依頼や要望を受け入れるときの表現に「了解・了承・承知・承諾」があります。
上司から「明日までに資料を準備しておいてくれ」と指示を受けたとき、「わかりました」というとき、あなたは「了解・了承・承知・承諾」のどの言葉を使って返事をしますか?
実は返事の仕方によっては、目上の人に対して失礼にあたる表現もあるのです。
ビジネスシーンではどれも馴染み深い言葉なので、意味や使い方を正しく理解することが大切です。
ここでは「了解」「了承」「承知」「承諾」の違いについてご説明します。意味や使い方はもちろん、目上の人に失礼な表現がどれかについてもお伝えするので参考にしてくださいね。
目次
「了解」「了承」「承知」「承諾」の違い
ここでは「了解」「了承」「承知」「承諾」の違いをお伝えします。それぞれの意味や使い方についても解説するのでご覧ください。
「了解」の意味・使い方
「了解」の読み方は「りょうかい」です。
「了解」とは「物事の内容や事情を理解して承認すること」という意味があります。
「了解」の「了」の漢字には「はっきりと悟る」という意味、「解」には「物事の筋道・意味がはっきりとらえられる。わかる」という意味があります。
簡単に言えば、「相手の考えや事情をわかった上で、それを認める意がある」ことを指します。
なお、「了解」には「理解したこと」と「認めること」のふたつの意味合いが含まれますが、特に「理解」に重点が置かれた表現です。
「理解」との違いは、「理解」が「正しくわかる」ことであるのに対し、「了解」は「意味がわかり、承認する」意味を含んでいる点にあります。
また、「了解」は「分かる」の漢語表現であり、「了解しました」の言い方では敬意が表れないため、上司や目上の人に使うのは失礼にあたります。
では「了解いたしました」の敬語表現はどうでしょうか。
「了解」に謙譲語の「いたしました」をつけて、へりくだった気持ちを表す丁寧な言い方ですが、「了解」という言葉だけで失礼と感じる上司もいるため、避けたほうが無難です。
【例文】
- 会議はまず全体の了解事項の確認から始まった。
- 当社ではお互いに役職名ではなく、名前で呼び合う暗黙の了解がある。
- 社長のご了解をいただき、出席いたしました。
- 会議日程の件、了解いたしました。
「了承」の意味・使い方
「了承」の読み方は「りょうしょう」です。
「了承」とは「事情をくんで納得すること。聞き入れること」という意味があります。
「了承」の「了」の漢字には「はっきりと悟る」という意味、「承」には「承る(うけたまわる)」「相手の意向を受け入れる」という意味があり、「了解」よりも「認める」「受け入れる」「許可する」という意味を強めた表現です。
そのため、目上の人に予め何らかの許可や許しを得たいときに「ご了承くださいますようお願い申し上げます」「何卒ご了承ください」といった使い方をするのが基本です。
自分が主語となって「了承する」場合は、目下か同等の人に対して使うときになります。
【例文】
- ご了承いただければ幸いです。
- 企画書の内容について、上司の了承を得る。
- 双方とも大筋で了承した。
- 販売を停止いたしますことをご了承ください。
- 契約内容は予告なく変更する場合がございます。あらかじめご了承下さいませ。
「承知」の意味・使い方
「承知」の読み方は「しょうち」です。
「承知」を辞書で調べると下記の3つの意味が出てきます。
- 1:事情などを知ること。また、知っていること。わかっていること。
- 2:依頼・要求などを聞き入れること。承諾。
- 3:相手の事情などを理解して許すこと。
1の意味での使い方は「すでにご承知のように」「無理を承知で」などと、「理解したこと」を伝えるときです。
2の意味で使うときは、相手の事情や状況を理解し、依頼や要求を聞き入れるときに「お申し出の件、承知いたしました」「承知しました」などの表現で使われます。
なお、「承知する」という語は「聞く」の謙譲語にあたるため、「承知いたしました」は上司や目上の人に使える、へりくだった丁寧な敬語表現です。
相手を主語において、目上や取引先に「了解」をお願いする場合は「ご承知ください」とは言いません。「ご理解ください」「ご了承ください」が正しい伝え方です。
【例文】
- ご指示いただきました件、承知いたしました。
- 上手くいかないことは百も承知だが、最後までやり切ろう。
- その点に関しましては承知しておりますので、ご安心ください。
- 皆様ご承知のとおり、この場所は平和サミットが開催された場所です。
「承諾」の意味・使い方
「承諾」の読み方は「しょうだく」です。
「承諾」とは「相手の意見・希望・要求などを聞いて、受け入れること」という意味があります。
「承諾」の「承」には「相手の意向を受け入れる」という意味、「諾」には「承知すること。引き受けること」という意味があります。「諾」の意味に「承知すること」とあるように、「承諾」は「承知」と同じ意味で使うこともあります。
両者の違いは「承知」は「聞き入れる」ことを指す語であるのに対して、「承諾」は「引き受ける」ことを表した言葉である点です。
ちなみに「聞き入れる」は「人の要求や願いなどを聞いてそのようにする」という意、「引き受ける」には「自分が責任をもってその物事を受け持つ」という意味があります。
つまり「承諾」は、認めるだけでなく、責任を持ってあとを受け継いだり、保証したりすることを表した語なのです。
「承知」よりも重みをもたせるときによく使われ、ビジネスに関する取引や、社外の人との契約のやりとりで使われます。契約の覚書などで「承諾書」といったり、「承諾を得る」とも使われますね。
「承諾いたします・いたしました」は目上の人に使うと、横柄な言い方に受け取られる場合があるので、目下か同等の人に対して使うようにしましょう。
この場合は同様の意味を持つ「承知いたしました」、「承諾する」の謙譲語である「承りました」「かしこまりました」を使います。
【例文】
- 後輩からの頼みを承諾した。
- この点に関しましては、先方の承諾を得ております。
- 製品に関する値下げの件、承諾いたします。
- その節は快くご承諾くださいまして、誠にありがとうございました。
「了解を得る」「了承を得る」「承諾を得る」の違い
「了解を得る」「了承を得る」「承諾を得る」という表現があります。
それぞれの使い分け方は、「了解」「了承」「承諾」の意味や使い方と同じです。
「了解を得る」は「理解を得た」という意味合いが強く、相手が目下や同等の人を指して使うことが多いです。
「上司の了解を得る」でも間違いではありませんが、「了解」は「分かる」の漢語表現であり、敬意は含まれないので別の表現を使ったほうがよいでしょう。
上司に許可をもらったときは「了承を得る」の表現を使います。「了承」は目上の人から目下の人に使う言葉なので、「了承を得る」が適切です。
なお、「承諾を得る」は社外の人に意向を受け入れてもらったときに使うとよいでしょう。契約や取引に関する内容の承認を受けたときと覚えておきましょう。
「了解」「了承」「承知」のビジネスメールの例文集
つづいては「了解」「了承」「承知」を使ったビジネスメールの文例集をご紹介します。
「了解」のビジネスメールの例文
部下から懇親会の最初の挨拶をお願いされ、快諾するときの返信メールに「了解しました」を使ったときの文例です。
件名:Re:懇親会での挨拶のご依頼 〇〇君 お疲れ様です。 懇親会での挨拶の件、了解しました。 忙しい中、飲み会の幹事を 何か手伝えることがあれば ==================== |
「了承」のビジネスメール例文
件名:Re:値引きのご相談 株式会社〇〇〇〇 平素より大変お世話になっております。 〇月〇日付けのメールにてご要望いただきました、 日頃より貴社には多大なご支援をいただいておりますので 弊社も昨年以来の円高の影響を被り、 上記事情をご賢察のうえ、 取り急ぎ、ご返事申し上げます。 ==================== |
「承知」のビジネスメールの例文
件名:Re: Re:最終面接日程のご確認 株式会社〇〇〇〇 お世話になっております。 この度は、急な問い合わせにもかかわらず 最終面接の日時が〇月〇日〇時との件、 お忙しいなか、ご丁寧に対応いただき、 当日はよろしくお願い申し上げます。 ==================== |
さいごに
ここでは「了解」「了承」「承知」「承諾」の違い、それぞれの意味や使い方についてお伝えしましたが、いかがでしょうか。
ビジネスシーンでは「わかりました」や「了解しました」は使わないほうが無難です。上司や取引先の人に、理解したことを伝えるときは「承知しました」を使いましょう。
また、お願いするときは「ご了承ください」「ご承諾ください」を用いましょう。
敬語や言葉の使い方を間違えると、「マナーがなっていない」「生意気な新人だな」と思われるかもしれません。
この機会にそれぞれの使い方を覚えておいてくださいね。