ビジネスシーンにおいて、敬語を正しく使いこなすことは礼儀でありマナーです。
当然、上司や目上の方といった敬うべき相手には敬称をつけるのが基本ですが、メールの宛名や電話の呼び出しでおかしい敬称の使い方をしてしまうと、ビジネスマンとして未熟なことが相手に伝わるため気をつけなくてはなりません。
敬称の使い分け方のなかでも、特に間違いやすいのが「社長様」「会長様」といった目上の方の呼び方です。
「社長」「会長」などの役職名に「様」をつけた表現を見聞きすることがあります。「社長様」「会長様」の呼び方は、一見すると相手に敬意を示したような丁寧な印象を受けますが、実はこの呼び方は間違いなのです。
ここでは「社長様」「会長様」の正しい呼び方についてお伝えします。メールや電話での呼び方についてもご説明しますので参考にしてくださいね。
目次
社長様・会長様はおかしい!二重敬語になっている!
結論からお伝えすると、「社長様」「会長様」は間違った呼び方です。
では、「社長様」「会長様」と呼んだり、メールの宛名に「田中社長様」と書いたりすることのどこがおかしいのでしょうか。
「社長様」「会長様」は、「社長」「会長」という役職名のあとに「様」をつけていますよね。これが間違いなのです。
「社長」や「会長」という役職名はそれ自体が敬称であり、その後に敬称の「様」を付けることにより、敬称が重なって二重敬語になってしまうのです。
二重敬語とは同じ種類の敬語を重複して使用することを言い、過剰な敬語表現になってしまうため、現代日本語では一般的にふさわしくないとされています。
「社長様」「会長様」は慇懃無礼な言葉遣いとなる場合があるので、避ける配慮が必要です。
もちろん、「会長」「社長」に限らず、専務や常務、部長、課長といったほかの役職であっても、役職名の後に敬称をつけるのは間違いです。
そうはいっても、取引先の相手に対して、そのうえ経営層の方に「社長」「会長」と呼ぶのは、呼び捨てをしているようで違和感を覚えたり、なんだか落ち着かなかったりする方もいるかもしれません。
その場合は、「社長の〇〇様」「会長の〇〇様」と、役職名に続けて名前に敬称を付けましょう。この形だと二重敬語にはなりません。
「社長様」「会長様」の電話や会話での正しい呼び方
では、直接会って話をしているときや電話ではどのように呼べばいいのでしょうか。
上で述べた通り、「社長」「会長」で構いません。また、こちらから電話をかけて、取引先の社長を呼び出してもらう場合は
- 〇〇社長はいらっしゃいますか。
- 会長の〇〇様はいらっしゃいますか。
と伝えるのが正解です。
一方で、外部の人との電話で、自社の社長について説明するときは敬称をつける必要はありません。
- 田中はただいま席を外しております。
- 田中は現在出張に出ております。
といったように呼び捨てにしましょう。
【電話での取引先の社長・会長の呼び方】
- 〇〇会長はいらっしゃいますか。
- 会長の〇〇様はいらっしゃいますか。
- △△社長とのご面談日時のご確認でご連絡を差し上げました。
- 社長の△△様とのご面談日時のご確認でご連絡を差し上げました。
【自社の社長の呼び方】
- 〇〇はただいま席を外しております。※〇〇は名字
- わたくしと弊社代表の〇〇の2人で伺います。
電話応対は会話の内容に合わせた判断をし、適切な返答をしなくてはなりません。おかしい呼び方にならないよう、敬称を正しく使うことを心がけましょう。
相手の会社を指すときに「御社」や「貴社」といった敬称を使います。「社長」「会長」と同様に、これらも正しく使い分けができないとマナー違反になってしまうので要注意です。詳しい使い分け方は「御社・貴社の違い・使い分け方」をご覧ください。
「社長様」「会長様」のメールの宛名や本文での正しい書き方
つづいては、ビジネスメールを送るときの社長や会長の書き方についてお伝えします。
こちらも「社長様」「会長様」のように、役職名に敬称をつけると二重敬語となり間違いなので注意しなくてはなりません。ビジネスメールでの宛名の書き方は、メールをやり取りする回数によって使い分けることが重要です。
- 取引先の社長にメールを初めて送るとき
- 取引先の社長から送られてきたメールに返信するとき
- 自社の社長にメールを送るとき
では具体的に書き方を例文で見ていきましょう。
社長にメールを初めて送るとき
初めてメールを送るときは、会社名を正式名称で書いたあとに、役職名・氏名・敬称(様)の順に丁寧に書くことが基本です。名刺を受け取っている場合はそれを見て書きましょう。
件名:ご面談のお礼 株式会社〇〇〇〇 お世話になっております。 本日はお忙しいなか、貴重なお時間をいただき、 〇〇様のお役に立てるよう メールにて恐れ入りますが、 ==================== |
宛名に「〇〇社長」だけ書いたメールを送るのは雑な印象を与えます。
本文の中で相手のことを指して伝えるときは「〇〇様」か「〇〇社長」と書きます。「〇〇社長様」と書かないように注意しましょう。
※就職活動における面接のお礼状やお礼メールでも「社長様」と書く人は少なくありません。「社長殿」も間違いです。感謝の気持ちを伝える機会を生かすためにも本文では「〇〇社長」と書きましょう。
社長から送られてきたメールに返信するとき
2回目以降のメールでは、宛名は「名字+役職名」で構いません。「山田社長」「田中会長」などと簡潔に書き記しましょう。
件名:Re:打ち合わせのお礼 〇〇社長 お世話になっております。 この度はお忙しい中、ご丁寧にお返事をいただき 次回の打ち合わせについて、 よろしくお願い申し上げます。 ==================== |
こちらも本文中では「〇〇様」か「〇〇社長」と書きます。
自社の社長にメールを送るとき
件名:プロジェクトに関するご相談 〇〇社長 お疲れ様です。△△です。 株式会社〇〇〇〇様とのプロジェクトに関して、 先日の会議にて、〇〇社長より B案を支持する理由につきましては よろしくお願い申し上げます。 ==================== |
社内の人に宛てるときは「名字+役職名」で書くのが基本です。〇〇会長、〇〇部長、〇〇課長などと書き、社内の相手によって使い分ける必要はありません。
メール本文の中で社長のことを指すときは「〇〇社長」と書きます。
さいごに
ここでは「社長様」「会長様」の正しい呼び方、メールでの宛名の書き方についてお伝えしました。
「社長様」「会長様」は二重敬語のため、おかしい呼び方です。
礼儀正しい呼び方をしたつもりでも、かえって嫌味で誠意が感じられない印象を与えたりすることがあります。
社会人のマナーとして、「社長」「会長」といった役職名がそれ自体で敬称になることを理解し、正しく使いこなせるようになりましょう。