物事を進める場面で聞かれる「粛々と」という言葉を、誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?特に会議や、ニュースで流れる国会のシーンでよく出てくる印象が強いですね。それと似た雰囲気の「淡々と」という言葉も、同じくさまざまな場面で聞かれるものです。
一体どのように使い分けられるものなのでしょうか?使い分けをしていない場合、もしかすると不適切な使い方をしてしまっている可能性もありますよ。
それぞれの言葉の意味を知り、特にどのような場面で使うべきかを知れば、あなたが発する言葉がより具体的になるので、会話レベルの向上にもつながりますね。ここでは、「粛々と」「淡々と」の正しい意味や使い方、違いについて解説します。類義語や対義語も紹介するので参考にしてくださいね。
「粛々と」の意味・使い方
まず「粛々と」という言葉の読み方は「しゅくしゅくと」であり、「おごそかなさま。厳粛なさま。威厳をもって物事を行うさま」という意味があります。
重々しい空気で、礼儀正しくて近寄りがたい雰囲気があり、ひっそりと静まり返っているような場が想像できますね。この言葉を使う場面としては、たとえばお偉方が集まる会議や、国会・裁判所で執り行われる審議が、イメージしやすいでしょう。
【例文】
- 緊張感が漂う中、会議は粛々と進められた。
- 粛々と執り行われる審議の場で、誰もお互いに目を合わせることはなかった。
- 社長訪問に向け、社員全員が粛々と業務にあたっている。
「淡々と」の意味・使い方
次に「淡々と」という言葉の読み方は「たんたんと」であり、「態度・動作などが、あっさりしてこだわりがないさま」という意味になります。
人で例えるならば、あまり感情がなく、まわりに流されずに物事を進める人に使うようなイメージができますね。情に流されず、よく言えば冷静沈着、悪く言えば冷たいという印象を抱く人に対しても使えそうです。
【例文】
- 彼の話し方はいつどんな状況でも淡々としている。
- トラブルに見舞われながらも、淡々と日々の業務をこなす同僚。
- いつも淡々としていて冷たい人だ、と知人に注意された。
「粛々と」「淡々と」の違い
「粛々と」と「淡々と」は両方とも、「静かに、着実に」というニュアンスが含まれますが、以下のような使い分けが可能です。
「粛々と」には、静かさに加えて「おごそかさ」「真面目さ」という意味が含まれ、特に事柄が重要だったり、誤りが許されなかったりするような“場面を表現する”際に使用が適切です。
「淡々と」には、「あっさり」「冷静」「クール」という意味が含まれます。“人”に対して使用することが多い言葉です。ただし、冷たいという意味で取られれば相手に不快な思いをさせる言葉にもなりうるので、注意が必要です。
- 粛々と:真面目でおごそかな雰囲気を表現する場面で用いる
- 淡々と:人のあっさりとして無感情な雰囲気を表現する場面で用いる
「粛々と」の類義語・対義語
「粛々と」の類義語には、以下のような言葉があります。
- 静粛に
- しめやかに
- 静寂に包まれた
- 咳一つ聞こえない
- ひっそりと
- 粛然と
- しーんと
- 深々と
静まり返っている場所、堅苦しい雰囲気が伝わってくる言葉ばかりですね。緊張感の漂う場面を連想される方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、対義語には、
- 賑やかに
- 軽々しく
- 騒然
- 騒々しく
など、静けさとは無縁な、ざわざわとした雰囲気の漂う言葉がずらりと並びます。
「淡々と」の類義語・対義語
対する「淡々と」の類義語には、
- ツンツンした
- 愛想がない
- 不愛想な
- ぶっきらぼうに
- アッケラカンと
- 感情を交えずに
- 冷淡に
など、やはり人の性格を指す言葉として使用する場合には、やや冷たかったり、無情だったりする意味合いの言葉が並びました。対義語では次のような言葉が並びます。
- 情熱的に
- 興奮して
- 切々と
感情のこもった、温かみのある人柄の人物を想像させるものばかりですね。
まとめ
同じ言葉が2回続き、似たような意味を表わしそうな「粛々と」と「淡々と」は、使い方を誤ると、その場の印象をまったく違うものにしてしまう可能性があり、注意が必要な言葉です。
類語と対義語を見比べてみると、それぞれどんなシチュエーションで使うべき言葉か、より分かりやすかったのではないでしょうか。
- おごそかに、より真面目に物事を進めたいときは「粛々と」を。
- 感情が無用で、冷静さをより重視したいときは「淡々と」を。
ふたつの違いを理解し、適切な場面での利用を心がけましょう。