日常でよく使う言葉に「思う」「想う」がありますね。
読み方はどちらも「おもう」です。
発音が同じで、読み書きの文章でしか違いが表現できないことから、「思う」と「想う」の違いや使い分け方を、はっきりと説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか。
ここでは「思う」「想う」の違いをご説明します。それぞれの言葉の意味・使い方はもちろん、「念う・憶う・惟う・懐う」との違いや、「考える」との違いについてもお伝えするので参考にしてくださいね。
「思う」と「想う」の違い
「思う」と「想う」の違いについて、言葉の意味と使い方を見ていきましょう。
結論からお伝えすると、「思う」は常用漢字なので「おもう」を漢字で書くときは基本的に「思う」を使います。
「想う」は表外漢字のため、公用文を作成するときは使えませんが、一般的な文章を書くときに強い感情を込めて「おもい」を表したいときに使われます。「彼女を愛おしく想う」といった使い方ですね。
理解できましたか?
これらをわかった上で、それぞれの意味や使い方を見ていくと、より理解が深まります。まずは「思う」の意味や使い方をご覧ください。
「思う」の意味・使い方
「思う」を辞書で調べると、下記の7つの意味が出てきます。
- ある物事について考えをもつ。考える。
- 眼前にない物事について、心を働かせる。推量する。予想する。
- 願う。希望する。
- 心にかける。心配する。気にする。
- 慕う。愛する。恋する。
- ある感じを心にもつ。感じる。
- 表情に出す。そういう顔つきをする。
つまり「思う」は「感情的な心の動きを表す言葉」といえます。意味からも「思う」は、さまざまな場面で使われることが分かりますね。
「思」を使った熟語に「思考」「思索」「思想」「思慮」「意思」「所思」などがあるとおり、「思う」は広く一般的に「おもう」を使うときに用います。
なお、常用漢字なので、公用文書や法令、新聞、雑誌、放送局のニュースでは「思う」が使われます。
【例文】
- 今日は雨が降ると思う。
- 新しく事業を始めようと思う。
- 将来お金持ちになりたいと思う。
- 君のことを思って忠告している。
- 思わぬ事故に巻き込まれる可能性がある。
- 部下のことを思って忠告する。
上記のように、自分の意見や自分が感じたことを伝えたりするときに「思う」を使います。
「思」の語源・成り立ち
「思」の漢字は、会意文字の「田」と「心」から成り立ちます。※会意文字とは、二字以上の漢字の字形・意味を合わせて作られた漢字のこと。
「田」の語源は子供の脳を表し、「心」は心臓を表しています。この「頭」と「心」の二つの文字が合わさった「思」の漢字は、頭で考えたり、心で感じたりすることを意味します。
「想う」の意味・使い方
「想う」は「思う」と同じく「ある物事について考えをもつ。考える」をはじめとした7つの意味で使われます。
では「思う」とはどう使い分けたらよいのでしょうか。
「想う」は「ある対象を心に浮かべる」という気持ちが強く表れた表現です。
「想」を使った熟語には「感想」「想像」「想起」「回想」「追想」「予想」などがありますが、これらは全てある対象をイメージ(想像)して思い浮かべていますよね。
つまり、「相手を想う心」や「感情を込めた気持ち」をより強調して伝えたいときに使われる言葉なのです。
たとえば「故郷を想う」「好きな人を想う」「健康を想っていう」といった使い方ですね。
ただし、「想う」は表外漢字のため、国や公共団体が出す文書や法令に用いる正式な文書では使えません。あらたまった文書では「思う」を使いましょう。
ですが、日常生活や、ビジネスシーンでの親しい間柄の人とのやりとりでは「想う」を使っても問題ありません。
【例文】
- 彼のことを想い、眠れない夜を過ごす。
- 幼いころ育った故郷の想い出がよみがえる。
- 同級生が集まったお別れ会で、今は亡き友人を想う。
「想う」の語源・成り立ち
「想」の漢字は会意兼形声文字です。大地を覆う木を見ることを示す「相」の文字と、心臓を表す「心」の文字が合わさって成り立っている語です。
簡単に言えば「想う」は、心のなかに対象の姿を見て、具体的にイメージすることを表しています。
「念う」「憶う」「惟う」「懐う」の意味や違いは?
「おもう」には「思う」「想う」以外に、「念う」「憶う」「推う」「懐う」という漢字も存在します。それぞれの意味や使い方も押さえておきましょう。
まず「念う」は、ある対象への思いが強く揺るぎないものであることを強調するという意味です。「感謝の念」や「念がかなう」といった使い方をします。
「憶う」は、思いが記憶に強く関係していて、忘れない思いを表す場合に使います。たとえば「記憶」や「追憶」の熟語でも使われる漢字ですね。
「推う」は「推うに(おもうに)」といった言葉で使われます。意味は「考えてみるに。推察すると」です。「私が推うに、彼は犯人ではない」などと使います。
「懐う」は、しみじみと懐かしんだり思い出したりする場合に使います。「懐古」「追懐」などの熟語からも、なつかしむ様子をイメージできます。
「思う」と「考える」の違い
「思う」と似た表現に「考える」があります。
「考える」の意味は下記の3つです。
- 知識や経験などに基づいて、筋道を立てて頭を働かせる。判断する。意図する。
- 関係する事柄や事情について、あれこれと思いをめぐらす。
- 工夫する。工夫してつくり出す。
上記の意味をまとめると「考える」は「筋道を立てて知的に分析をするなど、客観的に判断すること」となります。
一方で「思う」は「感情的な心の動き」を表す言葉ですので、使う場面が異なることがわかります。
たとえば、「私は思う」というときは主観的な意見を表し、「私は考える」という場合は客観的な立場に立って分析し、筋道の立った思いを示すときに多く使われます。
さいごに
ここでは「思う」「想う」の違いや、意味・使い方について詳しくお伝えしましたが、いかがでしょうか。
また、「念う」「憶う」「推う」「懐う」の違いや意味、「考える」との違いについても理解できましたか?
基本は「思う」という漢字で間違いないのですが、そのときの気持ちや状況に応じて「想う」「念う」などの漢字を使うことができれば、自分の気持ちを上手く伝えることができますね。
この機会に覚えておいてくださいね。