「いただきたく存じます」は、ビジネスシーンで使う表現のひとつですね。メールやビジネス文書、手紙などでよく目にします。
あらたまった場面で相手に依頼をしたりするときに使える便利な表現ですが、意味や使い方を誤解している人も多いようです。
「どんな状況で使うのが正しいの?」「二重敬語じゃないの?」と聞かれたら、あなたは自信を持って答えることができますか?
ここでは「いただきたく存じます」の敬語の正しい意味や使い方とともに二重敬語かどうかについても詳しく解説します。類語や言い換え表現についてもお伝えするので参考にしてくださいね。
目次
「いただきたく存じます」の意味・使い方
「いただきたく存じます」は「してほしいと思います」という意味であり、「してください」をより丁寧にした敬語表現です。
上司や取引先など、目上の人に何かをお願いするときの敬語表現として、メールや文書で使われることが多い言葉です。
「いただきたく存じます」は「いただきたく」と「存じます」の2つの言葉を組み合わせた言葉であり、「いただきたい」は「ほしい」の謙譲語、「存じます」は「思う」の謙譲語のため、目上の人にへりくだった表現をするときに使います。
【例文】
- こちらの用紙にご記入いただきたく存じます。
- 明朝10時にお越しいただきたく存じます。
- 郵送にて資料をご送付いただきたく存じます。
- 今後もマナーについてご教示いただきたく存じます。
「いただきたく」は「〜してもらいたい」の意味で、「〜」の部分に入る言葉を助ける言葉(助詞)なので、単独で使うことはできません。上記の例文では「ご記入」「お越し」「ご送付」「ご教示」が、その「〜」の部分です。
「いただく」と「頂く」の違い
「ひらがなにするか漢字にするかの違い」と思っている方も多いようですが、実は「いただく」と「頂く」は同じ意味ではありません。上記でも述べましたが、「いただく」は助詞。前にある動詞や形容詞を助ける言葉です。
「頂く」は「ありがたくもらう」という意味で、土産や贈り物を受け取ったときや、「飲む」や「食べる」ときに動詞として使う言葉です。そのため、「頂きたく存じます」の使い方はふさわしくありません。正しくは「いただきたく存じます」です。
「頂」の漢字は「いただき・ちょう」と読み、「頂上」「山頂」「山の頂き」という使い方をします。意味は「いちばん高いところ」です。
そのため「頂く」は、目上の人からもらった物を高く捧げ持ち、ありがたい気持ちを表す言葉なのです。ちなみに、「頂く」にはさらに敬意を表すニュアンスの強い「戴く(いただく)」という書き方もあります。
さらには「頂戴(ちょうだい)する」という表現もありますが、「頂戴」も「もらう」の謙譲語で「結構なお歳暮のお品を頂戴し、誠にありがとうございました」などと強い敬意を表すときに使います。
「いただきたく存じます」は二重敬語?
「いただきたく存じます」には謙譲語が二つ使われていることから、二重敬語のためマナー違反ではないか?と疑問に感じる人もいるかもしれませんね。
結論からお伝えすると、「いただきたく存じます」は二重敬語ではありません。
二重敬語というのは、一つの言葉に敬語を重ねることをいいます。丁寧な表現を心がけたつもりが、相手に失礼な印象を与える敬語の間違った使い方です。
二重敬語の例には次のようなものがあります。
- ×:お承りました ⇒ 〇:承りました
- ×:おっしゃられる ⇒ 〇:おっしゃる
- ×:ご覧になられる ⇒ 〇:ご覧になる
ただし、二重敬語のなかには、本来は間違いではあるものの、慣例として定着している言葉もあります。
- お召し上がりになる
- お伺いする
- お見えになられる
言葉の使い方は、時代の変化によって少しずつ変わっていくもの。今後もこうした新しい認識は増えていくことでしょう。
「いただきたく存じます」のビジネスシーン別の文例
「いただきたく存じます」の使い方を、ビジネスシーン別に例文で見てみましょう。
- 今後ともご指導いただきたく存じます。
- こちらの資料にお目通しいただきたく存じます。
- お気付きの点がありましたら、ご指摘いただきたく存じます。
- 来週の商品開発会議にご出席いただきたく存じます。
- 見積書をご確認いただきたく存じます。
- ぜひ、こちらのサンプルをお試しいただきたく存じます。
- こちらのプランをご検討いただきたく存じます。
- 返品はご遠慮いただきたく存じます。
- 何卒お力添えいただきたく存じます。
「いただきたく存じます」は目上の人に丁寧に依頼する表現であり、文末を締めるにもふさわしい便利な言葉です。上手く使いこなしましょう。
「いただきたく存じます」を使ったビジネスメールの例文集
アポイントを取りたいとき
件名:打ち合わせのお願い 株式会社〇〇〇〇 いつもお世話になっております。 先日ご依頼をいただきました、 ご多忙のところ恐縮ですが、 つきましては、〇〇様のご都合のよろしいお日にちを 何卒よろしくお願い申し上げます。 ==================== |
そのほかのアポイントの依頼メールの文例は「アポイントの依頼メールの文例集」をご覧ください。
教えてほしいとき
件名:会議資料に関するご相談 〇〇部長 お疲れ様です。△△です。 来週開かれる営業会議の件で 現在、会議資料を作成しているのですが、 また、記載する場合は、企業名、売上予想金額のみの お忙しいところ恐れ入りますが、 ==================== |
「いただきたく存じます」の言い換え・類語
相手方に依頼したいことが一つではないとき、文中に「いただきたく存じます」が何度も出てくると幼稚な印象になるため、別の言い方に言い換えるのが基本です。「いただきたく存じます」を言い換えるには、次のような類語を用います。
「今後ともご指導いただきたく存じます」の言い換え表現
- 今後ともご指導の程、よろしくお願い申し上げます。
- 今後ともご指導いただければ幸甚に存じます。
- 今後ともご指導お願いします。
- 今後ともご指導ください。
「こちらのプランをご検討いただきたく存じます」の言い換え表現
- こちらのプランをご検討くだされば幸いです。
- こちらのプランをご検討いただければと存じます。
- こちらのプランをご検討のほど、お願いいたします。
- こちらのプランをご検討願います。
- こちらのプランをご検討ください。
「返品はご遠慮いただきたく存じます」の言い換え表現
- 返品はご遠慮願います。
- 返品はご遠慮いただいております。
- 返品はご遠慮ください。
- 返品はご遠慮くださるようお願いします。
まとめ
「いただきたく存じます」は、目上の人に何かをお願いするときに使う丁寧な敬語表現だと理解できましたか?
反面、親しい間柄の同僚や部下に使うと、堅苦しい印象を与えるので言い換え表現を上手く使うなど、場面に応じた使い分けを心がけましょう。