「告示・公示・公告」の違い|意味・使い方を例文つきで徹底解説!

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「告示・公示・公告」の違い|意味・使い方を例文つきで徹底解説!

日本語には、読み方や漢字の似た言葉がたくさんありますよね。

その一例が「告示」「公示」「公告」です。

選挙に関するニュースや新聞記事を読むと、「告示」や「公示」、「公告」という言葉を見聞きすることがあります。

これらは「告」「公」「示」の漢字を入れ替えた言葉なので混乱してしまいがちですが、厳密には意味や使い方に違いがあります。

ここでは「告示」「公示」「公告」の違いや、それぞれの意味・使い方についてお伝えします。

「告示」の意味・使い方

「告示」の読み方は「こくじ」です。

「告示」とは「国家や地方公共団体などが、ある事項を公式に広く一般に知らせること。またはそのための形式」という意味です。

簡単に言えば、国や自治体が何かをお知らせすることをいいます。なお、選挙のときに「告示」を使うのは下記のときです。

  • 衆・参各議院の再選挙
  • 衆・参各議院の補欠選挙
  • 都道府県の知事と議員
  • 政令指定都市の市長と議員
  • 政令指定都市以外の市長と議員

選挙の他にも、厚生労働省の児童福祉法に関するお知らせや、文部科学省の学習指導要領の告示、内閣告示なども「告示」を使いますね。

「告示」の主体はあくまでも国や地方自治体といった行政機関のため、民間企業から何かを知らせるときに「告示」は使えません。

たとえば「いま進めている社内プロジェクトの概要を、社長が社員に対して告示する」という使い方は誤用となるわけです。

告示の方法は、国は官報に掲載し、地方公共団体の場合は役所の敷地に設置されている掲示板や一般配布される公報によって行われます。

【例文】

  • 本日、東京都選挙管理委員会が東京都知事選挙を告示しました。
  • 自転車の放置防止に関する条例に基づき、自転車を撤去・保管したので、次の通り告示する。
  • 都市計画法の規定に基づき、開発行為に関する工事が完了したことを告示します。

「公示」の意味・使い方

「公示」の読み方は「こうじ」です。

「公示」とは「公の機関が広く一般に向けて示すこと」という意味です。「告示」と意味が似ていますね。

「公の機関」とは、国や地方公共団体だけでなく、鉄道や空港などの交通機関、郵便局や電力会社、病院や大学などにもおよびます。また、裁判所などの司法機関も「公示」です。民事裁判の「公示送達」にも「公示」の文字が使われていますよね。

選挙のときも「公示」を使いますが、「衆議院の総選挙」と「参議院の通常選挙」のときのみです。

【例文】

  • 衆院選の公示まであと1週間となり、各政党は準備に追われている。
  • 国土交通省により今年度の全国の地価が公示された。
  • 公示地価の上昇幅が都市部を中心に拡大している。
  • 訴状の送付先が不明の場合、公示送達を行うことができる。

「公告」の意味・使い方

「公告」の読み方は「こうこく」です。

「公告」の一般的な意味は「国または公共団体が、ある事項を広く一般に知らせること。官報・新聞への掲載や掲示など文書によるものをいう」です。

こちらも「告示」や「公示」と意味が似ていますね。

公告は「国や自治体または私人が、法令の定めに従い特定の内容を一般公衆に通知すること」という限定的な意味で使われます。

たとえば、自治体が行う公共事業の入札公告がその典型例です。また、株式会社が自社情報を官報に公開することも「公告」と呼ばれます。この場合、株式会社は私人ですが、株式会社による自社情報の公開は法令で義務付けられている点で「公的な内容」と解釈できるため「公告」として扱われるわけです。

【例文】

  • 京都市は、ホームページ上で駅前再開発事業の一般競争入札を公告した。
  • 上場企業の多くは、決算情報を公開する媒体を官報から電子公告に変更している。
  • 不動産競売手続の結果、売却許可決定が出た場合は、裁判所に一定期間公告される。

「公告」と似た言葉に「広告」があります。「公告」は、法令上の根拠に基づいて行われる公的な性質のものを広く一般に知らせるときに使う言葉です。

「告示・公示・公告」の違い・使い分け方

さて、「告示・公示・公告」の意味や使い方を説明しましたが、使い分け方やその違いについてあらためて整理していきましょう。

第一に、これらの違いとして挙げられるのは「主体の範囲」です。

「告示」は国や地方公共団体などの行政機関がその主体であり、「公示」はそれに加えて交通機関や医療機関、金融機関といった公共機関も含みます。

つまり、郵便局や電力会社のように公の機関と同一視できる私的団体は「公示」の主体となることができます。

さらに「公告」は、民間企業などの私人も、一般に何かを知らせるときに使える言葉なのです。

ただし、私人の場合、「公告」は何でも一般に知らせることができるわけではなく、決算報告、定款変更、株式分割、合併などの法令に基づく公的な性質のものに限られます。

選挙用語としての告示・公示の違い

選挙が近くなると、新聞やテレビで「第〇回衆議院総選挙が公示されました。投票日は来週の日曜日です」、「本日、東京都知事選挙が告示され、17日間に渡る選挙戦がスタートしました」などと言われますよね。

選挙に関して「告示」と「公示」の言葉が使い分けられていますが、その違いを知っていますか。

先に述べた通り、「公示」は「衆議院の総選挙」と「参議院の通常選挙」に対して使います。それ以外の国会議員の補欠選挙や、地方自治体首長、地方議会議員の選挙などはすべて「告示」を使います。

衆議院総選挙と参議院通常選挙は国民の代表者を選ぶ重要な選挙であるため、その施行は天皇の国事行為として行われます。そのため「告示」よりもさらにパブリックな響きを持つ「公示」が使われるわけです。

以上の用語の使い分けは日本語の単なる慣例ではなく、公職選挙法によって定められた公のルールですので誤用に注意しましょう。

さいごに

ここでは「告示・公示・公告」の違いについて解説しましたが、いかがでしょうか。

大きな違いは「主体の範囲」です。「告示→公示→公告」の順に主体の範囲は広くなっていきます。

使い分けにあたって覚えておくべきポイントは次の3点です。

  • 衆議院議員総選挙と参議院通常選挙では「公示」、それ以外のすべての選挙では「告示」が使われる。
  • 私的団体であっても公の機関と同一視できる団体であれば「公示」の主体となれる。
  • 小さな私的団体は「公示」の主体とはなれないが、法的な性質の内容に限り「公告」を使う。

「告示」「公示」「公告」は似た意味なので使い分けが大変です。本記事で紹介した例文なども参考にしながら、「告示・公示・公告」の正しい使い分けを練習してみてくださいね。

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