恐れ入りますが、ご対応のほど、よろしくお願い申し上げます。
  • ご対応くださいますようお願い申し上げます。
  • 迅速に対応をしていただき、誠にありがとうございます。

お取り計らい

「お取り計らい」は「物事がうまく運ぶように考えて処理をする」という意味です。

ビジネスシーンでは相手の気遣いや思いやりを丁寧に表現した言葉であり、お願いする場面やお礼を述べるフレーズとして使用されます。

【例文】

  • お取り計らいくださいますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
  • よろしくお取り計らいください。
  • お取り計らいいただいたことに、心より感謝申し上げます。

なお、自分の行動を指して使う言葉ではないので注意しましょう。

「お取り計らい」の意味や使い方を詳しく知りたい方は『「お取り計らい」の意味・使い方』をご覧ください。

「善処」の対義語

つづいては「善処」の対義語をご紹介します。混同しやすく誤用も多い言葉なので、この機会にしっかりと確認をしておきましょう。

おざなり

「おざなり」は「いいかげんに物事を済ませること。その場だけの間に合わせ」という意味です。

漢字では「御座なり」と書き、当座の間に合わせや、投げやりで適当に物事を行うことを示しています。「おざなり」を使った例文は以下の通りです。

【例文】

  • もうすぐ大規模改修なので、今のところはおざなりな対策とする。
  • 気に食わない人物を、おざなりな態度で迎える。
  • 興味のない話題なので、おざなりを言う。

なおざり

「なおざり」は「いいかげんにしておくさま。本気でないさま。おろそか」という意味です。

漢字では「等閑」と書きます。きちんとすべきことをいいかげんにするさまをいい、場合によっては未着手の状態を指します。

「なおざり」を使った例文は以下の通りです。

【例文】

  • 定期試験間近にもかかわらず、学業をなおざりにする。
  • 忙しさを理由に、報告書をなおざりにする。
  • 本題から逸脱しているので、なおざりに聞き流す。

なお、「おざなり」と「なおざり」の違いや詳しい使い方は『「おざなり・なおざり」の意味・違い』をご覧ください。

さいごに

ここでは「善処します」の意味や使い方についてお伝えしましたが、いかがでしょうか。

相手に返答するとき、本来の言葉の意味とは違うニュアンスを含むことから、意図を読み取りにくい表現といえます。そのため、誤解を招かないよう使うときは注意しなくてはなりません。

この機会に使い方をしっかり覚えておいてくださいね。

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