「慣行」「慣習」「慣例」といった言葉をご存知でしょうか?
行事や習わしなどを行うときによく用いられる言葉で、「慣行にならって」「慣習に従い」「慣例となっている〇〇」といった使い方が一般的です。
よく似たこれらの言葉ですが、「慣行」「慣習」「慣例」の違いが判らず困っていませんか?また、よくわからないまま何気なく使ってしまっている方も多いのではないでしょうか。
漢字も意味もよく似た言葉なので混同して使われがちですが、実は意味が違います。
ここでは「慣行」「慣習」「慣例」の言葉の意味と使い分け方について解説していきます。
「慣行」の意味・使い方
「慣行」の読み方は「かんこう」です。
「慣行」の意味は「古くからの習わしとして行われていること」です。
ある地域や団体などで昔から行われている行事を指して使う言葉です。また、単純に「常に行うこと」といった意味もあります。
【例文】
- 慣行のラジオ体操に参加する。
- 農山村に残る慣行に従い、祝言を上げる。
- 慣行にならって式典を執り行う。
- 営業部では、新入社員が入社すると、部署を上げて歓迎会を開くことが慣行となっている。
「慣習」の意味・使い方
「慣習」の読み方は「かんしゅう」です。
「慣習」の意味は「ある社会で受け継がれている伝統的なしきたり。生活上の習わし」です。
意味にもある通り、「伝統的な」という意味合いが強い言葉であり、地域社会に昔から根付いてきたしきたりのことを「慣習」といいます。
【例文】
- 収穫の時期には村を挙げて豊穣祭を行うことが慣習となっている。
- 村の慣習に従い、祝言の際には村長へ挨拶に行く。
- 年越しそばをいつ食べるかは地域の慣習によって異なる。
「慣例」の意味・使い方
読み方は「かんれい」です。
「慣例」の意味は「繰り返し行われて習慣のようになっている事柄。ならわし、しきたり」です。
【例文】
- 月末の朝礼で営業成績最優秀者を発表することが慣例となっている。
- 慣例に従い会長の挨拶から式典は始まった。
- 昨年の優勝校が選手宣誓を行うことが慣例となっている。
- 慣例に従いお世話になっている取引先に新年のあいさつに伺う。
「慣行・慣習・慣例」の違い・使い分け方
「慣行」「慣習」「慣例」は似た意味をもつ言葉ですね。それぞれの言葉の違いをお伝えします。
「慣習」は「伝統的なしきたり」とあるように、地域や社会に昔から代々伝わる事柄で、その社会に属する人にとっては「やるべきこと」であり、やや拘束力のある言葉です。
一方で「慣行」は「やるべきこと」といったニュアンスはなく、もう少し広い意味で使います。昔からのしきたりを指す場合もありますし、習わしとして行う事柄を指す場合もあります。
また「慣習」は、地域・社会に伝わる事柄を指しますが、「慣行」は会社や学校で行われる行事などにも使います。
続いて「慣例」ですが、「慣行・慣習」とは違い、繰り返す中で習慣化されていった事柄を指します。例えば、「会社の朝礼で成績優秀者を発表したところ、社員の士気が上がったので発表の機会を設けていくうちに、次第にそうすることが当たり前になっていった」というような事柄が「慣例」です。
【例文】
- 毎年冬になると、早朝マラソンをして体力をつけることがわが校の慣行となっている。
- 日本では3歳・5歳・7歳の年に、晴れ着に身を包み神社にお参りすることが慣習となっています。
- 女子社員でお金を出し合い、バレンタインデーに上司に義理チョコを渡すことが慣例となっている。
さいごに
「慣行」「慣習」「慣例」の意味の違いや使い方について例文付きで解説してきました。
とてもよく似た3つの言葉ですが、少しずつ意味の違いがありましたね。3つ言葉の意味の違いはおわかりいただけたでしょうか?
地域に伝わる伝統的な事柄は「慣習」、団体・会社などで以前からならわしとなっている事柄は「慣行」、繰り返しの中で習慣のようになっていった事柄は「慣例」でしたね。
日本語にはよく似た言葉がたくさんありますが、それらをしっかり使い分けていくとより美しい日本語となるのではないでしょうか。
今回の記事を通して「慣行」「慣習」「慣例」の3つの言葉を使い分けられるようになっていただければ幸いです。