「腐心」の意味・使い方・語源|「腐心した」の例文・「苦心」との違い

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「腐心」の意味・使い方・語源|「腐心した」の例文・「苦心」との違い

突然ですが、「腐心」の言葉の意味や使い方をご存知ですか?

新聞やテレビで「政府が導入に腐心し続けてきた〇〇法案」、「銃規制の世論拡大に腐心」というような使い方をしているのを見聞きすることがありますね。

「腐心」には「腐る」という言葉がついているため、知識がなければ悪い意味の言葉かと思ってしまうかもしれません。でも実は、ビジネスシーンでも使うことができる便利な言葉なのです。

ここでは「腐心」の意味や使い方についてお伝えします。「腐心」の語源や類義語についても紹介するので参考にしてくださいね。

「腐心」の意味・使い方

「腐心」の読み方は「ふしん」です。

「腐心」とは「ある事を成し遂げようと心をくだくこと。苦心。心を痛め悩ますこと」という意味です。

意味のなかに「苦心」や「心を痛め悩ますこと」とある通り、苦労することを表す言葉のひとつです。また、「腐心」は肉体的な苦労を表す語ではなく、何かを達成するために、いろいろ「心」が骨を折った、という場合に使われます。

「腐心」の意味を理解する上で気をつけなくてはならないことがあります。それは「気持ちを腐らせる」という意味ではないということです。

思うようにならず気が沈んだり、落ち込んだりすることを「失敗続きで気持ちが腐る」「彼は研究がうまくいかなくて腐っている」「根性が腐っている」という使い方をしますが、「腐心」はこういった悪い意味での使い方はしません。

「腐心」とは、物事が上手く進むように、一生懸命取り組んでいるさまを表す言葉なのです。

【例文】

  • 話題づくりに腐心する。
  • 特別委員会の一員として、予算案の作成に腐心した。
  • オリンピックを前に、交通網をいかに整備すべきかという点に腐心せざるを得ない。
  • 嫌だといえない状況作りに腐心する必要がある。
  • 社員の不満を抑えることに腐心した。
  • 成功を収めるべく、プロジェクトの計画に腐心する。

「腐心」の語源

「腐心」とは「ある事を成し遂げようと心をくだくこと。苦心」という意味ですが、なぜ「腐心」と書いてそのような意味になるのでしょうか。語源をたどってみましょう。

「腐心」の「腐」という漢字は「府」に「肉」と書きますね。この「府」には「倉」という意味があり、「倉にしまいこまれた肉が腐る」という意味を表しています。そこから、肉が徐々に形を変えて崩れていくさまを比喩として使われるようになりました。

古くなって形が崩れたものを「腐朽(ふきゅう)」と表現したり、古くなって何の感動も引き起こさない、ありふれたものを「陳腐(ちんぷ)」と表したりしますね。

つまり、そのものが腐ってはいないものの、時間を経て形が変わり、質も劣化することを「腐」という字を使って言い表しているのです。

この「腐心」も同様に、ひとつのことに時間をかけて悩み、考えつめて、心を砕き、そのあげくに心の形が変わってしまった状態を指します。

つまり「腐心」は、心が腐りそうなぐらい、心を痛めるということです。

決して悪い意味ではなく、ある物事を解決したり成し遂げたりするために、そこまで思い悩み、考え、心を砕いた、というニュアンスがこの語には込められているのです。

「腐心」と「苦心」の違いは?

「腐心」と似た言葉に「苦心」があります。

「苦心」と「腐心」は、ともに「何かを成し遂げようとして苦労すること」を表す言葉ですが、まず用法に違いがあります。

「腐心」は名詞形で使われることはほとんどなく、「腐心」を語幹としてサ変動詞「する」と組み合わせた「腐心する」「腐心した」という形で使われることがほとんどです。

一方で、「苦心」は「今までの苦心が水の泡」というように、名詞だけで使ったり、「苦心の労作」というように名詞句で使われたり、「苦心談」のように、ほかの名詞と組み合わせて複合名詞を作ったりします。

また、「腐心」は「心が腐りそうなくらい、心を痛め悩ますこと」という意味なので、「苦心」よりもさらに解決や達成が難しい、大きな悩みを表すときに使います。

使い方を比較した下記の例文をご覧ください。

  • 外国語の翻訳に苦心した。
  • 日本語として違和感のないように腐心した。

「苦心」は、翻訳する上でいろいろ考えたり工夫したり、苦労したりしたことが伝わるのに対し、「腐心」は「いろいろ」ではなく、もっと定義を狭くし、「どこに」腐心したかが伝わってきます。

ただ、この区別はそれほど厳密なものではなく、「会社経営に苦心した」「会社経営に腐心した」のような場合、どちらの言葉も使うことができます。

「腐心」の類語 

「腐心」の類語は下記のとおりです。

  • 苦心
  • 苦心惨憺(苦心を強めた語)
  • 苦労(苦心が主に心を使うのに対し、苦労は心も体も使う意味合いが含まれます)
  • 心労(単に心を砕くだけでなく、心配のニュアンスがあります)
  • 辛労(苦労のニュアンスが強まったもの)
  • 苦慮(苦心して、心配したり考えたりすること)
  • 辛苦(つらく苦しい思いをすること。「辛苦をなめる」という言い方もします)
  • 辛酸(つらく苦しい思い。これも「辛酸をなめる」という言い方をします)
  • 心を砕く
  • 呻吟(うめくこと、苦しみうなること)
  • 苦しむことよりも達成のために「努力」することのニュアンスが強い場合は
  • 悪戦苦闘(困難に打ち勝つために懸命に努力する)
  • 粉骨砕身(力の限りを尽くすこと)
  • 尽力(力を尽くして努力すること)
  • 奮闘(困難に対して力の限り努力すること)
  • 奔走(うまくいくようにあちこちかけまわって努力すること)

などがあります。

さいごに

ここでは「腐心」の意味や使い方、語源について詳しく解説しましたが、いかがでしょうか。

「心が腐って形が変わってしまうほど痛め悩ますこと」という意味を持つのが「腐心」という言葉です。

資料を作成したり、計画を立てたりして、自分がどの点に心を砕いたか、工夫したかを説明する必要がある場面では、「私はこの点に腐心しました」というように、ぜひ使ってみてください。あなたの努力が伝わる言葉です。

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