「勘案」という言葉を見聞きしたことはありますか?
ビジネスシーンでは「諸事情を勘案した上で、議論を進める必要がある」「様々な意見を勘案し、方向性を決める」といった使い方をします。ニュースで政府などの公的機関の発表にも用いられますね。
ビジネスではしばしば登場する言葉なので、取引先の担当者から「ご勘案ください」と言われた時に、どう対応すればよいのか困らないようにするためにも、しっかり覚えておく必要がありますね。
ここでは「勘案」の意味や使い方について詳しく解説します。ビジネスシーンで使用頻度の高い「検討」の言葉との意味の違いや、類義語についてもお伝えするので参考にしてくださいね。
目次
「勘案」の意味・使い方
「勘案」の読み方は「かんあん」であり、「あれこれと考え合わせること」という意味です。
「勘」という漢字には「よく調べたりして考える」という意味があり、「案」は「内容」や「計画・意見」を表す語です。
つまり、「勘案」は「内容や計画について、様々な要素や条件・事柄を考え合わせた上で判断する」といった意味になります。
ビジネス言葉のため、日常会話の中では馴染みのない言葉ですが、企業が発表するビジネス文書や取引先とのメール、ニュースなど、堅い言い回しが好まれる場面で使われます。
「勘案」は名詞なので、「する」をつけた形で使われることが多く、「勘案する」「ご勘案」「勘案した上で」などの形が基本となります。例文を見てみましょう。
【例文】
- 様々な事情を勘案した上で、最終案を決定します。
- 諸々の情勢を勘案し、今後の体制を整備していく。
- 結論を出すには、総合的に勘案する必要がある。
- 何卒、諸事情ご勘案の上、ご配慮いただきますようお願い申し上げます。
- 政治・経済・外交など総合的に勘案した上で、決定します。
「考える」の変わりに「勘案」を使うことで、かしこまった印象になりますね。
「勘案」と「検討」の違い
ビジネスで「考える」という言葉に代わって使うことが多いのが「検討(けんとう)」ではないでしょうか?「検討」の意味は「よく考えて調べること」です。
「考えて判断します、考えて判断してください」と伝えるときに、「前向きに検討します」「ご検討ください」「ご検討の程、よろしくお願い申し上げます」などと使用する、日常会話でも馴染み深い便利な言葉ですね。
では「勘案」と「検討」はどう違うのでしょうか。
まず「勘案」は、「色々な条件や要素など、いくつものことを調べて考え、そのうえで判断する」という意味があります。
一方で「検討」は「一つのことを、色々な面から調べて、良いか悪いかを考える」という意味で使う言葉です。
つまり、「勘案」は「いくつもの要素を考えて」というニュアンスが強い言葉であり、「検討」は「ひとつの事柄についてじっくりと考える」ときに使う言葉なのです。
【例文】
- 社員それぞれの意見を勘案した上で、最終的な方向性を決定する。
- 彼の意見を検討して、最終的な方向性を決定する。
「勘案」が「色々な社員の意見をよく考えて判断する」のに対し、「検討」は「一つの意見を色々な方向から考えて判断する」ことを表しています。
「勘案」と「考慮」の違い
「勘案」と同じく「考える」という意味を持つ言葉に「考慮」があります。
「勘案」と「考慮」はいずれも深く考えることを表しますが、「検討」と同じく細かな違いがあります。
これまで述べたとおり、「勘案」には「色々な条件や要素など、いくつものことを調べて考え、そのうえで判断する」という意味があります。一方、「考慮」は、考えることがひとつでも複数でも使うことができる言葉なのです。
【例文】
- メンバーそれぞれの意見を考慮に入れたうえで、最終的に決定を下す。
- 彼の意見を考慮して、最終的に決定を下す。
また、「考慮」は「考慮に入れる」「考慮の余地がない」といった表現がありますが、「勘案」はそのような使い方はしません。「考慮」はどちらの使い方もできる便利な言葉です。
※「考慮する」と似た言葉に「鑑みる」があります。その意味や違いについて理解したい方は『「鑑みる」の意味・違い|「考慮する」との違い』をご覧ください。
「勘案」と「斟酌(参酌)」の違い
「斟酌(しんしゃく)」は「条件を考え合わせて適切に処置すること。事情や相手の心情を配慮して取り計らうこと」という意味です。ちなみに「参酌(さんしゃく)」は「斟酌」と同じ意味です。
では、「勘案」と「斟酌」にはどのような違いがあるのでしょうか。
「斟酌」の意味からもわかるとおり、「斟酌」は、相手の事情や心情を推し量ったうえで考え、決断することをいいます。「控えめにする」「遠慮する」「ためらい」といった意味も持つ語です。一方で「勘案」にはこれらは含まれません。そのため、「斟酌」のほうが相手の事情を思いやる気持ちが表れます。
【例文】
- 社員の給与査定にやや斟酌を加える。
- 事件が起きたときの加害者の事情を斟酌して、裁判官は判決を下した。
「勘案」の類義語
前章でも一部お伝えしましたが、「勘案」の類義語を下記に紹介します。
- 検討:よく考えて調べること。
- 熟考:よく考えること・十分に思いをめぐらすこと。
- 考慮:その事をよく考えること。
- 顧慮:ある事を考慮に入れて心遣いをすること・気遣うこと。
- 斟酌:条件を考え合わせて適切に処置すること。事情や相手の心情を配慮して取り計らうこと。
- 忖度:他人の気持ちを推し量ること。
- 配慮:良い結果になるようにあれこれ心を配ること。
- 考察:物事を明らかにするために考えること。
いずれも「考える」という意味を含んだ言葉ですが、細かい違いはあるので状況に応じて使い分けるとよいでしょう。このなかで「考慮」や「塾考」は、日常でも馴染みがあり、どのような状況でも比較的使いやすい言葉ですね。
「顧慮(こりょ)」は、あれこれ考えるだけではなく、相手に気遣う意味も含まれた言葉です。「斟酌」「忖度」「配慮」も同じように、自分の都合だけではなく、色々な条件や相手の立場や心情を判断材料に含んだうえで考えることを意味した言葉です。
「勘案」を使ったビジネスメールの文例集
「勘案」を使ったメールの文例(上司に宛てる場合)
件名:営業計画に関するご相談 〇〇部長 お疲れ様です。△△です。 昨日の営業会議の件につきまして部長のご指摘はごもっともですが、 営業メンバーのこれまでの仕事ぶりを見ても、 チーム全体の士気にもかかわることのため、 ==================== |
「勘案」を使ったメールの文例(目上の人に宛てる場合)
件名:値引き依頼の件 株式会社〇〇〇〇 お世話になっております。 さて、先日申し出のありました、 この度、社内で慎重に検討した結果、 ただし、今回の値下げの件につきまして、 まずはご回答まで申し上げます。 ==================== |
さいごに
ここでは「勘案」という言葉について解説しましたが、いかがでしょうか。
「勘案」は、ビジネスシーンでしばしば使われるため、社会人なら知っておきたい言葉です。意味や使い方について例文をあげてお伝えしましたが、イメージできたでしょうか?
似た意味をもつ「検討」や「考慮」といった類語との細かな違いも頭に入れておくといいでしょう。
ビジネスの場では「色々考えてから決めます」よりも「勘案してから決定します」というかしこまった表現の方がふさわしいときもあるので、ぜひ使ってみてくださいね。