「全然大丈夫です」という言い回しを使ったことはありますか?
ビジネスシーンでも、上司との会話の中で若手社員の方が「全然大丈夫」を使うことがあります。
「全然大丈夫」は若い人の間では日常的に使われる俗語のひとつですが、実は間違った日本語と言われているのをご存知ですか?
また、「全然大丈夫」を言い換えるなら、なんと返事すればよいのでしょうか?
ここでは「全然大丈夫」は敬語として間違いなのか、それとも正しいのかをお伝えします。また「全然大丈夫」という表現を、敬語で伝える場面の適切な言い換え表現や例文をご紹介していきますので参考にしてくださいね。
最近の若い人が普段何気なく使っていることの多い乱れた表現を、正しい日本語を使った表現に直すとどうなるのかなど詳しくお伝えするので、しっかり頭に入れておいてくださいね。
「全然」の意味
「全然大丈夫」という言い回しは正しいのか、それとも間違っているのかを理解するためにも、まずは「全然」の部分を考えてみましょう。
「全然」には下記の2つの意味があります。
- (1)(あとに打消しの語や否定的な表現を伴って)全く。まるっきり。
- (2)残りなく全面的に。すっかり。
「全然〇〇でない」という否定語を伴った使い方をすると「まるで(全く)〇〇でない」という意味になり、「全然〇〇である」という使い方をすると「残りなく(全面的に)〇〇である」という意味になります。
後に続く言葉によって、意味が変化するんですね。
「~でない」という否定的な言葉を持ってくれば「少しもない、全くない」ということを意味し、「~である」という言葉を持ってくれば「残りなく、全部、すっかりそうである」という意味になります。
【例文】
- 資格試験の問題は、勉強不足で全然わからなかった。
- あがり症が災いして、スピーチが全然うまくいかなかった。
- 私も全然その通りだと思います。
「全然」のあとに続く言葉が「わからない」「知らない」などと、否定語の「~でない」で結ぶと、より強い否定の表現になります。また、肯定的な言葉で結ぶと、より強いニュアンスになるのです。
「全然大丈夫」は間違い?
では「全然大丈夫」は間違ったおかしい表現なのか、いよいよ本題に入ります。
結論からお伝えすると、「全然大丈夫」は間違い表現です。
「全然+肯定」の表現は辞書にも載っている用法なので、「全然」に肯定的な言葉を付けた「全然大丈夫」という言葉は間違いではないといえます。
しかし、明治時代頃には多く使われていた「全然+肯定」の表現も、今ではほとんど使われなくなり、「全然+否定」の表現が一般的になりました。
また、小学校の国語教育では「全然」には「ない」の打ち消しの言葉を伴うと教えており、入試や各種検定試験でも、「全然」の後に肯定表現をもってくることは不適切とされています。
今では「全然+肯定」は俗語として残っている表現のため、「全然大丈夫」は時代の流れによって間違いに限りなく近い表現になってしまった言葉なのです。
「全然大丈夫」の正しい言い換え方・別の言い方
前章で「全然大丈夫」という表現は不適切ということをお伝えしました。
では、ビジネスシーンで目上の人に「全然大丈夫」を伝えたいときは、どのような敬語表現に言い換えればよいのでしょうか?
例えば「大丈夫か?」と聞かれたときは下記の言葉に言い換えましょう。
- 全く問題ありません。
- 問題ございません。
- 何も問題ありません。
- 支障ございません。
- 差し支えございません。
何かに誘われたときや頼まれたときの言い換え表現は下記のとおりです。
- 承知しました。
- 承りました。
- かしこまりました。
※ビジネスメールでの返し方は「承知いたしました」「確かに承りました」などと丁寧な言い回しを心がけましょう。「了解しました」は丁寧語ですが尊敬語ではないため、目上の方やお客様に使うのは不適切です。
「全然のあとには打ち消す言葉を続ける」と覚えておいてください。それを踏まえたうえで、必要に応じて「ございません」などの敬語に言い換えましょう。
「全然いいです」や「全然美味しいです」などの表現も俗語にあたりますので、慣れているからといって多用せず、きちんと「大丈夫です」「問題ないです」「とても美味しいです」などの言葉に言い換えることが大切です。
相手に失礼にならないよう、正しい敬語表現の言葉遣いを心がけてくださいね。
さいごに
いかがでしたか?ここでは、ビジネスでは「全然大丈夫」という表現を使うのはふさわしくないこと、「全然大丈夫」に代わる言い換え表現をお伝えしました。
「全然大丈夫」は俗語のため、友人同士で使うのは問題ないですが、改まった場や目上の人に対して使うのは不適切ということがわかりましたね。
適切な言い換え表現を学んで相手に不快感を与えないよう、日本語の使い方には注意したいものです。普段使っている言葉は気を抜くとビジネスシーンでも出やすいので、日頃から正しい日本語を使うように心掛けてくださいね。