「申し伝える」の意味・使い方(例文)|類語「申し上げる・伝え申す・お伝えする・申し付ける」との違いまとめ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
「御中・様」の意味・違い・使い分け方(メール・封筒の例文つき)同時併用はNG!

「申し伝える」は日常生活ではあまり使う機会がありませんが、ビジネスシーンでは度々見かける表現です。このようにビジネス相手に使用する言葉は、敬語として適切に使えているか気を付けなければなりません。

ここでは、「申し伝える」の意味や使い方をご紹介します。また、類語「申し上げる」「伝え申す」「お伝えする」「申し付ける」との違いについてもご紹介します。

「申し伝える」を適切な場面で使えるよう、例文も参考にマスターしてくださいね。

「申し伝える」の意味

「申し伝える(もうしつたえる)」の意味は、「取り次いで申す」です。

「申し伝える」は「言い伝える」の謙譲語であり、「言う」の謙譲語「申す」と動詞「伝える」で成り立っています。馴染み深い言葉に言い換えると「言葉を取り次ぐ。伝言する」となります。

「申し伝える」の意味には他にも、「語り伝え申し上げる」があります。これは、伝承や物語を後世に語り伝えることを表す謙譲語です。したがって、この意味で「申し伝える」を使うことは、ビジネスシーンにおいては基本的にありません。「申し伝える」は主に誰かに用件を伝言する際に使用します。

「申し伝える」の使い方(例文つき)

「申し伝える」は謙譲語の中でも、謙譲語Ⅱ(丁重語)に分類されます。

「申し伝える」ことを報告する相手に敬意を示すための敬語なので、話し相手が目上の人や取引先の場合に使います。動作の向かう先を立てるための敬語ではないため、伝言相手が同僚や目下の人であっても使用が可能です。

「申し伝える」を使うのは、電話やメール、対面での応対時に伝言や仲介を頼まれる場面です。相手からの依頼や伝言に対する返事として、「(私が)伝えておきますね」という意味合いで使います。実際のビジネスシーンでは、「ご要望につきましては、弊社の研究部門に申し伝えます」といったように丁寧の助動詞「ます」を付けるのが基本です。

ちなみに、社外の人へ身内について話す場合、その身内が自分より目上の人であっても自分側の人間として扱います。つまり、例え社長への伝言だとしても社外の人に対しては「社長の鈴木に申し伝えておきます」と謙譲表現を使うのが適切なのです。

このように「申し伝える」は、丁寧語「ます」を付けて「申し伝えます」「申し伝えておきます」と使いますが、「申し伝えさせていただきます」というフレーズは使う相手次第では誤った敬語表現となります。「いただく」は謙譲語Ⅰであり、「申し伝える」動作の向かう先を立てるための敬語です。

つまり、伝言相手が目上の人や取引先だった場合にのみ適切なフレーズです。伝言する相手が同僚や目下だった場合に「申し伝えさせていただく」を使うと、本来立てるべきでない相手を立ててしまうことになります。「私から上層部に申し伝えさせていただきます」は正しい敬語ですが、「私から部下へ申し伝えさせていただきます」は誤用なのです。

このように「申し伝えさせていただきます」というフレーズは、伝言相手の立場によっては誤った敬語表現となることから、使用を控えた方が賢明です。

「申し伝える」を使った例文は、以下の通りです。

【例文】

  • この度の不具合につきましては、早急に開発担当へ申し伝えます。
  • ご連絡いただいた内容について、係の者に申し伝えておきます。
  • 申し訳ありませんが、ただいま部長の鈴木は席を外しております。戻り次第、折り返しご連絡するよう申し伝えておきます。

「申し伝える」の類語と違い

ここでは、「申し伝える」の類語との違いをご紹介します。

「申し上げる」との違い

「申し上げる」は、「言う」の謙譲語です。

ビジネスシーンにおけるポピュラーな敬語のひとつで、「言う」という動作の向かう先を立てるための敬語(謙譲語Ⅰ)です。「申し伝える」は話す相手を立てるための敬語(謙譲語Ⅱ, 丁重語)なので、「申し上げる」とは敬語の種類が異なります。

そもそも「申し伝える」と「申し上げる」とでは、意味においても異なります。「申し伝える」が誰かの発言を「伝言する」ことを指すのに対し、「申し上げる」には「伝言」の意味は含まれません。「申し上げる」は単に「口に出す」ことを意味します。

「伝え申す」との違い

「お伝え申す」は、「伝える」の謙譲表現です。

「お伝え申す」の「申す」は補助動詞であり、謙譲の意を付け加えるための語です。つまり、「申し伝える」と「お伝え申す」では、「申す」の持つ意味が異なります。

「申し伝える」の「申す」は「言う」の謙譲語ですが、「お伝え申す」の「申す」には本来の「言う」という意味はありません。補助動詞はあくまで意味を添えるためのもので、動詞本来の意味と独立性を失っているためです。したがって、より明確に「口に出して伝える」という意味を示したいなら、「申し伝える」が適切です。また、広く一般的に使われている言い回しという点でも「申し伝える」の方が、ビジネスシーンでの使用にふさわしいと言えます。

「お伝えする」との違い

「申し伝える」と「お伝えする」とでは、言葉の持つ意味だけでなく、敬語の種類も異なります。

まず、意味に着目してみます。

「伝える」の意味には「言葉などで知らせる。伝達する」の他にも「あるものを受け継いで残す。伝授する」「よその土地から文物などを持ってくる。もたらす」「熱・音などが、一方から他方へ移るように仲だちをする」があります。「申し伝える」が伝えるのは言葉のみですが、「お伝えする」が伝えるのは文化や熱など様々なものです。「申し伝える」と「お伝えする」は、伝える対象によって使い分ける必要があります。

次に、敬語の種類に着目してみます。

「申し伝える」は謙譲語Ⅱ(丁重語)であり、話し相手や文章の相手を立てるための敬語です。それに対し、「お伝えする」は動詞「伝える」に謙譲語の一般形「お~する」が付いてできた語であり、動作の向かう先を立てる謙譲語Ⅰです。「お伝えする」を使う場面としては、上司への伝言を頼まれた際の返事、目上の人への伝言を誰かに頼む場合が挙げられます。

つまり、「申し伝える」は伝言することを報告する相手が目上の人の場合に、「お伝えする」は伝言する先が目上の人の場合に使うフレーズとなります。

「申し付ける」との違い

「申し伝える」と「申し付ける」では、意味が異なります。それぞれ謙譲表現を取り除いて意味を見比べてみます。

「申し伝える」の意味が「言葉を取り次ぐ」「伝言する」なのに対し、「申し付ける」の意味は「自分側の人間に用を言いつける」「命令する」です。「申し伝える」と「申し付ける」は語感が似ていますが、意味はまったく異なるので混同しないように注意しましょう。

さいごに

ここまで「申し伝える」についてご説明してきましたが、いかがでしたか。

「申し伝える」は「言い伝える」の謙譲語で、「言葉を取り次ぐ。伝言する」のへりくだった表現です。敬語の種類は謙譲語Ⅱ(丁重語)なので、話し相手を立てるために用い、伝言する相手の立場は問いません。「申し伝える」を使う際は、基本的に「申し伝えます」「申し伝えておきます」といった丁寧な言い回しにしましょう。

ビジネスシーンでは様々な人とやりとりする都合上、伝言を取り次ぐ機会も多いかと思います。誰を立てるべきかに気を配り、適切な敬語を選べるようになるといいですね。

この記事を読んで、「申し伝える」を正しく使えるようになることを応援しています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket