突然ですが、「有終の美」の意味や使い方をご存知ですか?
テレビのスポーツ番組を見ているときにナレーションの方が「初優勝を果たし、見事、有終の美を飾りました!」といったり、式典のスピーチで「有終の美」を使った言い回しを言ったりしますよね。
なんとなく意味は分かる気もしますが、どういう状況を指すのか、はっきりと説明できない方も多い言葉です。
ここでは「有終の美」の意味や使い方、語源をお伝えします。また、「有終の美を飾る」の使い方や類語についても紹介するので参考にしてくださいね。
「有終の美」の意味
「有終の美」の読み方は「ゆうしゅうのび」。
「有終の美」の意味は「物事をやり通し、最後を立派に仕上げること。結果が立派であること」です。
「有終」の意味は「物事の最後を全うすること」であり、「美」には「姿・形・色彩などの美しいこと」のほか、「非常に立派で人を感動させること」という意味があります。
つまり、物事の最後がとても立派な終わり方をした、ということを表す語ですね。
「ゆうしゅう」という読み方をすることから、間違って「優秀」の漢字を連想する方もいます。そのため「優秀の美」と書く人もいますが、正しくは「有終の美」なので注意しましょう。
「有終の美」の使い方
先述した通り、「有終の美」は「物事の最後がとても立派な終わり方をした」という意味です。そのため、最後によい結果を残したときに使う語です。
身近な例だと、偉業を成し遂げたスポーツ選手の引退試合などで「有終の美を飾りました」と言いますよね。
また、「物事を立派にやり遂げた」という意味もあるため、ビジネスシーンで大型プロジェクトの成功を収めたときや、優秀な成果を上げたビジネスマンが退職するときに労をねぎらう表現としても使える言葉です。
「有終の美」の使い方は「有終の美」を名詞として使うほか、「有終の美を飾る」という表現で使われます。
「有終の美を飾る」の使い方
「有終の美」は「有終の美を飾る」という使い方をするのが一般的です。
「有終の美を飾る」の意味は「最後までやり通し、立派な成果を上げる」ですが、慣用句として覚えておくとよいでしょう。
終わりをしっかりと締めくくった時に使われますが、引退する最後の瞬間に偉業を残して身を引くときにも使われます。
【例文】
- 引退試合でゴールを決め、有終の美を飾った。
- 彼は現役最後の打席でホームランを打ち、有終の美を飾った。
- 有終の美を飾った彼の姿に、観客から惜しみない拍手が送られた。
「有終の美」の語源
「有終の美」の語源についてお伝えします。
「有終の美」の語源は、中国の古い詩集である「詩経」に出てくる、下記の一節がその由来といわれています。
「初め有らざるなし、よく終わり有るはすくなし」の言葉の意味は「物事をはじめるのは簡単にできるけれど、最後までやり遂げるのはものすごく難しく、少ない」です。
何事も、最後までやり遂げることは大変ですよね。「有終の美」は、その大変さを説くとともに、立派に最後を飾ることに「美」を見出した言葉だといえそうです。
「有終の美」の類語
「有終の美」の類語には下記のような表現があります。例文も紹介するので、言い換え方を確認しておきましょう。
【類語】
- 掉尾を飾る(ちょうびをかざる)
- 栄冠に輝く
- 成し遂げる
- 最後を飾る
- 達成
- 大団円
この中で「有終の美を飾る」と同じ意味を指す言葉は「掉尾を飾る」です。そのほかの類語はニュアンスが違うため、時と場合に応じて使い分けるとよいですね。
【例文】
- 年の瀬が迫る中、今年の掉尾を飾ることができた。
- コツコツとした努力が実を結び、見事目標を達成できた。
- 努力の末、優勝という栄冠に輝く。
- 大団円を迎える。
- まわりの協力によって快挙を成し遂げた。
- 最後を飾る音楽として、その曲はふさわしかった。
「有終の美を飾る」と「終わり良ければすべてよし」の違い
「有終の美を飾る」と混同して使いがちな言葉に「終わりよければすべてよし」があります。
「終わりよければすべてよし」の意味は「物事は最後の結末が最も大事であり、途中の過程は問題にならない」です。
野球を例に挙げて違いをお伝えすると、「有終の美」は、名選手が引退試合でホームランを打つなど、最後までやり遂げて立派な成果を上げることを意味します。
一方で「終わりよければすべてよし」は、これまで成績の振るわなかった選手が、引退試合の最後の打席でホームランを打ちチームを勝利に導くなど、最後の最後に結果を残すことをいいます。
「有終の美」の対義語
「有終の美」の対義語を紹介します。「物事を最後までやり遂げることができず、立派な成果が出ないこと」という反対の意味にあたることわざや四文字熟語は下記のとおりです。
- 枡で量って箕でこぼす:長い間苦労して貯めたものを無駄に使ってしまうこと
- 仏作って魂入れず:物事をほぼ仕上げながらも、肝心な最後の仕上げが抜け落ちること
- 針で掘って鍬で埋める:苦労して作り上げたものをいっぺんに失くしてしまうこと
- 晩節を汚す:人生で高い評価を得てきたのに、評価を覆す振る舞いをして名誉を失うこと
- 名声が地に落ちる:それまでの地位名声を失うさま
- 竜頭蛇尾(りゅうとうだび):初めは勢いがよいが、終わりになると振るわなくなること
さいごに
ここでは「有終の美」の意味や「有終の美を飾る」の使い方についてお伝えしました。
この機会に語源や類語、対義語についても理解しておくと、いざという時に使えるので覚えておいてくださいね。