ビジネスの場において、迷惑をかけてしまった相手に謝罪するときや、反省の意を示すとき、「真摯に受け止めております」という言い回しを使います。
あらたまった場面では、丁寧な言葉遣いや、その状況にふさわしい態度で臨むことが求められるため、定型句として「真摯」という言葉を使用することがありますが、その意味や正しい使い方を理解していますか?
ここでは「真摯」の意味や正しい使い方、類義語について詳しく解説します。また、「真摯に受け止める」というフレーズはどのような場面で使うべき言葉なのかについても、例文をあげて紹介しますので、参考にしてくださいね。
目次
「真摯」の意味と使い方
「真摯(しんし)」とは、「まじめで熱心なこと。事を一心に行うさま」という意味があります。
「真」の漢字には「本当」という意味があり、「摯」には「つかむ、まじめ」という意味があることから、「真摯」を使うことによって、「本当に真面目」「偽りなくまじめ」という自身の態度を示すことができます。
「真摯」は名詞および形容動詞として使用されますが、「真摯に取り組む」「真摯な対応」といった形で、主に形容動詞として使われる言葉です。
【例文】
- お客様のクレームに対して真摯に対応する。
- 何事にも真摯に取り組む姿勢は彼の美点だ。
- 皆様のご指摘を真摯に受け止めて、誠実に職務に邁進して参ります。
- マネジメントに不可欠な資質は「真摯さ」である。
- 限界集落が抱える課題に真摯に取り組む。
「真摯」は謝罪の場でよく耳にするフレーズのため、謝るときの言い回しという印象を持つかたも少なくありません。ですが、意味や上記した例文にもあるとおり、悪いことがあったときに限定して使われる言葉ではないので気をつけましょう。
「真摯」と「謙虚」の違い
「謙虚」とは「控え目でつつましいこと。へりくだって素直に相手の意見を受け入れること」という意味です。
「謙虚」は、素直な気持ちで相手の意見を聞き入れたり、行動したりするときに使用する言葉ですが、「真摯」は真面目な態度や考えを表すときに使う言葉です。
例えば、「謙虚な気持ち」という言葉は周囲の意見や批判を素直に受け止めるときに使いますが、「真摯な気持ち」はまっすぐな気持ちを表すときに使用します。
「真摯」の使い方・ビジネスで使える表現
「真摯」を使った表現としてよく挙げられる「真摯に受け止める」「真摯な対応」「真摯な姿勢」について意味や使い方、例文を紹介します。
「真摯に受け止める」の意味・使い方
「真摯」のよく使われるフレーズに「真摯に受け止める」という言葉があります。
「真摯に受けとめる」には「真面目にひたむきに受け止める」という意味がありますが、逃げることなく覚悟を決めてそのことを受け止めるときに使う表現です。
テレビでの会社経営者による謝罪会見の場や、個人の釈明会見でよく耳にしますね。が、言葉としては謝罪などの意味合いを持ちません。
前述のとおり、「真摯」という言葉を使うことで、自身の真面目な姿勢を示すことができます。
【例文】
- お叱りの声を真摯に受け止め、以後改善してまいります。
- 今回の不祥事を真摯に受け止め、皆様の信頼を取り戻せるよう努力いたします。
- インターネット上の批判を真摯に受けとめる必要はない。
「真摯な対応」の意味・使い方
「真摯な対応」とは「人に対して心のこもった態度で接すること」という意味があり、真面目に誠意ある対応をするときに使います。
ビジネスでは、例えば、お客様からクレームが入ったときに、はぐらかしたり逃げたりせずに熱心に対応するときに使われる言葉です。
【例文】
- 従業員一人ひとりの真摯な対応が他社との差別化になる。
- 営業マンの真摯な対応にお客様は感心していた。
- 真摯な対応が顧客の信頼につながる。
「真摯な姿勢」の意味・使い方
「真摯な姿勢」とは「真剣に物事に向き合おうとする姿勢」のことです。
なお、この「姿勢」とは態度や心構えを表すときに使う言葉。一生懸命に取り組んでいるときに使用されます。
【例文】
- 彼の真摯な姿勢に心を動かされた。
- 真摯な姿勢で仕事と向き合い、顧客満足の最大化に努めます。
- 今後も真摯な姿勢で取り組んで参る所存でございます。
「真摯」の類義語・言い換え表現
「真摯」は、ビジネスの場においても自身の態度を示すことができる言葉のため、様々な場面で有効に使うことができます。しかし、堅苦しい印象があるため、日常会話では使いにくい言葉でもあります。
似たような使い方ができる類義語としては下記のものがありますので、参考にしてください。
- 真面目
- 真剣
- ひたむき
- 懸命
- 一生懸命
- 誠心誠意
いずれも自主性をもって物事に取り組む姿勢を表すことができます。発言する場がかしこまった雰囲気でないときは「真摯」よりも「一生懸命」や「真面目」を使ったほうが自然でしょう。
【例文】
- お客様の意見をクレームに対して誠心誠意対応することを心がける。
- 何事にも真剣に取り組む姿勢は彼の長所だ。
- インターネット上の批判を真面目に受けとめる必要はない。
「真面目」には「生真面目」という派生語があるように、「融通がきかない」というニュアンスを持たせる場合がありますので注意が必要ですが、場面によって臨機応変に言葉を言い換えることも大切です。
「真摯」を使ったビジネスメールの例文集
「真摯な姿勢」のメール例文
件名:受賞のお祝い 〇〇課長 お疲れ様です。営業部の△△です。 この度は、年に一度の社内表彰式にて お客様の悩みと誠実に向き合う、 今後とも、ご健康に留意され、 メールにて恐縮ですが、 ==================== |
「真摯に受け止める」のメール例文
件名:スタッフ対応についてのお詫び 株式会社〇〇〇〇 この度は弊社サービスをご利用頂き またお忙しい中、足をお運び頂きましたにも関わらず、 明日にでも店舗に向かい、状況確認と現場指導を行います。 今後二度とこのような事が無いよう〇〇様のご指摘を真摯に受け止め、 またご迷惑でなければ、ご自宅にお伺いし、 つきましてはご連絡先を頂戴できましたら幸甚でございます。 取り急ぎお詫び申し上げます。 ==================== |
なお、謝罪の言葉をもっと理解したい方は「謝罪の気持ちを伝えるお詫びメールの文例集」をご覧ください。
まとめ
今回解説した「真摯」のように、聞き慣れた言葉であっても、本来の意味を調べてみるとビジネスの場においても使える機会があることがわかりました。
日常で使われる頻度が低く、堅い印象を持たれるような言葉を多用することはおすすめしませんが、ここぞという時に自身の姿勢を表すのには有効的です。
他にも、聞き覚えはあるけど意味を知らない言葉があれば、ぜひ調べてみてください。日常会話で使える柔らかい言葉から、かしこまった場で使う堅い言葉まで、語彙の幅を広げるとビジネスでも大いに役立ちますよ。