人になにかをすすめるとき、「推奨」という言葉を使います。
ビジネス文書で「推奨する」という書き方や、取扱説明書で「推奨環境」といった使われ方を見たことはありませんか?
意味があいまいなまま使用してしまうと、不適切な使い方をしてしまい、相手に違和感を与えることもあるので気をつけなくてはなりません。
ここでは「推奨」の意味や正しい使い方について詳しく解説します。よく似た言葉の「奨励」との違いや、類語についてもお伝えするので参考にしてくださいね。
「推奨」の意味・使い方
「推奨(すいしょう)」とは「ある品・人・事柄などがすぐれていることを述べて、人にすすめること。褒めて引き立てること」という意味があります。
漢字の「推」には「前に押し出す」「後押しする」という意味があり、「奨」には「励ます」「奨める(すすめる)」という意味があることから、漢字の成り立ちからも「推奨」は「後押ししてすすめる」という意味があることがわかります。
日常会話で頻繁に使用する言葉ではありませんが、パソコンソフトの説明書で「推奨環境」といった表現や、株の情報サイトで「推奨銘柄」といった使い方をしているのを目にしたことはありませんか?
つまり推奨は、「そのものの優れている点を挙げて、これはとてもいいものだからオススメします」と人にすすめるときに使います。相手への強制力はないため、便利な言葉です。
【例文】
- 私のパソコンはスペックが古すぎて、ほとんどのソフトの推奨動作環境に満たない。
- 私の高校では、早起きして登校前に朝学習をすることが推奨されている。
- 今月の推奨銘柄は「トヨタ自動車」です。
- 今年の読書感想文では文部科学省推奨の本を題材にするつもりだ。
- カラス対策のため、町内では蓋付きのごみバケツを使うように推奨していきたい。
「推奨」「奨励」の違い・使い分け方
「推奨」とよく似た言葉に「推奨(しょうれい)」があります。両者はどのように使い分けるのでしょうか。ここでは「推奨」と「奨励」の違いを見ていきましょう。
まず、奨励の意味は「ある事柄を高く評価して強く人にすすめること」です。そのため、「推奨」と「奨励」に共通するのは、どちらも「あることを良いこととして人にすすめる」という意味ですね。
では「推奨」と「奨励」の違いはどこにあるのでしょうか。両者の違いは大きく分けて2点あります。
まず一つ目は、すすめる度合いの強さです。「奨励」には上の立場(教え導く立場)から「良いことだからぜひやるべきだ」と相手を強く後押しするニュアンスが含まれる一方で、「推奨」には「良いものだから人にすすめる」という程度しかなく、強い意味合いはありません。
二つ目は、「推奨」は商品や行為、アイディアをすすめるときに使用するのに対して、「奨励」は事業や研究などの行為をすすめるときに使います。
上記を踏まえて例文を見ていきましょう。
- 当社のソフトをご使用の場合の推奨動作環境をご確認ください。
- 当店ではマイバック運動を推奨しています。
- 昨年の研究成果が認められ、国から奨励金を支給された。
- 彼の論文は若手奨励賞を受賞した。
- 明治政府は、西洋文化を取り入れるため肉食を奨励した。
例文を見比べてみていかがでしたでしょうか。「推奨」は普通にオススメするという意味で、「奨励」は「こうするべきだ!」「こうやって頑張るように!」という上の立場から、少し強めにすすめるという意味合いがあるのがおわかりいただけたでしょうか。
「推奨」の類語
つづいては「推奨」の類義語を紹介していきます。
- 勧奨(かんしょう):すすめ励ますこと
- 薦める(すすめる):相手にあることをするように働きかけること
- 推挙(すいきょ)・薦挙(せんきょ):ある官職・地位・仕事などにふさわしい立場として、上の人にすすめること
- 勧める・奨める(すすめる):相手にあることをするように働きかけること
- 推薦(すいせん):ある人や物を適当だとして、他人にすすめること。
- 選奨(せんしょう):優れたものを選んで人にすすめること。
まとめ
ここでは「推奨」の意味や使い方、「奨励」との違いについて例文つきで解説しましたが、いかがでしょうか。
「推奨」は人にすすめるときに広く使えますが、「奨励」は上の立場から相手に強くすすめるというニュアンスがありますので、取引先や目上の人への使用はくれぐれも避けましょう。また、社内の研修会などで何かをすすめるときも「推奨」を使った方が無難です。
社会人として言葉の使い方はその人となりを表します。「推奨」と「奨励」は似た意味の言葉ですが、しっかりと意味の違いを理解して区別して使いましょう。
今回の記事を通して「推奨」と「奨励」の意味の違いを理解していただければ幸いです。