「してください」の使い方・意味|「して下さい」との違い・言い換え表現つき

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「重々承知」の意味・使い方(例文つき)・敬語表現まとめ

何かを頼む時によく使うフレーズのひとつに「〇〇してください」があります。

日常生活でも、商品の注意書きや駅のアナウンスなどで頻繁に見聞きしているかと思います。しかしながら、「〇〇してください」はビジネスシーンでも使用できる敬語表現なのでしょうか。

ここでは「してください」の意味や正しい敬語の使い方についてご紹介します。

使い勝手の良いフレーズなので、自信を持って使えるようこのページを参考にしてくださいね。

「してください」の意味・使い方

「してください」の意味は、相手に「〇〇してほしい」です。

「してください」の成り立ちは、品詞に分解すると理解しやすくなります。

  • :動詞「する」の連用形
  • :接続助詞「て」
  • ください:補助動詞。本来は「与える」「くれる」の尊敬語「くださる」の命令形

補助動詞とは、本来の意味と独立性がなくなり、付属的な意味を添えるために用いられる動詞です。したがって、補助動詞「ください」には本来の「与える」の尊敬語という意味はありません。「してください」の「ください」は、「相手に何かを要望・懇願する意を表す」ために添えられています。

つまり、「してください」は相手に何らかの動作をお願いするための丁寧なフレーズとなります。

「してください」の使い方

「してください」は丁寧な言い回しですが、用件を言い切る形で相手に動作を促すことから命令文と捉える人もいます。敬意を含まない表現であることからも、威圧的な物言いと受け取られかねません。

「してください」というお願いのフレーズは、目上の人には使わないようにしましょう。

「してくださいね」の使い方

優しい言い回しをしようと語尾に「ね」を付ける方もいますが、「してくださいね」は親しみを感じさせる一方で、念を押す時にも使う語です。かしこまった場面や目上の人相手には使わないようにしましょう。

「してくださいます」「してくださいました」の使い方

「してくださいます」は、誰かが自分のためにしてくれたことを敬意を込めて表現したフレーズです。

「してくださいます」は「してくださる」に丁寧の助動詞「ます」を付けてできたものです。

「してくださる」の「くださる」は、補助動詞として「その動作の主が恩恵を与える意を、恩恵を受ける者の立場から敬意を込めて表す」ために添えられています。つまり、「してくださいます」は相手が自分のためにしてくれた行動を、ありがたいという感謝の気持ちを込めて表したフレーズなのです。

「くださる」には敬意が込められています。したがって、目上の人の行為に対して「してくださいます」「してくださいました」とするのが適切です。

注意すべき「してください」の誤用

「してください」のよくある誤用として、「ご(お)〇〇してください」「〇〇されてください」があります。

「ご◯◯してください」

「ご(お)〇〇してください」は、尊敬語として誤りです。

「ご(お)〇〇する」は謙譲語の一般形なので、自分の動作に対して使わなければいけません。尊敬語としては、「〇〇してください」もしくは「ご(お)〇〇ください」のどちらかを使いましょう。

「〜されてください」

「〇〇されてください」は誤りとまでは言えないまでも、日本語として不自然です。

「される」は「なさる」同様、動詞「する」の尊敬語です。したがって、「されてください」は尊敬語として厳密には間違いではありません。しかし、特定の地域で使われている特有の敬語(方言敬語)で、文化庁が行った「国語に関する世論調査(平成11年)」では「〇〇れてください」の形について7割以上の人が「気になる」と回答しています。ビジネスシーンでは、より一般的かつ日本語としてこなれた「なさってください」を使うのが良いでしょう。

「してください」と「して下さい」の違い

「してください」を「して下さい」と書くことがありますが、基本的に「してください」は全てひらがなで表記します。

内閣訓令「公用文における漢字使用等について(平成22年)」によると、補助動詞は原則としてひらがなで書くことになっています。ビジネス上作成する文章もこのルールに則り、本動詞は漢字で、補助動詞はひらがなで書きましょう。

物を「与える」「くれる」という意味での「ください」は、本動詞のため「下さい」と漢字で表記します。一方、「してください」の「ください」は補助動詞のため、ひらがなで表記するのが適切です。

代表的な補助動詞には、他にも「○○ていただく(頂く)」「〇〇ておく(置く)」などがあります。

「してください」の言い換え表現

相手に対してより丁寧に動作を促すためには、以下のような言い換え表現があります。

【言い換え】

  • してくださいませ
  • してくださいますか
  • なさってください
  • ご(お)〇〇ください

 「してくださいませ」

語尾を「してくださいませ」にすると、命令のような印象を和らげることができます。

「してくださいませ」の「ませ」は丁寧の助動詞「ます」の命令形です。「ませ」は命令形であるものの、「くださる」「いらっしゃる」「なさる」などの尊敬語に付くことで、丁寧な気持ちを込めて相手に何らかの動作を要求することができます。

「してくださいますか」

語尾を「してくださいますか」と疑問形にすると、「してくださいませ」よりさらに柔らかい印象になります。

疑問形にすることで、実際にその動作をするか否かの判断を相手にゆだねています。そうすることで、強制的なニュアンスが薄れ、より一層柔らかい印象となるのです。

「なさってください」

「なさってください」は、相手への敬意を表すことができる尊敬語の表現です。

「なさってください」の「なさる」は動詞「する」の尊敬語です。「-する」という動作を尊敬語にすることで、「してください」よりも敬意の度合いを強めています。

「ご◯◯ください」「お◯◯ください」

「ご(お)〇〇ください」も尊敬語の丁寧な表現です。

「ご(お)〇〇ください」の元となる「ご(お)〇〇くださる」は尊敬語の一般形です。〇〇には名詞もしくは動詞の連用形を当てはめます。

接頭辞である「ご」と「お」の使い分けは、漢語か和語かによって判断します。漢語とは音読みの語、和語とは訓読みの語です。例えば、「持参」「記入」は漢語なので、「ご持参ください」「ご記入ください」となります。一方で、「持つ」「書く」なら和語のため、「お持ちください」「お書きください」となります。

依頼の敬語表現

相手に敬意を持って依頼するには、「ください」の代わりに「お願いする」もしくは「いただく」のフレーズを使います。

【敬語表現】

  • ○○をお願いいたします
  • ○○をお願い申し上げます
  • ○○していただけますでしょうか
  • ○○していただきたく存じます
  • ○○していただけないでしょうか
  • 〇〇していただくことは可能でしょうか

「お願いする」の「する」を謙譲語「いたす」「申し上げる」にすると、相手を立てつつ直接的に動作を依頼することができます。相手に対して何かお願いがあるということが、非常に明快に伝わる依頼の表現と言えます。

一方の「いただく」は「もらう」の謙譲語で、「〇〇してもらう」ことを相手に敬意を払って表現した言い回しです。「いただけますでしょうか」「いただくことは可能でしょうか」と疑問形にすることで、間接的に柔らかく依頼することができます。

さいごに

ここまで「してください」についてご紹介しましたが、いかがでしたか。

「してください」は相手に何かをして欲しい時に使う、丁寧なフレーズです。「して下さい」という漢字を充てることもできますが、基本的にはひらがなで表記します。目上の人にお願いする際は、敬意を含んだ「ご(お)〇〇ください」「○○していただきたく存じます」などを使うと良いでしょう。

目上の方に何かを頼むのは、抵抗感があるという方も多いかと思います。そんな方は、是非このページでご紹介したような敬語の言い換え表現を使ってみてください。柔らかく相手にお願いすることができると、相手もきっと応えやすくなるはずです。

読者の皆さんがビジネスシーンでスマートに依頼できるようになることを、心より応援しています。

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