「可及的速やかに」は日常生活ではなかなか見聞きする機会のないフレーズですが、ビジネスシーンでは度々登場する言葉です。なんとなく急かすような意味合いだということは、ご存知の方も多いと思います。
しかし、もし自分が「可及的速やかに」を使う側になった場合、誤った使い方をしないように正しい知識を持っている必要があります。
ここではそんな「可及的速やかに」の意味と使い方を、例文も使ってご紹介します。柔らかい印象となる言い換え表現やクッション言葉も紹介していますので、是非参考にしてくださいね。
「可及的」の意味
「可及的」の読み方は「かきゅうてき」です。
「可及的」の意味は、「及ぶかぎり。できる限り。なるべく」です。漢文の「可レ及」、つまり「及ぶ可く(およぶべく)」が語源となっています。
「可及的」の使い方
「可及的」は副詞なので、動詞や形容詞を修飾するために用います。一般的には「可及的速やかに」以外の使い方をあまり見かけることはありませんが、他にも「可及的…に」「可及的に」といった使い方が可能です。
「可及的」は硬い表現として、ビジネスシーンだけでなく医学分野、行政文書などでも使われます。
「可及的」を使った例文は以下の通りです。
【例文】
- 制度が改定したことを可及的広範に知らしめる。
- 事の経緯について、可及的詳細に調べる必要がある。
- 文章を映像に直すべく、想像を可及的に広げていく。
「可及的速やかに」の意味・使い方
「可及的速やかに」は最も広く知られている「可及的」の使い方です。「速やかに」の意味は「物事の進行がはやいさま。時間をおかずにすぐ行うさま」です。したがって、「可及的速やかに」の意味は「できるだけ早く」となります。
「可及的速やかに」は行政文書において、ひとまとまりのお役所言葉として扱われます。そもそも急がせる目的のお役所言葉には「直ちに」「遅滞なく」「速やかに」があり、「直ちに」から強制力が強い順にこの3つを使い分けます。「なるべく」という意味の「可及的」にはあまり強制力の強い言葉はそぐわないため、セットとして「速やかに」がよく使われるというわけです。
「可及的速やかに」は硬い場面で使われる表現なので、カジュアルなシーンや親しい間柄にはふさわしくありません。この場合は、柔らかい印象の「なるべく早く」「できる限り早く」といった言葉を使いましょう。
「可及的速やかに」を使うのに適切な相手は、自分自身や身内です。相手に向かって「可及的速やかに」「できるだけ早く」と言うのはかなり強い表現となってしまいます。相手に対して使うなら、強く急かすことが妥当かどうか状況をよく吟味する必要があります。
もし相手に対して「可及的速やかに」を使う場合は、一緒にクッション言葉の「お忙しいところ大変恐縮ですが」「恐れ入りますが」といったフレーズを使うと丁寧で柔らかい印象となります。ただし、こうしたクッション言葉を併用したとしても、目上の人に対して「可及的速やかに」を使うのは避けた方が無難です。目上の人を「なるべく早く」急かすのは高圧的で失礼となるため、極力使わないようにしましょう。
「可及的速やかに」を使った例文は以下の通りです。
【例文】
- お忙しい中大変恐縮ですが、既に期限が過ぎておりますので可及的速やかに参加の可否をお知らせください。
- スケジュールが空き次第可及的速やかに対処いたしますので、恐れ入りますがいましばらくお待ちください。
- 諸般の事情を鑑み、可及的速やかに野党勢力を統合することが必要という意見も出てきた。
「可及的速やかに」の類語
「可及的速やかに」には以下のような類語があります。
【類語】
- なるべく早く
- できるだけ早く
- できる限り早く
- 一刻も早く
- 早急に
- 迅速に
- 直ちに
- 取り急ぎ
- 至急
- 大至急
- 大急ぎで
相手に対して使う場合、「直ちに」「大至急」「迅速に」はかなり強い語調となります。一方で、仲間内でのかなり砕けた表現として「なるはやで」といった表現も挙げられます。
さいごに
今回は「可及的速やかに」の意味や使い方を、例文と一緒にご紹介しました。いかがでしたでしょうか。
「可及的」は「できるだけ」という意味で、一般的には「可及的速やかに」という形で用いることがほとんどです。「可及的速やかに」のワンフレーズでお役所言葉としても使われることからもわかるように、硬い表現なので文章を引き締めることができます。ビジネスシーンで重宝する言葉ですが、相手の立場や状況によっては使用を避けて、類語に置き換える必要もあります。この記事を参考に「可及的速やかに」の適切な使い方をマスターしておきましょう。