- 「一応ご報告しておきます」
- 「指示された業務は一応完了しました」
- 「学生時代は一応野球をやっていました」
上記のような「一応」という表現、ビジネスシーンで使ってしまってはいませんか?
「一応」は、自信があまりないときや、謙遜したいときに用いられることがありますが、曖昧な表現にあたるので、ビジネスで使用するのは不適切です。
「とりあえず」や「多分」などの言い回しも同様に、避けるのがマナーです。
敬語を使い慣れない新入社員や若手ビジネスマンの方は、これらの表現を間違って使ってしまいがちですが、別の言い回しに変えて伝えれば問題ありません。
ここでは上司や目上の人に使える「一応」の正しい敬語表現についてご説明します。また「とりあえず」や「多分」などの言い換え表現もビジネスメールの例文つきで紹介するので参考にしてくださいね。
ビジネスシーンでは曖昧な表現は避けるのが基本
日常会話の中では、相手に微妙なニュアンスを伝えるために「一応」「とりあえず」「多分」といった言葉を使うことがあると思います。口癖になっている人もいますが、断定を避けたいときには非常に便利な言い回しですよね。
こうした曖昧な言い回しは、文法的には間違いではないのですが、ビジネスシーンでは避けるのが基本です。
その理由は、曖昧な言い回しは意図が正確に伝わらないだけでなく、認識の齟齬が生じて誤解を招く恐れがあるからです。
そもそも「一応」を副詞で使うときの意味は以下の2つがあります。
- 1:ほぼそのとおりと思われるが、念のために。
- 2:十分ではないが、ひととおり。
1の意味で使うときは「一応見直ししましょう」という使い方、2は「一応出来上がりました」という使い方です。
「一応」はもちろん、「とりあえず」「多分」といった言葉は話し言葉であり、ビジネスシーンやフォーマルな場では嫌煙されます。
自信のなさの表れや、主観的で感覚に近い表現となるため、失礼な印象を与えかねません。細かなニュアンスを相手に伝えたいときは、別の言い回しを使いましょう。詳しくは次章でご説明します。
曖昧な言い回しの言い換え表現
「一応」をはじめとした曖昧な表現はビジネスシーンでは避けるべきですが、どうしても使わなければならない場面もあります。そんな時に使える適切な言い換え表現を覚えておきましょう。
「一応」「多分」「とりあえず」などの言い換え方は下記の通りです。
- 「一応」⇒「念のため」
- 「多分」⇒「おそらく」「おおよそ」
- 「できるだけ」⇒「可能な限り」「精一杯」
- 「とりあえず」⇒「まずは」「取り急ぎ」
- 「はやめに」⇒「迅速に」
左の話し言葉に比べると、右の言い換え表現のほうがフォーマルのため、ビジネスシーンにふさわしいことがわかりますね。
ちなみに、社外の人とのビジネスメールやビジネス文書のやり取りをするときは、これらの言い換え表現も好ましくありません。
曖昧な回答はトラブルのもとになるため、確証のある返答以外はしないように気をつけましょう。
「念のため」を用いたビジネスメール例文
ここまでで曖昧な言い回しの言い換え表現についてご説明してきました。つづいてはビジネスメールの例文で「一応」の言い換えである「念のため」の使い方を確認してみましょう。
連絡・報告メール
「念のため」は、上司や同僚相手に連絡や報告をする際に頻繁に使われる表現です。業務の進捗や上司の耳に入れておきたいちょっとした報告などに広く使います。
件名:株式会社〇〇様との商談の件 〇〇部長 お疲れ様です。△△です。 来週〇日の株式会社〇〇様とのご面談につきまして、 ご同行の理由は、先方が当社に期待されている〇〇に関して、 よろしくお願い申し上げます。 ================== |
連絡や報告をするときの「念のため」を使ったその他の例文は下記のとおりです。
- 昨日お送りした報告書につきまして、念のため下記に補足いたします。
- 先日お伝えした明日のミーティングが延期となりました件、念のため再度お知らせいたします。
- 競合他社の参考データを念のため再送いたします。
依頼・催促メール
「念のため」は依頼や催促をする場合にも使います。
特に、返事を催促する場合には、通信手段の不調や誤解などといった可能性にも考慮し、直接的な催促を避けて「念のため」を使った遠回しに催促する方法もあります。
件名:〇月分請求書の件 株式会社〇〇〇〇 平素より大変お世話になっております。 株式会社△△、経理部の△△でございます。 先月分の請求書についてのご連絡なのですが、 事務処理の関係上、恐れ入りますが それ以降になりますと、 未発行の場合は至急ご郵送のお手続きをお願い申し上げます。 ご請求内容を下記に記載致します。 ■未着のご請求内容 なお、本メールと行き違いになっている場合は何卒ご容赦ください。 それでは今後とも宜しくお願い申し上げます。 ================== |
依頼や催をするときの「念のため」を使ったその他の例文は下記のとおりです。
- そちらでも間違いがないか、念のため照合していただけますか。
- まだ申込書をご提出いただけておりませんが、念のため再度ご確認いただけますか。
- 念のため、こちらの内容をFAXでも送っていただけますと幸いです。
確認メール
書類や資料の確認の際にも「念のため」を使うことができます。上司や取引相手に資料の内容が間違っていないかといった確認だけでなく、メールや書類が相手に届いているかどうかの確認にも使うことができます。
件名:〇〇(商品名)発注のご依頼 株式会社〇〇〇〇 お世話になります。 株式会社△△・営業部の△△と申します。 この度はご多忙にもかかわらず、お見積もりをお送りいただき お見積書の内容を社内で検討したところ、 つきましてはご提示頂いた金額にて 念のため、注文内容を下記に記載いたします。 ・商品名:〇〇 なお、販売状況によっては追加注文も検討しております。 引き続きご対応の程、何卒宜しくお願い申し上げます。 ==================== |
確認をするときの「念のため」を使ったその他の例文は下記のとおりです。
- 氏名と生年月日を念のため、伺ってもよろしいでしょうか。
- 送付した資料を受領いただきましたら、念のためご連絡ください。
さいごに
ここでは「一応」や「とりあえず」といった曖昧な表現は、ビジネスシーンで使うのは不適切だとお伝えしました。
誤解を招く恐れがあることから、できる限り避けたほうが無難です。
どうしても曖昧な表現を使いたい場合は「一応」は「念のため」、「できるだけ」は「可能な限り」「精一杯」などと言い換えるのが適切です。
この機会に、ビジネスシーンでふさわしい言い回しができるように覚えておいてくださいね。