社会人になると、敬語を使うのは礼儀のひとつですよね。
でも、知らない間に身についている敬語を、正しい表現だと思い込んでしまって何気に使っている言葉ってありませんか?
たとえば「よろしかったでしょうか」や「よろしかったですか」という表現。ファミレスやコンビニで注文を確認するときに聞き馴染みにある言葉ですね。
「よろしかったでしょうか」は敬語として使われることの多い言葉ですが、この表現を正しい敬語だと主張する人もいれば、間違い敬語だという人もいます。
ここでは「よろしかったでしょうか」は正しい敬語なのか、間違いなのか、その使い方についてお伝えします。メールの文例や言い換え表現も紹介するので参考にしてくださいね。
目次
「よろしかったでしょうか」は間違いか、正しい敬語か
丁寧な敬語として使っている方もいますが、正しい敬語なのでしょうか。
結論からお伝えすると、「よろしかったでしょうか」は間違い敬語です。なお、正しい敬語表現は「よろしいですか」「よろしいでしょうか」です。
その理由は、「よろしかったでしょうか」は過去形を使って聞いているからです。いま目の前で起こっていることに対して確認や質問をする言葉なのに、過去形にするのはおかしいといえます。
ファミレスなどの店先で、店員の方に「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」と判断を確認されたとき、まるで「間違いないですよね?」と押し付けられた印象を受ける人もいるようなので、目上の人にうっかり使ってしまわないように注意しましょう。
もちろん、ビジネスシーンで電話対応するときも「~でよろしかったでしょうか」は使わないようにしましょう。相手に違和感を与えてしまう可能性があります。
【例文】
- お時間少々よろしかったでしょうか⇒お時間を少々よろしいでしょうか
- ご注文は以上でよろしかったでしょうか⇒ご注文は以上でよろしいでしょうか
- こちらの商品でよろしかったでしょうか⇒こちらの商品でよろしいでしょうか
過剰な敬語表現の落とし穴を知り、自然な言葉遣いを心がけましょう。
「よろしかったでしょうか」が正しい場合もある
前章では「よろしかったでしょうか」が誤用表現だとお伝えしました。
ところが、どのような場面でも必ずしも間違い敬語になるとは言い切れません。というのも、過去の行為を確認するときや、事前に聞いたことを再確認する場合は正しい敬語として使えるからです。
たとえば、お客さんがレストランに事前の予約を入れたあとで来店するシチュエーションがあったとします。前もって電話口で予約人数を聞いていたとしても、来店時に「ご予約の人数は2名様でよろしかったでしょうか?」と、念のためもう一度確認されることがあります。
この場合の「よろしかったでしょうか」は、以前聞いたことを確認する意味合いを含むため、 過去形でも正しい敬語といえます。
また、「よろしいでしょうか」が相手の判断を確認する表現であるのに対し、「よろしかったでしょうか」は「私の認識に間違いないか」という聞き手への敬意や配慮により生じた丁寧な表現、という意見もあります。
ただし、ビジネスシーンでは言葉の使い方ひとつで相手の印象が大きく変わることから、間違い敬語の誤解を与えかねない表現は避けたほうが無難といえます。
「よろしかったでしょうか」という言葉を聞くだけで不快な思いをする方もいるので、確認するときは「よろしいですか」や「よろしいでしょうか」を使うことをおすすめします。
「よろしかったでしょうか」を「お間違いないでしょうか」と言い換えるのは間違い
「よろしかったでしょうか」の言い換え表現として「お間違いないでしょうか」を使う方もいますが、間違い敬語のため注意しなくてはなりません。
たとえば、お客さんに注文内容を確認するとき、「ご注文は以上でお間違いないでしょうか」と聞くと、この表現の正しい意味では「(お客様自身が)注文を間違っているかもしれないので確認してください」となってしまいます。
そもそも、尊敬語である「お間違い」は、自分の行為や物に対して使う敬語ではありません。相手の持ち物かどうか迷ったときに「お客様のものでお間違いないでしょうか」と言うのが正しい使い方なのです。覚えておきましょう。
「よろしかったでしょうか」を言い換えたビジネスメール例文集
内容に間違いがないか確認するビジネスメール
件名:お見積もり金額のご確認 株式会社〇〇〇〇 お世話になっております。 見積書ご送付の件、迅速にご対応いただき、 さて、お見積書の内容につきまして 見積書に個数の記載がありませんでしたが、 お忙しいところ恐れ入りますが、 ==================== |
状況を報告するビジネスメール
件名:プロジェクトに関するスケジュールのご報告 〇〇課長 お疲れ様です。△△です。 さて、株式会社〇〇様とのプロジェクトの件につきまして、 6日(月):プロジェクトの目標すり合わせ 上記のスケジュールにて進めてもよろしいでしょうか。 お忙しいところ恐れ入りますが、 ==================== |
「よろしかったでしょうか」への返信メールの例文集
内容の確認メールに返信する場合
件名:Re:お見積もり金額のご確認 株式会社△△ お世話になっております。 さて、見積書に関するご質問の件、 不明瞭な記載となり申し訳ございません。 何卒よろしくお願い申し上げます。 ==================== |
「よろしかったでしょうか」への返信は、上記の「ご示唆いただいた通り」のほか、下記の言い換え方があります。
- はい、お間違いございません。
- はい、おっしゃる通りです。
- はい、おっしゃる通りでございます。
- はい、ご連絡いただいた通りでございます。
- はい、ご示唆いただいた通りでございます。
取引先などの社外の人には「おっしゃる通りでございます」「ご示唆いただいた通りでございます」といった、かしこまった表現を使いましょう。
報告メールに返信する場合
件名:Re:プロジェクトに関するスケジュールのご報告 〇〇部長 お疲れ様です。 プロジェクトのスケジュールの件、 また変更等がございましたら よろしくお願い申し上げます。 ==================== |
間違い敬語の代表格「バイト敬語」とは
敬語は相手に敬意を示す言葉ですが、間違って使うと相手に不快感を生じさせてしまいます。その間違い敬語の代表格が「バイト敬語」です。
コンビニやファーストフード店、ファミレスなど、敬語に慣れていないアルバイト店員のために、企業が接客用語をマニュアル化したことから「マニュアル敬語」や「ファミコン言葉」ともいわれています。
相手を気遣う表現として使われることも多いですが、正しい敬語ではないので、ビジネスの場面で間違って使うと相手に違和感を与えてしまいます。
【例文】
- 一万円からお預かりします⇒一万円お預かりいたします
- こちら、ご注文のお品物になります⇒こちら、ご注文のお品物でございます
- アイスコーヒーのほう、お持ちしました⇒アイスコーヒーをお持ちしました
聞き慣れたフレーズもあると思いますが、厳密にはどの表現も間違いです。右の表現に言い換えて使いましょう。
また、「させていただく」も使いすぎには要注意です。本来、「させていただく」は相手から許可を得た上でする行為に対して使う言葉です。
「資料をお送りさせていただきます」と言っている方もいらっしゃるかもしれませんが、この場合は「お送りします」「お送りいたします」でOKです。
さいごに
ここでは「よろしかったでしょうか」の使い方が正しい場合、間違いの場合についてお伝えしました。また、「よろしいでしょうか」の言い換え方についても説明しましたが、いかがでしょうか。
「よろしかったでしょうか」を使う多くの場合が間違い敬語だと知り、ショックを受けた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
バイト敬語や二重敬語など、敬語には実にたくさんの落とし穴があります。
より丁寧な表現を…と意識しすぎるあまり、おかしい敬語を使ってしまわないよう、正しい敬語の使い方を覚えてくださいね。