「致しました」の正しい使い方はご存知ですか。
目上の人にメールや書状を送るときによく使われる表現ですね。
「しました」や、「致しました」の平仮名表記の「いたしました」とは、どのように使い分けをすべきなのでしょうか。
ここでは「致しました」の正確な意味や、「しました」「いたしました」との使い分け方をご説明するので参考にしてくださいね。
目次
「致しました」の意味
「致しました」は「する」の過去形「した」の謙譲語です。自分の行為をへりくだることで、相手を立てて敬う気持ちを表現した言い回しです。
「致しました」は様々なフレーズに付けることで簡単に敬語表現が作れるため、ビジネスシーンでは「承知いたしました」「ご連絡いたしました」といったように頻繁に使われます。
「致しました」と「しました」の違い
「する」の過去形「した」の敬語には、「致しました」だけでなく「しました」もあります。これらにはどのような違いがあるのでしょうか。
「致しました」と「しました」の使い分け
「致しました」と「しました」はどちらも敬語であり、ビジネスシーンでの使用は差し支えありません。
それでは「致しました」と「しました」はどのように使い分ければいいのでしょうか。「致しました」と「しました」の使い分け方は、敬語の種類に注目すれば理解しやすくなります。
敬語には大きく分けて三種類あり、尊敬語、謙譲語、丁寧語に分けられます。
- 尊敬語:相手の動作に対して使い、相手を立てる表現
- 謙譲語:自分の動作に対して使い、自分がへりくだることで相手を立てる表現
- 丁寧語:丁寧な言い方
この分類に当てはめると「致しました」は謙譲語、「しました」は丁寧語となります。
話し相手が上司や取引先といった目上の人の場合は謙譲語の「致しました」を使うのがふさわしいといえます。謙譲語を使って自分がへりくだることで、相手との上下関係を明確に表現することができます。したがって、目上の人には謙譲語「致しました」を使う方が良いでしょう。また、お知らせ文などで複数人に周知を促す文面で使う場合にも「致しました」を使うのが一般的です。
なお、上で明記している通り、謙譲語は自分の行為をへりくだることで相手への敬意を表現します。そのため相手の行動に対して謙譲語を使うのは間違いです。例えば「先日はご足労いたしまして」や「ご了承いたしましてありがとうございます」といった使い方はNGです。
正しくは「いただく」「くださる」を使って「先日はご足労いただきまして」や「ご了承くださいましてありがとうございます」とします。
それでは「致しました」と「しました」の違いを例文で見比べてみましょう。
【違い1】
- 委細承知いたしました。
- 委細承知しました。
【違い2】
- 後日、改めてご連絡を致します。
- 後日、改めてご連絡をします。
【違い3】
- 皆様のおかげで、無事に運用を開始いたしました。
- 皆様のおかげで、無事に運用を開始しました。
並べてみると、「致しました」の方が「しました」に比べて丁寧の度合いが強いことがわかりますね。
「致しました」と「いたしました」の違い・使い分け方
ところで、「致しました」は漢字表記、ひらがな表記のどちらがふさわしいのでしょうか。「致しました」をどう表記するかは、文章内での役割によって異なります。
補助動詞として使うときは「いたしました」
「致しました」を補助動詞として使うときは「いたしました」とひらがなで表記します。補助動詞とは、読んで字のごとく、他の語に付いて補助をする働きの動詞です。
「試してみる」には「みる」という動詞が含まれますが、これには本来の「見る」という意味はありません。「みる」は「試す」という動詞を強めるために付属している語です。これが補助動詞です。
補助動詞としての「いたしました」には、以下の例文のようなものがあります。
- 本件につきまして、くれぐれもよろしくお願いいたします。
- すぐにお調べいたしますので、お待ちください。
- 気に入ったようなら、この本をお貸しいたします。
基本的には補助動詞としての「いたしました」はひらがなで表記しますが、実際のビジネスシーンでは、固い印象を持たせたいという理由で敢えて「お願い致します」といったように漢字で表記する場合もあります。
これも必ずしも間違いとは言い切れないため、実際に使う際は社内のルールや慣例に従うと良いでしょう。
単独の動詞として使うときは「致しました」
「致しました」を単独の動詞として使う場合には、「致しました」と漢字で表記します。
単独の動詞としての「致しました」には、以下の例文のようなものがあります。
【例文】
- 先方には、経緯のご報告を致しました。
- ご希望に沿った商品のお届けを致しました。
- このプロジェクトで開発した新技術の特許申請を致しました。
実際のビジネスシーンでは、補助動詞としての「いたします」が圧倒的に多いです。「致します」の正確な表記を心掛けたいときは、文章中での役割に注目してみましょう。
さいごに
ここでは「致しました」の意味や使い方についてお伝えしましたが、いかがでしょうか。
「しました」や「いたしました」と混同して使っていた方も少なくないと思います。
些細なことかもしれませんが、この機会に覚えておくとよいでしょう。最後までお読みいただきありがとうございました!