「意向」は日常生活でも見聞きする言葉なので、意味はなんとなくご存知かと思います。
しかし、正しい言葉遣いが求められるビジネスシーンにおいても、自信を持って「意向」を使いこなせているでしょうか。
ここでは「意向」の意味と使い方をご紹介します。
例文や類語も挙げていますので、この機会に是非「意向」の正しい使い方をマスターしてくださいね。
「意向」の読み方・意味
「意向(いこう)」の意味は、「どうするつもりかという考え。心の向かうところ」です。
「意嚮」という漢字表記もありますが、常用漢字ではないためビジネスシーンではまず使用しません。
ビジネスシーンでは、一般的に「考え」の丁寧な言い方として「意向」を用います。また、「考え」からさらに意味を広げて、「希望」「主張」「意見」「意思」「意志」「所存」「~するつもり」を言い換えた言葉として使うことも可能です。
「意向」の使い方(例文つき)
「意向」は敬語ではないため、自分や自社の考えを指す言葉として使います。
自分の考えは「私の意向」、自社の考えは「弊社の意向」と表し、ビジネスシーンでは主に「私の意向としましては」の形で用います。「意向」を使うのは具体的に、自分の考えを目上の人や取引先に伝える、社内の決定事項を取引先に報告するといった場面です。
目上の人や社外の人の考えを指す際は、尊敬語の接頭辞を付けて「ご意向」とします。「ご意向」を使う場面としては、取引先の意見を社内で共有する、取引先の希望を別の第三者に伝えるといった場面が挙げられます。
他にも、「ご意向」は相手に対して「考えを聞いた」もしくは「理解した」ことを伝える返事としても使うことが可能です。その際は、「ご意向、承りました」「ご意向承知しました」といった謙譲語のフレーズを用います。
しかし、これらの言い回しには注意が必要です。「承る」の意味は「受ける。聞く。引き受ける」、「承知」の意味は「知る。承諾する」です。つまり、もし自分が「ご意向を理解した」という意味で発言したつもりでも、相手が「意向を引き受けてくれる」と取る恐れがあります。引き受けるか否か未確定な事柄について「承る」「承知」を使う際は、誤解を生む余地がないよう言葉を補いましょう。
ここまで紹介したフレーズ以外にも、「意向」の後ろには以下のような動詞を付けることができます。
- 意向に沿う
- 意向を聞く
- 意向を汲む
- 意向に従う
- 意向を受ける
- 意向に合わせる
- 意向を確かめる
- 意向を踏まえる
- 意向にそぐわない
それでは、これらの動詞と「意向」の組み合わせについて、例文で実際の使い方を確認してみましょう。「意向」を使った例文は、以下の通りです。
【例文】
- 私の意向としましては、予算面からプランBを進めたく思います。
- 今後の会社の方針について、社長はご意向を固めたようだ。
- この度のお客様のご要望について、ご意向に沿えない場合もございます。あらかじめご了承ください。
- 再度あちらから意向を聞いたうえで、デザイン案を練り直しましょう。
- あちらの意向を全て汲むとなると、到底予算内には収まらない。
- 今後の付き合いを考慮すると、今回はA社の意向に従うのが賢明と思われます。
- 行政からの強い意向を受けて、職員の勤務実態の管理を徹底することとなりました。
- 我々としてもなるべくお客様のご意向に合わせたいと考えておりますので、ご要望がございましたら何なりとお申し付けください。
- 実際の作業に移る前に、もう一度ご依頼者のご意向を確かめた方が良いのではないでしょうか。
- 社長のご意向を踏まえて、即戦力となる人材を積極的に採用する方針とします。
- そのプランは先方の意向にそぐわないので、再検討する必要があります。
「意向」の類語・言い換え表現
「意向」の言い換え表現には、以下のようなものがあります。
【言い換え表現】
- 意志(いし):あることを行いたい、または行いたくないという考え。
- 意思(いし):何かをしようとするときの元となる心持ち。
- 希望(きぼう):あることの実現をのぞみ願うこと。また、その願い。
- ニーズ:必要。要求。需要。
「意志」は何かをしたいという積極的な心の働きのことで、「意向」と同義です。対して「意思」は、何かをしようという時に思い浮かぶ考えや意図を指す言葉で、法律用語でもあります。
また、尊敬語「ご意向」の類語には、以下のようなものがあります。
【類語】
- ご要望(ごようぼう):物事の実現を強く求めること。
- ご意見(ごいけん):ある問題に対する主張・考え。心に思うところ。
- ご所望(ごしょもう):ある物がほしい、またこうしてほしいと、望むこと。
- ご用命(ごようめい):用事を言いつけること。
さいごに
ここまで「意向」についてご説明してきましたが、いかがでしたか。
「意向」の意味は「どうするつもりかという考え」です。ビジネスシーンでは自分や自社の考えを指しますが、尊敬語「ご意向」とすることで相手の考えを指す言葉として用いることができます。
ビジネスシーンでは、自分の考えや今後の展望、決定事項を伝える場面が多々あります。そんな時に使える表現として「意向」を覚えておくと、表現の幅を広げることができますよ。
「意向」を正しく使うために、このページがお役に立てれば幸いです。