突然ですが、「絶対」と「絶体」の違いはご存知ですか?
読み方はどちらも「ぜったい」であり、馴染みのある漢字ですが、使い分けが曖昧になっている方も少なくありません。
「絶対」と「絶体」は、書き間違えしやすい漢字としてもよく挙げられます。
ここでは「絶対」と「絶体」の違いについてご説明します。意味や使い方、類語もお伝えするので参考にしてくださいね。
「絶対」と「絶体」の違い
結論からお伝えすると、「絶体」は「絶体絶命」という四字熟語でしか使いません。それ以外の「ぜったい」は全て「絶対」を使います。
それを踏まえた上で、「絶対」と「絶体」のそれぞれの意味や使い方をご覧ください。
「絶対」の意味・使い方
「絶対」を辞書で調べると下記の4つの意味があることがわかります。
- 1:他に比較するものや対立するものがないこと。また、そのさま。
- 2:他の何ものにも制約・制限されないこと。また、そのさま。
- 3:どうしても。何がどうあっても。
- 4:(あとに打消しの語を伴って)決して。
1の意味では「絶対の真理」「絶対君主」などと使い、「時代や場所に左右されない、唯一無二の真理」「他に比較するもののない君主」という意味となります。
2の意味では「絶対の権力」と使います。
なお、3と4は副詞的に用いるときの意味です。こちらの意味合いで使うほうが馴染み深いのではないでしょうか。
3の意味で使うときは「絶対に行く」「絶対合格する」ですね。それぞれ「何があっても行く」「何としても合格する」という意味になります。
また、4の意味で使うときは「絶対に笑ってはいけない」「絶対に許さない」などの表現です。どちらも打ち消しの語を伴っているので、意味は「決して」ですね。
ちなみに「絶対」の対義語は「相対」です。
【例文】
- 個人の絶対的自由を認める。
- 彼は絶対音感の持ち主だ。
- イギリスで絶対王政が成立したのは中世期末のことである。
- 絶対に勝つ戦しか興味はない。
- これまで学んだことを生かして絶対合格する。
- どれだけ頼まれても、絶対にそんなことはしない。
ちなみに、「絶対者」という言葉は、哲学で「他の何ものにも依存せず、無制約的にそれ自身において存在する最高の超越的実在。絶対的なもの」という意味があります。1と2の意味で使われる言葉ですね。
「絶対」の由来・語源
「絶対」は、仏教用語の「絶待」(ぜつだい)に由来しており、この言葉は善悪・高低・美醜など、あらゆる対比を超えた立場・状態のことを指すものでした。
明治時代に入って西洋哲学やキリスト教が入って来た際に「absolute」の訳語として、哲学者の井上哲次郎が、この語を一部変えて「絶対」という言葉を作り出したことから使われるようになった経緯があります。
豆知識として覚えておきましょう。
「絶体」の意味・使い方
さまざまな用例のある「絶対」とは違い、「絶体」はそれ単体で使われることはなく、意味を成しません。
なお「絶体」は、四字熟語の「絶体絶命」でしか使われることのない言葉です。
ちなみに「絶体絶命」の意味は「どうにも逃れようのない、差し迫った状態や立場にあること」です。簡単に言えば「非常に危ない状態のこと」ですね。
「絶対絶命」の四字熟語の漢字は間違いです。正しくは「絶体」です。
【例文】
- 絶体絶命の苦境に追い込まれた。
- 絶体絶命の状態から、逆転を果たした。
- 9回裏、無死満塁で絶体絶命の大ピンチの場面をなんとか乗り切った。
「絶体」の由来・語源
「絶体」は、もともと九星術で運勢を判断するときに、「凶星」の名前から来た語です。
「絶」には「途中でたち切る。連続しているものや関係が切れる」という意味があり、「絶体」は体が尽きるような状態を表す言葉です。
そのため、この場合の「絶体」は「どうにも逃れられない窮地・立場に追い込まれること」を意味します。
「絶対」と「必ず」の違い
「絶対」と「必ず」にはどのような違いがあるのでしょうか。
まず「必ず」は副詞であり、意味は「例外のないさま。きまって。いつでも」となります。
一方で「絶対」には、名詞・形容動詞・副詞の3つの用法があり、副詞の場合は「絶対に」と書き、「どうしても。何がどうあっても」という意味です。そのため、副詞として使う「必ず」と「絶対に」は同義となります。
ちなみに「絶対」は肯定形で使うほか、「絶対に~ない」という打ち消しの語を伴って、否定形での使い方もできます。「必ず」の後に続くのは肯定形のみとなります。
例えば、否定形で「絶対に外に出ないでね」とは言いますが、「必ず外に出ないでね」とは言いません。
「絶対」と「決して」の違い
「絶対」と「決して」にはどのような違いがあるのでしょうか。
まず「決して」を辞書で調べると、下記の2つの意味が出てきます。
- 1:(あとに打消し・禁止の語を伴って)どんなことがあっても。絶対に。断じて。
- 2:必ず。きっと。
「絶対」と意味が似ていますが、使い方には違いがあります。
上記の意味にも書いてあるとおり、「決して」は副詞であり、「決して~ない」の否定形で使われます。一方で「絶対に」は、名詞・形容動詞・副詞の3つの用法があり、肯定形でも使えます。
また、「絶対」と「決して」は同じ意味で使われることも多いですが、「絶対」は客観的にみて普遍性がある場合、「決して」は個人の主観的な意志や信念があるときに用いられることが多いでしょう。
「絶対」の類語・言い換え表現
「絶対」の類語には下記の言葉があります。
- 至高
- 至上
- 唯一無二
- 比べるもののない
「絶対に」などと副詞的に使う場合は
- 何が何でも
- 是が非でも
- どうしても
- かならず
などですね。「絶対~しない」と打消しとともに使う場合は
- 決して~しない
- 断じて~しない
- 金輪際~しない
- ゆめゆめ~しない
などがあります。
さいごに
ここでは「絶対」と「絶体」の違いや、それぞれの意味・使い方、また「絶対」の類語や「絶体絶命」について詳しく解説しました。
「絶対」という言葉は「絶対~する」「絶対~しない」という形で、日常会話のなかでもよく使う言葉ですが、元を辿ると明治時代、仏教用語をもとに新しく作られた言葉なのですね。
一方、「絶体絶命」は陰陽道に端を発する九星術から来ていることがわかりました。日本語というのは、さまざまな言葉からきていることがわかりますね。
「絶体絶命」というのも、「絶対的なピンチ」という意味で、似た意味があるだけに、余計に間違いやすいのかもしれません。
この機会に「絶対」と「絶体」の違いを理解しておきましょう。