突然ですが、「拘泥」という言葉の意味や使い方をご存知ですか?
新聞や書籍などで目にすることがありますよね。上司や目上の人など、比較的年配の方が使う言葉なので、若い人には馴染みが薄い言葉かもしれません。
ですが、ビジネスシーンでは様々な年代の人と話す機会があります。会話のなかで上司から「拘泥するなよ」と言われたとき、意味がわからないとどう対処したらよいのか困りますよね。
ここでは「拘泥」の意味や使い方を詳しく解説します。「拘泥する」の類語や対義語も、例文をあげて紹介するので、普段の会話や文章に適切に盛り込めるよう、是非参考にしてくださいね。
「拘泥」の意味・使い方
「拘泥」の読み方は「こうでい」です。「拘」という漢字は「く」とも読むので「くでい」と読み間違う方もいますので、気をつけましょう。
「拘泥」は「こだわること。必要以上に気にすること」という意味です。
「拘泥」の「拘」の漢字には「とらえる。つかまえる。こだわる」という意味があり、「泥」は「泥む(なずむ)」と書いて「物事が滞る。心がとらわれる。執着する」という意味があることから、「拘泥」は「必要以上に気にする」という意の言葉となります。
つまり、こだわりが強すぎて周りが見えなくなってしまうことを表す語なのです。
また、「拘泥」はネガティブな表現をするときに使う言葉です。たとえば、こだわりすぎて本来取るべき行動がとれなくなっているときや、気を取られてしまって正しい判断ができなくなっているときに使います。
そのため、相手が何かに集中しているとき、「妥協を許さない」「ブレない信念を持っている」といったポジティブな意味で「拘泥」を使うのは不適切です。
「拘泥」はネガティブな状態を表すときのみ使うよう、くれぐれも注意しましょう。
【例文】
- 勝敗に拘泥する余り、スポーツマンシップを忘れている。
- 自分の理想に拘泥することなく、周りとの和を第一に考えて欲しい。
- 決めごとに拘泥することなく、楽しむことが一番大切だ。
「拘泥」の語源・由来
「拘泥」がなぜ「こだわること」という意味を表すのか、その理由はそれぞれの漢字の意味から読み取れます。上でも述べましたが、「拘」「泥」の漢字には下記の意味があります。
- 拘:とらえる。つかまえる。かかわる。こだわる。
- 泥:水を多く含んだ土。にごる。けがれる。なずむ。
「泥」の意味の「なずむ」は、「そのことに心がとらわれる。こだわる。執着する」「ひたむきに思いを寄せる。執心する」という意味があります。つまり、「拘泥」とは「こだわる」という意味の漢字を重ねて強調した言葉なのです。
「拘」という漢字は「拘束」といった熟語でも使われますが、ひとつのことに囚われ、つかまえられる「拘」と、ぬかるんで足を取られやすい「泥」という意味からも、「拘泥」の持つネガティブなイメージが連想できますね。
「拘泥」の類語・言い換え表現
「拘泥」は日常生活ではあまり使わない言葉なので、相手に意味が正確に伝わらない場合もあります。使う場面や相手によっては、普段の会話では下記のような類語に言い換えるといいでしょう。
【類義語】
- 執着(しゅうちゃく)
- 固執(こしつ)
- 執心(しゅうしん)
- かかずらう
- 囚われる
- こだわる
「固執」には「こしゅう、こしつ」の2通りの読みがあります。本来「こしゅう」が正式な読み方なのですが、今では「こしつ」も広く一般に定着しているので誤用とは言い切れません。
「執着」「執心」「固執」は漢語なので、少し堅い印象を与えるので、文章やあらたまった場での使用がふさわしいです。
反対に、「こだわる」「かかずらう」「囚われる」は和語なので、相手に柔らかい印象を与えます。日常会話での使用は「こだわる」「かかずらう」「囚われる」がふさわしいでしょう。
また、「執着」「固執」「かかずらう」「囚われる」は拘泥と同じく、ネガティブな文脈で使われることが多いですが、「こだわる」は良い意味でも悪い意味でも使える言葉です。相手や場面、そして文脈に合わせて、言葉を使い分けてくださいね。
【例文】
- 好きなものにはとことん執着する。
- 目の前の問題点に固執しすぎて、本質が見えなくなっている。
- 彼女は今、あのアイドルにご執心だ。
- そんなささいな事にかかずらっている暇はない。
- 過去に囚われていては、前に進めない。
- 素材にとことんこだわった一品。
「拘泥」の対義語
「拘泥」の対義語には以下のようなものがあります。
- 没却(ぼっきゃく)
- 諦めがよい
- 往生際が良い
- 潔い
- 諦観
- 執着しない
- こだわらない
- 拘泥しない
「没却」は「無視すること、念頭におかないこと」という意味です。
「執着しない」「こだわりがない」は「拘泥」の類義語である「執着」「こだわる」を打ち消した表現です。「執着しない」「こだわりがない」に比べて、「拘泥しない」はさらに強い表現となります。ですから、「拘泥しない」は相手の強いこだわりを戒めたい場合などに使うのが適切です。
【例文】
- その問題点については、重要度が低いため没却した。
- 非常に諦めがよく、失敗しても気持ちを切り替えるのが上手だ。
- 彼はあまり物に執着しない性格であり、いわゆるミニマリストだ。
- あまりこだわりがないため、どの担当になろうとも構わない。
- 相手の言動にあまり拘泥しないで、いつも通り応対するべきだ。
さいごに
ここでは、「拘泥」の意味や使い方について解説しましたが、いかがでしょうか。
「拘泥」は「こだわること。必要以上に気にすること」という意味です。こだわりが強すぎて周りが見えなくなっている、といったネガティブな表現をするときに使う言葉なので、相手を褒めるときはくれぐれも避けましょう。
由来や、類語・対義語も覚えておくとより知識や理解が深まるので、このタイミングに習得してくださいね。