「暖簾に腕押し」の意味・使い方(例文)|類語・言い換え表現、対義語も解説!

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「暖簾に腕押し」というフレーズを聞いたことはありますか。

漢字の画数が多く読み方に自信がないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、このフレーズはことわざなので字面通りの意味に受け取ってはいけません。

ここでは「暖簾に腕押し」の意味や使い方をご紹介します。

類語や対義語にあたる慣用句もご紹介しますので、是非参考にしてくださいね。

「暖簾に腕押し」の意味

「暖簾に腕押し(のれんにうでおし)」の意味は、「少しも手ごたえや張り合いがないことのたとえ」です。

「暖簾」とは屋号や店名が記された布で、飲食店や旅館、銭湯といった商店の出入り口や軒先に垂らしておきます。こうした目印としての役割以外に、室内の仕切りや装飾として用いることもあります。暖簾は吊るした布なので例え腕で押してもただ受け流されるだけで、破損したり押した反動で怪我を負うこともありません。そうした手ごたえのない様子を表したことわざが、「暖簾に腕押し」です。

さらに、「腕押し」には「腕相撲」という意味もあることから、「暖簾に腕押し」を「暖簾を腕で押すこと」ではなく「暖簾と腕相撲すること」と解釈することもあります。「暖簾」はドアと違って抵抗がないため、腕相撲をしようにも全く張り合いがありません。この張り合いがない様子が「暖簾に腕押し」の由来であるとした説もあります。

ちなみに、「暖簾に腕押し」と似たフレーズに「暖簾と脛押し(すねおし)」「暖簾と相撲」といったものがあります。「脛押し」も相撲のようなもので、向き合った二人が脛と脛とをからみ合わせ、押し合って勝負をきめる遊びです。

「暖簾に腕押し」の使い方(例文つき)

「暖簾に腕押し」は、自分の意見や要望、行動に対して相手が「応えてくれない」「聞く耳を持たない」「効果がない」といった状態を例えたフレーズです。

ビジネスシーンでは、具体的に「あの人は何度指摘しても効果がない」「職場環境の改善を希望しても聞く耳を持ってもらえなかった」といった場面で「あの人は何度指摘しても暖簾に腕押しだ」「職場環境の改善を希望しても暖簾に腕押しだった」と用います。

「暖簾に腕押し」は相手に対するネガティブな評価なので、上司や目上の人には面と向かって使わないようにしましょう。

「暖簾に腕押し」を使った例文は、以下の通りです。

【例文】

  • 原価を下げてくれるよういくら頼んでも、暖簾に腕押しだった。
  • 上層部にその気がなければ、どんな企画を提案しようとも暖簾に腕押しだ。
  • 彼は何を言っても暖簾に腕押し状態で、頑なに自分のやり方を変えようとしない。

「暖簾に腕押し」の類語・言い換え表現

「暖簾に腕押し」と同じく「少しも手ごたえがなく、ききめがないこと」を表すことわざに、以下のようなものもあります。

馬の耳に念仏

「馬の耳に念仏(うまのみみにねんぶつ)」は、ありがたい念仏を聞かせても馬にとっては無駄であることに由来しています。「馬の耳に念仏」と同じ意味のことわざには「馬の耳に風(うまのみみにかぜ)」があります。「馬の耳に風」は「馬耳東風」から来た言葉で、元になっているのは李白の詩「答王十二寒夜独有懐」です。人が心地よいと感じる春風(東風)が吹いても馬の耳には何も感じないことを表したことわざで、「手ごたえがない」だけでなく「他人の意見や批評に注意を払わず聞き流すこと」という意味もあります。

他にも、「馬の耳に念仏」と似た成り立ちのことわざには「犬に論語」「兎に祭文」といったものもあります。

糠に釘(ぬかにくぎ)

「糠に釘(ぬかにくぎ)」は「糠に釘を打つこと」が由来となったことわざです。

「糠」とは、米ぬかや糠味噌です。糠は柔らかいためいくら釘を打ち付けても、何の手ごたえもなければ釘を打ったことによる効果もありません。この様子を指したことわざが「糠に釘」です。略して「ぬかくぎ」と言うこともあります。

石に灸

「石に灸(いしにきゅう)」も、「効き目のないこと」をたとえたことわざです。

「灸」とは「やいと」とも呼ばれる漢方療法のひとつで、もぐさという植物を皮膚の上に据えて、線香で火をつける施術です。人間ならば熱の刺激で病気に対する治癒力が促進されますが、石に対してお灸を据えてもまるで効き目がありません。このように他者からの働きかけが効き目を表さないことを「石に灸」と言います。

似たことわざに「石に針」があります。

豆腐に鎹(とうふにかすがい)

「豆腐に鎹(とうふにかすがい)」は、「糠に釘」と成り立ちが似たことわざです。

「鎹」とは材木同士をつなぎとるために打ち込む大釘です。カタカナの「コ」の字の形をしており、小ぶりなものは戸締り用の掛けがねとして使われることもあります。

鎹は硬い材木と材木をつなぎとめるためには有効ですが、柔らかい豆腐が相手ではまったく効果がありません。そんな「全く手ごたえがなく、ききめがないこと」を指して、「豆腐に鎹」というようになりました。

ちなみに、「鎹」を使った有名なことわざに「子は鎹(こはかすがい)」があります。「鎹」を人と人をつなぎとめるものとして使うことで、「子供への愛情から夫婦の仲がなごやかになり、縁がつなぎ保たれること」を表したことわざです。

「暖簾に腕押し」の対義語

「暖簾に腕押し」の対義語となるような慣用句には、以下のようなものがあります。

大黒柱と腕押し

「大黒柱と腕押し(だいこくばしらとうでおし)」は、「手ごたえがある・効果がある」ことのたとえです。

「暖簾に腕押し」では腕押しをする対象が「暖簾」ですが、「大黒柱に腕押し」では暖簾の真逆とも言える「大黒柱」を対象としています。「大黒柱」とは、民家の土間と床との境の中央に立てる太い柱です。これと腕押し、つまり腕相撲をしようにも、まったく歯は立ちません。このような様子を指した慣用句が「大黒柱に腕押し」です。

打てば響く

「打てば響く(うてばひびく)」の意味は、「働きかけるとすぐに反応する」です。「反応が優れている」というニュアンスを含むこともあります。

打てばすぐに反応・効果が現れる様子が、まったく手ごたえのない「暖簾に腕押し」とは反対の意味を持つ慣用句です。

柳に風

「柳に風(やなぎにかぜ)」の意味は、「逆らわずに穏やかにあしらうこと」です。

「柳」は「暖簾」同様柔らかいため、風が吹いても逆らうことなく穏やかに従ってなびきます。このように「柳に風」は「暖簾に腕押し」と似た意味を表すものの、反対の印象を与えることわざです。「暖簾に腕押し」がネガティブな意味で用いるのに対して、「柳に風」は多くの場合ポジティブな意味で用います。

「柳に風」は「柳に風と受け流す」「風に柳」と言うこともあります。

さいごに

ここまで「暖簾に腕押し」についてご説明してきましたが、いかがでしたか?

「暖簾に腕押し(のれんにうでおし)」は、「手ごたえや張り合いがないこと」を例えたことわざです。自分の意見や行動に対して「相手が聞く耳を持たない」「効果がない」という意味合いで用います。ネガティブな印象を与えることわざなので、上司や目上の人の言動について直接使うのは控えた方が賢明です。もし「穏やかにあしらう」というポジティブなニュアンスを含ませたいなら、「柳に風」を使いましょう。

ビジネスシーンでことわざを使う機会は少ないですが、基本的なことわざの意味を知らないと文脈の理解を誤ったり、相手に知識不足と受け取られかねません。

この記事を参考に、「暖簾に腕押し」とそれに関係することわざを正しく理解できるよう応援しています。

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