日常生活では「もれなく」を含んだ様々なフレーズを目にします。
「もれなく当選」「もれなく記入を」など見慣れた表現も多いですが、正確な意味はご存知でしょうか。「もれなく」の意味を正しく理解していないと、誤解を与えかねない使い方をしてしまうかもしれません。
ここでは「もれなく」の正しい意味や使い方をご説明します。あわせて類語もご紹介しますので、是非マスターしてくださいね。
目次
「もれなく」の意味
「もれなく」の意味は、「のこらず。ことごとく」です。
漢字では「漏れ無く」と書くことから、「漏れる」を「無い」で打ち消してできた言葉だとわかります。一般的には平仮名表記で「もれなく」と書き、「該当する人・物が漏れることなく全て」という意味で用います。
「もれなく」の使い方(例文つき)
「もれなく」は抜けがないようにという意味が転じて、「(手順や処理を)正確に」「きちんと」「必ず」といったニュアンスが含まれることもあります。
そんな「もれなく」を使った例文は、以下の通りです。
【例文】
- 太枠で囲まれた部分を、もれなく記入してください。
- これから試作品の耐久テストを行います。何かありましたら、もれなく報告してください。
- 本講習は、全3回とももれなく参加してください。
- 来月行われる社内研修は、全職員を対象にもれなくかつ効果的に実施したいと考えている。
- 応募シールを貯めると、A賞・B賞・C賞のいずれかにもれなく当選!
「もれなく抽選で」は誤用
「もれなく当選」は「応募者は全員当選」という状況を指します。これによく似たフレーズで、「もれなく抽選」という言い回しがあります。
もし「もれなく抽選で」というフレーズを、「対象者は全員抽選に参加できる」「商品に差はあれど、全員に何かしら当たる」という意味で使うなら、厳密には誤りではありません。しかし、当落があるものに対して「もれなく抽選」と表現するのは、明確な誤用です。
このように「もれなく抽選で」は意図が伝わりにくく紛らわしい表現なので、使用を避けた方が賢明です。
「もれなく」は「MECE(ミーシィー)」と表現
ビジネスシーンでは、「もれなく」を「ミーシー(もしくはミッシー)」と表現することもあります。
「ミーシー」は「Mutually(お互いに) Exclusive(排他的で)Collectively(全体的に) Exhaustive(余すところがない)」の頭文字で、「お互いに重複なく、全体として漏れがない」という考え方のことです。従来はコンサルティング業界を中心に使われていた手法ですが、現在では論理的思考(ロジカルシンキング)の広がりとともにビジネス業界全体に広まっている言葉のひとつです。
「もれなく」と「まもなく」との違い
「もれなく」と似た言葉に「まもなく」があります。これらは意味が全く異なるので、混同しないように注意しましょう。
「もれなく」と「まもなく」の違いは、漢字に直すと理解しやすくなります。「まもなく」は漢字で表記すると「間も無く」です。つまり、「時間がさしてたたないさま。ほどなく。じきに。」という意味を指します。「漏れ」がないと「間」がない、漢字を比べてみると全く意味が違うということが明確です。
なお、「まもなく」は「もれなく」同様、一般的には平仮名で表記します。
「まもなく」の例文
「まもなく」を使った例文は、以下の通りです。
【例文】
- まもなく3番線に特急電車が参ります。
- まもなく閉館のお時間となります。
- わが社の明暗を左右するコンペの結果が、まもなく発表される。
- 担当がまもなく参ります。今しばらくお待ちください。
- 待ち合わせの時間までもうまもなくだ。
「もれなく」の類語
「もれなく」には、以下のような類語があります。
【類語】
- すべて:ある物や、ある事の全部。いっさい。
- 残らず:余すところなく。すべて。
- 余すところなく:残らず。全て。
- 洗いざらい:残したり隠したりせず、すべてを出すさま。何から何まで全部。残らず。
- ことごとく:問題にしているもの全部。残らず。すべて。みな。
上に挙げた類語はどれも「もれなく」と同じ意味で使えますが、「ことごとく」は失敗や問題など好ましくないものに対して用います。対象が好ましいことか否かに注目して、類語を使い分けましょう。
さいごに
ここまで「もれなく」についてご紹介してきましたが、いかがでしたか。
「もれなく」の意味は「すべて」です。また、「正確に」「きちんと」「かならず」といったニュアンスを持つこともあります。「もれなく抽選」は必ずしも誤用とは言い切れませんが、紛らわしい表現なので使わないようにしましょう。
ビジネスシーンでは、「もれなく」を適切に使うことで相手に「全て」「きちんと」と念を押すことができます。慎重な仕事ぶりが求められるビジネス上では非常に有用な表現と言えるでしょう。
このページを参考に、「もれなく」の正しい使い方がマスターできるよう応援しています。