突然ですが、「手前味噌」の意味や使い方をご存知ですか?
「手前味噌ですが」「手前味噌ながら」などの言い回しで、ビジネスシーンの商談の場やスピーチで使われる表現ですね。
「手前味噌になりますが」と聞いて、何で味噌の話が出てくるんだろうと思った方もいるのではないでしょうか。
日常会話の中だと、現在ではほとんど耳にする機会のない言葉ですが、使い方を覚えておくと、ビジネスシーンで便利な言葉でもあります。
ここでは「手前味噌」の意味や使い方を例文つきで紹介します。類義語もお伝えするので参考にしてくださいね。
「手前味噌」の意味・語源
「手前味噌」の読み方は「てまえみそ」です。
「手前味噌」の意味は「自分で自分のことを褒めること。自慢」です。
なぜ「手前味噌」の意味が「自慢」になるのでしょうか。それを知るには言葉の成り立ちや語源をたどると答えが見つかります。
「手前味噌」の「手前」は「自分のすぐ前」という意味ではなく、「自分」や「自家製、自前」を表す言葉です。
また、「味噌」は食品の味噌という意味で使われることが一般的ですが、ここでは「工夫・趣向をこらした」という意味となります。「このタイミングで塩を入れるのがミソなんだよ」というように、「ポイント」という意味でも「味噌」が使われますよね。
昔は、各家庭で味噌を手作りするのが一般的でした。手作りとなれば調理法に違いが生まれ、それぞれに味も異なります。美味しい味噌を作ろうと工夫を凝らしたりするなかで「うちで作った味噌は美味しいよ」と自家製の味噌を自慢することから、「手前味噌」という言葉が生まれたと言われています。
「手前味噌」の使い方
「手前味噌」は「自分で自分のことを褒めること。自慢」という意味です。
自慢話は、ときに嫌味に聞こえてしまうため、あまり好まれることではありません。特に、ビジネスの場では誠実さや謙虚さが求められることから、相手に不快な印象を与えることもあるでしょう。
ですが、そんなときに「手前味噌」に否定形の「ながら」を使うことで、自慢が嫌味に聞こえるのを防ぎ、和らげることができるのです。
「手前味噌」は、「手前味噌ですが」「手前味噌ながら」「手前味噌ではありますが」といった形で、逆接の表現をつけて使うのが基本です。
【例文】
- 手前味噌ですが、当社の新商品は売上が過去最高を記録し、皆様にも好評をいただいております。
- 手前味噌ですが、時間をかけてレシピ通りにイチから丁寧に作ったので絶品でした。
- 手前味噌ながら、今回の講演はとても良い内容ですので、是非ともご参加ください。
- 手前味噌ではありますが、弊社開発チームは、これまでにも各賞を受賞してきた優秀なメンバーが集まっております。
- 手前味噌ながら、優秀な部下ばかりで恵まれていると思っています。
- わがチームがこのような結果を出せたのも、私の研究がいささかなりとも役に立ったのではないかと、手前味噌ながら考えております。
- 手前味噌で恐縮ですが、今回のプロジェクトは私がリーダーとしてマネジメントしたものです。
- 手前味噌を並べられても、こちらとしては何とも返事のしようがないよ。
- 弊社がこの製品の開発に至った経緯などは、手前味噌にもなり、長くもなりますので、ここでは割愛いたします。
- 手前味噌で申し訳ないのですが、こうした欠陥を解消できるのは、弊社の製品しかないと思っております。
「手前味噌」のビジネスメールの使い方(例文)
ここまで「手前味噌」の意味や使い方についてお伝えしました。では、ビジネスメールを送るときはどのような書き方をするのでしょうか。例文を紹介するので参考にしてくださいね。
営業マンが顧客に商品の良さを伝えるとき
件名:ご面談のお礼 株式会社〇〇〇〇 お世話になっております。 本日、弊社商品の〇〇をご提案させて頂きました、 ご多忙にもかかわらず、 また、御社の現状や今後の展望について 手前味噌ですが、弊社商品における なお、弊社の商品に関しまして、 〇〇様にお会いできましたご縁を大切に、 メールにて大変恐縮ですが、 ==================== |
講演会への参加を呼び掛けるとき
件名:講演会のご案内 お客様各位 平素より大変お世話になっております。 この度、〇〇に関する講演会を 今回の講演会は、ジャーナリストとして 手前味噌ながら、有意義な内容となっておりますので ■講演会の詳細 参加のお申込みは下記項目をご入力の上、 ■参加者入力フォーム 以上、よろしくお願い申し上げます。 ================== |
「手前味噌」の言い換え・類義語
「手前味噌」の類語には下記のような表現があります。
- 自慢
- 自画自賛
- 我褒め(われぼめ)
- うぬぼれ
- 慢心
- 自尊
- 自任
いずれも「自分で自分のことを偉いと思うこと」という意味です。
「手前味噌」の言い換えとして使うときは、手前味噌同様、逆接の表現をつけて伝えたり、謙遜や恐縮する意味でお詫びの言葉をつけて伝えたりするなど、使い方に注意が必要です。
【例文】
- 自慢しているように聞こえたら申し訳ありませんが、わが社の営業チームは日本一だと思っております。
- 自画自賛のそしりを受けるかもしれませんが、弊社ほど働きやすい職場はないと考えております。
- 皆さまご存じのように弊社商品Aは、3年連続シェアNo.1を達成しており、うぬぼれるつもりはございませんが、やはりそれは吟味された原材料を最高の技術で作り上げた結果であろうと考えております。
- わたしが言うのもおこがましいですが、うちの社員は皆素直で誠実です。
さいごに
ここでは「手前味噌」の意味や使い方を見ていきました。
ビジネスシーンでは、謙遜するばかりでなく、自社や自社製品、自社スタッフ、自分自身を褒める場面があります。
そんなとき、自慢や自画自賛の言葉の持つ、ある種の傲慢さや嫌味を中和してくれる「手前味噌」という言葉は、使い勝手が良い言葉として今も使われています。
ユーモラスな表現ですので、難しい顔で「手前味噌ですが」と重々しく言うのではなく、笑みを浮かべて、明るく言ってみてください。あなたが伝えたい「良さ」がきっと相手にも嫌味なく伝わるはずです。