突然ですが、「対象・対照・対称」の違いをご存知ですか?
これらは同音異義語なので、使い分け方に戸惑う人も少なくありません。
「故障」と「胡椒」のように、同じ読み方でも使う場面がまるで違う言葉だと間違える心配はありませんが、「対象・対照・対称」のように使用範囲の近い言葉だと、どの漢字が適切か悩むことも多いですよね。
ここでは「対象・対照・対称」の意味と違いを詳しくご説明します。例文も紹介するので参考にしてくださいね。
「対象」の意味・使い方
「対象」の意味は「行為が向けられる目標や目的となるもの。目当て」です。
たとえば、「10代の女性を対象としたファッション雑誌」といった使い方をします。この場合、ファッション雑誌が、雑誌を通して働きかけたい目標に「10代の女性」がいます。つまり「対象」ですね。
「対象」は英語だと「ターゲット(target)」と書くので、覚えておくと良いですね。
【例文】
- 大学生を対象にしたインターンシップを実施する。
- 結論を出す前に、もっと対象に接近して、詳しい情報を得る必要がある。
- 10代の少女たちのあこがれの対象であるファッションアイコン。
- 個人情報保護法案が対象とするのは、名前や住所・生年月日など、個人に関する全ての情報です。
- 教員免許状の更新講習の受講対象者には校長も含まれる。
「対照」の意味・使い方
「対照」の意味は下記の2つです。
- 二つの事物を照らし合わせて比べること
- 全く性質の違う物どうしを並べ比べたとき、その違いがきわだつこと。また、その取り合わせ
「対照」は英語だと「コントラスト(contrast)」と書き、2つのものを照らし合わせるときに「対照的」「比較対照する」といった使い方をする言葉ですね。
「AとBを比較対照する」という使い方だと、両者を照らし合わせながら比較し、それぞれ独自の特徴を浮かびあがらせる、という意味合いになります。
また、「兄と弟の性格は対照的」という使い方をすると、兄弟の性格の違いが非常に際立っていることを表します。
【例文】
- 勉強ができる長男とスポーツ万能の次男は対照的である。
- 明と暗の対照が際立っていて、印象に残る作品だ。
- 作風は対照的だが、ともに鋭い批評精神に貫かれている。
- 前期と今期の貸借対照表を比較する。
「対称」の意味・使い方
「対称」の意味は下記の2点です。
- 1:ものとものとが互いに対応しながらつりあいを保っていること
- 2:二つの図形が、点・線・面などについて互いに向き合う位置関係にあること
1の意味では「左右対称」と使うことが多く、2の意味だと「点対称・線対称・面対称」などといいます。小学生のとき、算数の授業で習いましたよね。
「対称」は英語だと「シンメトリー(symmetry)」と書きます。左右で異なる髪型のことを「アシンメトリー(asymmetry)」といいますが、アシンメトリーの意味は「非対称」です。
【例文】
- 規則正しく対称性をもって並んでいるものに、美しさを感じる。
- 椅子は、この机を中心として左右対称に配置してください。
- 長さが非対称になっていることで、動きを表現している。
「対象・対照・対称」の違い
「対象・対照・対称」のそれぞれの意味や使い方を上述しました。あらためて3つの言葉の違いについてお伝えします。
「対象」は目標や目的とするものを指すときに使う語です。英語だと「ターゲット」ですね。
「対照」は、2つのものを照らし合わせて、両者の性質や性格などの違いが際立つときに使う言葉です。
また「対称」は、点や線・面といった図形が互いに向き合ったり、つりあいを保ったりしているときに使います。
なお、「対照的」とは「二つの事物の違いが、非常にきわだって認められるさま」を意味し、「対称的」とは「物の配列や形状に対称が取れているさま」を表す言葉です。
パソコンで漢字変換するときは間違った使い方にならないよう必ず確認してくださいね。
ちなみに、「対象的」という言葉はありません。こちらにも注意してくださいね。
さいごに
ここでは「対象」「対照」「対称」の意味や使い方、違いについて例文つきで紹介しました。
現代の私たちにとって、同音異義語が問題になるのは、パソコンやスマホで誤変換をしてしまう、という場合がほとんどです。
「胡椒」と「故障」なら、読み直せば正しい語を選ぶことができますが、変換候補に「対象」「対照」「対称」と並んでいると「あれ、どれだっけ?」とわからなくなることもしばしば。
この機会に意味や使い方を理解し、頭の中で整理しておいてくださいね。