突然ですが、「意思」と「意志」の違いをご存知ですか?
「意思」と「意志」は似た漢字、似た意味を持つ言葉ですが、使い方に細かな違いがあります。どのようなときにどちらの漢字を使えばよいのか、曖昧になってしまっている人も少なくありません。
ここでは「意思」と「意志」の違いについてお伝えします。それぞれの意味や使い方、類義語や対義語もお伝えするので参考にしてくださいね。
「意思」の意味・使い方
「意思」の意味を辞書で調べると「何かをしようとするときの元となる心持ち」とあります。
「意思」の「意」は「心に思うこと。気持ち。考え。意見」という意味があり、「思」は「こまごまと考える。思い巡らす」という意味なので、分かりやすく言えば「意思」は「自分の考えや思い」を表す言葉です。
「意思」を使った四字熟語には「意思表示」や「意思疎通」「意思決定」があります。ビジネスシーンや日常でも見聞きする言葉ですね。
「意思表示」は「自分の考え(意思)をはっきりと示すこと」、「意思疎通」は「お互いの考えを相手に伝え、理解を得ること」という意味です。
また「意思決定」はビジネスシーンで聞く言葉ですが、簡単に言えば「考えをまとめて最適なものを選ぶこと」です。
これらの熟語からも「意思」には「考えや思い」という意味があることがわかります。
【例文】
- 本人の意思を尊重すべきである。
- 飲み会に参加する意思があるのかどうかを確認しておいてください。
- 進学については本人の意思に任せる。
- 治療方法は手術と投薬が選べるので、まずはご本人の意思を確認してみてください。
- 私立大学を受験したいという意思を、両親に伝えた。
【類義語】
- 思い
- 考え
- 意見
- 気持ち
- 意
- 心
- 旨趣(ししゅ)
- 趣意(しゅい)
「意志」の意味・使い方
「意志」の意味は下記の2つです。
- あることを行いたい、または行いたくないという考え。意向。
- 目的や計画を選択し、それを実現しようとする精神の働き。
一言でいえば「ある物事を成し遂げようとする積極的な気持ち」を表した語ですね。
「意志」の「志」には「ある方向を目ざす気持ち。心に思い決めた目的や目標」や「心の持ち方。信念」という意味があり、意志の強さを表すときは「意志が強い/弱い」や「意志が固い」「意志を貫く」といいます。
「意志」を使った四字熟語には「意志薄弱(いしはくじゃく)」や「意志堅固(いしけんご)」があります。
「意志薄弱」の意味は「意志が弱くて決断することができなかったり、物事を我慢する気持ちの弱いさま」であり、「意志堅固」は「意志がかたく、ゆるぎないこと」です。
両者は反対の使い方をしていますが、どちらも意志の強さ・弱さを表した言葉ですね。
【例文】
- 大会で優勝するという強い意志を持ち、日々トレーニングを行っている。
- 私は意志が弱いため、健康のためと分かっていても食生活を改善できません。
- 困難な状況に陥ってもくじけないで意志を貫くことが重要だ。
- 「意志が強い人」と「頑固な人」は同じではない。
【類義語】
- 意力
- 決心
- 決断
- 志
「意思」と「意志」の違い・使い分け方
ここまでは「意思」と「意志」の意味や使い方についてお伝えしました。では、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
まず「意思」とは「自分の考えや思い」であり、感情や意識を単に持つことを表した語ですね。「考え」という言葉で置き換えられます。
一方で「意志」は、「~したい」という積極的な気持ちや強い感情が込められている言葉です。
そのため、「考え」を伝えたいのか、「積極的な気持ち」を伝えたいのかによって、「意思」と「意志」を使い分ける必要があります。
たとえば、話し手の単なる考えを示すときは「意思表示」ですが、前向きな気持ちや意向を伝えるときは「意志表示」となります。
「意志(意思)の疎通を欠く」という表現でも同じことがいえますね。
また「意思」は法律用語として用いられるのに対して、「意志」は哲学・心理学用語として多く用いられます。
さいごに
ここでは「意思」と「意志」の違いや意味についてお伝えしましたが、いかがでしょうか。それぞれの言葉の違いや使い方は明確になりましたか?
言葉の意味だけで覚えると忘れてしまいがちなので、「思」と「志」の漢字自体の意味や、類語とあわせて覚えておくとイメージがつかみやすくなるのでオススメです。
日常生活のなかはもちろん、ビジネスシーンでも馴染み深い言葉なので、この機会に覚えておいてくださいね。