「まずは書中をもちまして」の意味・使い方・類語(例文つき)

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「まずは書中をもちまして」の意味・使い方・類語(例文つき)

手紙やビジネス文書の末尾で「まずは書中をもちまして」という言葉を目にすることがあります。

「書中」の読み方は「しょちゅう」です。

かしこまった文書などで、結びの挨拶の定型句として使われる言葉ですが、意味が曖昧なまま何となく使用している方も少なくありません。

ここでは「まずは書中をもちまして」の意味や使い方についてお伝えします。類語や言い換え表現、文書の例文も紹介するので参考にしてくださいね。

「まずは書中をもちまして」の意味・使い方

まずは「まずは書中をもちまして」の意味をお伝えします。「まずは」「書中」「もちまして」の3つに分けたそれぞれの意味は以下のとおりです。

  • まずは:とりあえず。ともかく。何はともあれ。
  • 書中:書籍・文書・手紙文の中。また、そこに書いてある文句。
  • もちまして:手段や方法を表す「以て」を丁寧にした語

つまり「まずは書中をもちまして」とは「とりあえず文書という手段で」という意味になります。

結びの挨拶で「まずは書中をもちまして」を使ったときは、その後に手紙の用件(お礼やお詫びなど)のフレーズを書き記すのが基本です。

「まずは書中をもちましてお礼申し上げます」といった使い方ですね。

文章を引き締めるのと同時に、相手に「文面だけで済ませるのは申し訳ないけれど、取り急ぎ」というお詫びの気持ちを添える丁寧な表現なので、ビジネスシーンではよく使われます。

【例文】

  • まずは書中をもちましてお祝い申し上げます。
  • まずは書中をもちましてお見舞い申し上げます。
  • まずは書中をもちましてご案内まで。
  • まずは書中をもちましてご報告申し上げます。
  • まずは書中をもちましてご依頼申し上げます。
  • まずは書中をもちましてお礼まで申し上げます。
  • まずは書中をもちましてご回答まで申し上げます。
  • まずは書中をもちましてご挨拶申し上げます。
  • まずは書中をもちましてお詫び申し上げます。
  • まずは書中をもちましてご通知まで。

「申し上げます」は「まで」や「まで申し上げます」に言い換えることもできます。

なお「まずは書中をもちまして」は、取り急ぎ書面で用件を伝えるための言葉です。重大なミスを犯したときの謝罪や、目上の人に感謝の気持ちを伝える場面など、すぐにでも足を運ぶ必要があるときに使用するのは不適切です。

「まずは書中をもちまして」を使うときは、書面での対応が問題ないときに使うのが基本なので覚えておくと良いでしょう。

ちなみにビジネスメールを送るときは「まずはメールをもちまして」に言い換えて使います。

「まずは書中をもちまして」の文例集

つづいては「まずは書中をもちまして」を使った文例を紹介します。

挨拶状

謹啓 新緑の候、皆様におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご厚情を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて、私儀、このたびの取締役会をもちまして、株式会社〇〇〇〇代表取締役社長を退任し会長職に就任いたしました。在任中大過なくその任を果たせましたのも、皆様方のひとかたならぬご厚誼の賜物と存じ、謹んで深謝申し上げます。
 なお、後任には専務でありました〇〇〇〇が就任することとなりました。長年の営業畑で築き上げた人脈と人望の高さで、すぐれたリーダーシップを発揮してくれるものと期待しております。
 何卒倍旧のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
 末筆ながら一段のご健勝をお祈りいたし、まずは書中をもちましてご挨拶とさせていただきます。

謹白

 平成〇〇年〇月〇日

株式会社〇〇〇〇
会長 〇〇〇〇

お礼状

拝啓 猛暑の候、皆様にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご愛顧を賜りありがたく感謝申し上げます。
 さて、このたびはご丁寧なご挨拶に加え、結構なお品をいただきまして、誠にありがとうございます。弊社一同でおいしく賞味させていただきました。大変なおいしさに、夏を乗り切る元気が出てまいりました。ご厚志に深く感謝いたします。
 ささやかではございますが、お礼の品を別送にてお送りいたしますので、ご受納いただければ幸甚でございます。
 皆様のいつもながらのお心づくしの応えるため、なお一層の努力をしてまいりますので、今後ともご指導、ご鞭撻をよろしくお願いいたします。
 末筆ですが、時節柄、皆様のご自愛をお祈り申し上げます。
 まずは書中をもちましてお礼申し上げます。

敬具

お詫び状

平成〇〇年〇月〇日

株式会社〇〇〇
総務部 〇〇〇〇様

株式会社〇〇〇〇
経理部 〇〇〇〇

ご請求金額についてのお詫び

拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて、このたびは〇月分のご請求金額につきまして、誤った金額をご請求いたしましたこと、心よりお詫び申し上げます。
 ご指摘を受けましてさっそく会計帳簿を調べましたところ、確かに弊社の間違いでございました。今後は経理面でのチェック態勢の強化に力を注ぎ、二度とこのようなことが起こらぬよう万全を期して参りますので、このたびの件は、どうかご容赦くださいますようお願い申し上げます。
 なお、訂正いたしました請求書を同封させていただきます。
 まずは書中をもちましてお詫びを申し上げます。

敬具

「まずは書中をもちまして」の類語・言い換え表現

「まずは書中をもちまして」はビジネスシーンで使える便利なフレーズです。

しかし、同じ相手と何度も書面でやりとりをするとき、毎回同じ結びの挨拶の言い回しになるのは好ましくありません。

ここでは「まずは書中をもちまして」の言い換え表現を例文つきでお伝えするので参考にしてくださいね。

「書面にて」

「にて」の意味は「〜によって」「〜で」です。そのため「書面にて」の意味は「書面によって」「書面で」になります。

名詞・活用語の連体形に付く言葉で、手段・方法・材料を表します。例文をご覧ください。

平成〇〇年〇月〇日

株式会社〇〇〇
総務部 〇〇〇〇様

株式会社〇〇〇〇
営業一課 〇〇〇〇

資料紛失のお詫び

拝啓 貴社ますますご繁栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のお引き立てにあずかり、ありがたく厚く御礼申し上げます。
 このたびは私の不注意により貴社に多大なご迷惑をおかけしてしまいまして、誠に申し訳なく存じ、心よりお詫び申し上げます。
 平成〇年〇月〇日午前〇時ごろ、貴社で〇〇様とのお打ち合わせの後、用事にて〇〇駅にて下車した際、お預かりいたしました「〇〇に関する資料」を落としたことに気づかず、紛失してしまいました。すぐに駅事務室に遺失物の捜索を願い出ましたが、未だ発見に至りません。
 つきましては、大変恐縮ではございますが、当該資料の再発行をお願いできませんでしょうか。ご用意いただけましたら、直ちに私がお伺いいたしますので、よろしくお願い申し上げます。
 お詫びを申し上げますとともに、今後二度とこのような不祥事は起こさないことを固くお誓い申し上げます。何卒今後もお引き立てのほど、よろしくお願い申し上げます。
 まずは書面にてお詫び申し上げます。

敬具

「略儀ながら書中にて」

「略儀」は「りゃくぎ」と読み、「正式な手続きや形式を省略したやり方・略式」という意味です。

また、「ながら」には「ではありますが」という意味があり、「略儀ながら」は「正式な手続きを省略してはいますが」「略式ではありますが」という意味となります。

詳しくは『「略儀ながら書中にて・メールにて」の意味と使い方|お詫びメールの文例つき』をご覧ください。例文は以下のとおりです。

 

拝啓 陽春の候、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のお引き立てにあずかり厚く御礼申し上げます。
 さて、おかげ様で弊社は平成〇〇年〇月〇日をもちまして、創立〇周年を迎える運びとなりました。これもひとえに皆様方の厚いご支援と温かい激励の賜でございます。ここに心よりの感謝を申し上げます。
 これを機に、社員一同、決意を新たにし、従前にもましてサービスの向上に努めてまいります。
 今後とも倍旧のお引き立てを賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 まずは略儀ながら書中にてお礼かたがたご挨拶申し上げます。

敬具

平成〇〇年〇月吉日

株式会社〇〇〇〇
代表取締役 〇〇〇〇

「書中をもって」

「もって」を漢字で書くと「以て」となります。手段や方法を示す言葉であり、「文書の中で」という意味になります。

拝啓 初秋の候、貴社におかれましてはますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。日頃は格別のご愛顧にあずかり、謹んで御礼申し上げます。
 さて、これまで貴社を担当させていただいておりました弊社営業部の〇〇〇〇が人事異動により〇〇営業所勤務となり、後任に〇〇〇〇が〇月〇日より貴社を担当させていただくことになりました。
 〇〇は入社以来〇〇支店に勤務し、営業員として当該エリアのお客様から多大な信頼を寄せられ実績を積んでまいりましたので、必ずや貴社のお役に立てるものと存じております。
 近日中に〇〇をご挨拶に参上させますので、よろしくお願い申し上げます。
 略儀ながら書中をもって担当者交代のご挨拶を申し上げます。

敬具

  平成〇〇年〇月〇日

株式会社〇〇〇〇
営業部長 〇〇〇〇

さいごに

ここでは「まずは書中をもちまして」の意味や使い方についてお伝えしましたが、いかがでしょうか。

「まずは書中をもちまして」は「とりあえず文書という手段で」という意味の言葉です。手紙やビジネス文書の締めの挨拶で使える、便利な言葉なので活用してくださいね。

ですが、どのような場面でも使用できるわけではありません。

たとえば「まずは略儀ながら書中をもちまして」は、「本来直接訪問すべきところですが、まずは書面という簡単な手段で」という意味であり、「手紙を出したあとで訪問する」という意味合いが含まれます。

場面に応じた使い方ができるよう、覚えておいてくださいね。

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