「滅相もない」の意味・使い方・語源|「滅相もございません」の敬語表現は正しい?

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「滅相もない」の意味・使い方・語源|「滅相もございません」の敬語表現は正しい?

「滅相もない」の意味や正しい使い方を知りたいと思っていませんか。

「滅相」の読み方は「めっそう」です。

古風な言い回しなので、若い世代の人だとまだ使ったことのない方もいるのではないでしょうか。しかし、ビジネスシーンで使用する目上の人も少なくないので、意味を知っておくべきといえます。

ここでは「滅相もない」の意味や使い方をご説明します。語源や敬語表現などについてもくわしくお伝えするので参考にしてくださいね。

「滅相もない」の意味

「滅相もない」は「とんでもない。あるべきことではない」という意味です。

「滅相もない」でひとまとまりの語として扱い、相手の発言を否定するときに用います。

否定をするときは、誤解を受けた場合に使う強い否定と、称賛を受けた場合などに謙遜を表す場合の軽い否定の2種類がありますが、「滅相もない」はどちらの意味においても使うことができます。

そのため、相手から「滅相もない」と言われた場合には、どちらの意味で受け取るべきか慎重な判断が必要です。

「滅相もない」と「とんでもない」の違い

前述で意味をお伝えしたとおり、「滅相もない」と「とんでもない」は辞書では同じ意味ですが、へりくだる度合いが異なるため、相手によって使い分けることが望ましいです。

「滅相もない」はへりくだりつつ否定する表現のため、目上の人や取引先相手に使うのがふさわしい表現である一方、「とんでもない」は「滅相もない」に比べるとややカジュアルな表現のため、同僚や目下に使うのが一般的です。

ですが、たとえば上司に「とんでもない」の表現を使っても、それが失礼に当たるかといえばそうではありません。あくまで使い分けの目安だと覚えておくとよいでしょう。

「滅相もない」の語源・由来

「滅相もない」という慣用句の由来を知る上で踏まえておきたいのが、そもそも「滅相」は仏教用語だという点です。

意味は、「四相の一。因縁によって生じた一切のものが現在の存在から滅し去り、過去に入ること」「真如が常住で寂滅であり、生死がないこと」です。これは「四相」という考え方のひとつで、物事や生物の移り変わる姿を「生まれる”生”、存在する”住”、変化する”異”、なくなる”滅”」として万物の生滅・無常を表した言葉です。

この四相の最終段階が「滅相」です。命が亡くなる「滅相」は避けては通れないものですが、生き続けたい人間にとって「滅相」は「あってはならないこと」「思いもよらないこと」であり、そこから「滅相もない」が「とんでもない」という意味で使われるようになりました。

「滅相もない」の使い方

「滅相もない」は、へりくだりつつ否定する表現です。

へりくだった表現なので、目上の人や取引先といった敬意を示すべき相手に使うのがふさわしいです。目上の人の発言に異を唱えるのは非常にやりづらいものですが、へりくだった「滅相もない」を使うことで丁寧になり、否定による強い印象を和らげることができます。相手からあらぬ嫌疑をかけられたり、誤解を受けた際に適した表現です。

また、「滅相もない」は軽い否定の表現として、相手から称賛の言葉をもらった際にも使うことができます。「滅相もない」を使ってやんわりと否定することで、謙遜した謙虚な姿勢を示すことができます。

「滅相もない」を使った例文は以下の通りです。

【例文】

  • (相手からの濡れ衣に対して)そのようなご指摘、滅相もないことでございます。一刻も早く疑いを晴らせるよう、誠心誠意尽力していく所存です。
  • (「サポートありがとう」に対して)いえいえ、滅相もないことです。またお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。
  • (「企画書よかったよ」に対して)滅相もないことです。より一層良いものができるよう、努めて参ります。

「滅相もございません」は間違い?

「滅相もない」をより丁寧な言葉にするために「ない」を「ございません」に変えるのは、間違いと捉える人もいます。「滅相もない」で一つの語として扱う言葉のため、「ない」だけを切り出して敬語に変えることは不適切だというのがその理由です。

「滅相もない」を敬語にしたい場合、誤った敬語表現だと受け取られよう、「滅相もないです」「滅相もないことです」「滅相もないことでございます」とするのが賢明です。

ただし、「滅相もございません」も明らかな誤用とは言い切れません。文化庁による文化審議会答申「敬語の指針(2007年)」では、「滅相もない」の類語「とんでもない」の敬語表現について言及されています。それによると、「とんでもございません」は世間にかなり広まっている表現だという理由で、現代では使用も問題ないと寛容な態度が示されています。

これに倣うと、「滅相もございません」も明らかな誤用とは言い切れないことになります。敬語の扱いは時代によって変化しやすいものです。世代や環境によってそれぞれ考え方が異なるため、ある程度柔軟な対応が必要です。

「滅相もない」の類義語

「滅相もない」には以下のような類義語があります。

とんでもない

「思いもかけない。意外である」「もってのほかである」「まったくそうではない。滅相もない。相手の言葉を強く否定していう」という意味です。「滅相もない」同様に、強い否定、謙遜する軽い打ち消しの両方の意味で使うことができます。

ありえない

「あるはずがない。ありそうもない」「信じられない」という意味です。強い否定で使います。

決してそのようなことはない

「どんなことがあっても。絶対に。断じて」という強い打消しの言葉です。

濡れ衣

「身に覚えのない罪をいうたとえ」「根拠のないうわさ」という意味です。強い否定の際に「濡れ衣だ」といったように使います。

さいごに

ここでは「滅相もない」の意味や使い方をお伝えしましたが、いかがでしょうか。

ビジネスシーンで目上の人の発言を否定するとき、敬意を込めて伝えられる表現なので、覚えておくと便利です。この機会に使い方をマスターしておいてくださいね。

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