「反故」の意味や使い方はご存知ですか?
日常会話ではあまり使うことはないと思いますが、「約束を反故にされた」「契約を反故にするようなことがあってはならない」などと、ビジネスシーンでは間々使われる言葉です。
ここでは「反故」の意味や使い方、語源について詳しく解説します。類義語や反対語(対義語)についても例文をあげて紹介するので参考にしてくださいね。
「反故」の意味・使い方
「反故」の読み方は「ほご」です。古くは「ほぐ」「ほうご」「ほんぐ」と読まれていましたが、現代では「ほご」が一般的です。「はんこ」と読み間違えてしまいがちな言葉ですが、間違えないよう注意しましょう。
「反故」の意味は「書き損なったりして不要になった紙。役に立たなくなった物事」です。
「反故」は「反古」と書く場合もあります。
ビジネスシーンの一部では「反故紙」といって使うことがありますが、約束や契約を破ることを「約束(契約)を反故にする」といって使うことが多いでしょう。
【例文】
- 約束を反故にする。
- 約束を反故にされる。
- 約束が反故になる。
- 契約を反故にする。
- 契約を反故にされる。
- 契約が反故になる。
「反故」の語源
もともと「反故」は漢語であり、「反」の漢字は「裏返しにする」、「故」は「使用済みの紙」という意味のある言葉です。
平安時代では朝廷の執務の際、それまでの木簡(もっかん)に代わって紙が使われるようになりましたが、当時、紙は高級品でした。そのため、公式文書でも、使い終わって必要のない紙を裏返して使うのは、ごく一般的なことでした。
また、貴族たちも手習いや絵を書くために紙を使うようになりますが、一枚の紙に何度も何度も字を練習して、紙が真っ黒になった、という話が枕草子にも出て来ます。
その時代、古い紙を裏返して文字や絵を書くことは、当たり前のことでした。
そこから文字や絵を書いた紙で不用になったもの、という意味で「反古(反故)」(ほぐ、ほうぐ、ほご、ほうご、ほんご)という言葉が生まれたのです。
現代では、職場で不要な紙のことを「反故紙」や「裏紙」という言い方をしますが、メモ用紙がわりに利用した人も多いのではないでしょうか。
「反故にする」とは
「反故」は「反故にする」という形で使われることが一般的です。
「反故にする」とは「(1)不要なものとして捨てる。無駄にする」「(2)約束や決まりを取り消したり破ったりする」という意味があります。
(2)は、「反故」のもともとの意味である「書き損なったりして不要になった紙」から少し離れ、慣用的に用いられる言葉です。(1)の意味としては「紙屑にする」とか「不要なものとして捨てる」という意味で使われます。
【例文】
- 便箋を何枚も反故にする。
- すべての計画書をいったん反故にして、新しく作り直すことに決めた。
- 反故にしたはずの紙の中に、重要書類が紛れ込んでいた。
- こんな内容を文書にするなんて、わざわざ紙を反故にするようなものだ。
上記の二つ目の例文は「約束・契約などをなかったことにする。一方的に破棄する」という意味があります。
【例文】
- 業者間での取り決めを反故にする。
- 社長は従業員との約束をことごとく反故にした。
- この政策は、過去、最高裁から下された判例をまったく反故にしたものである。
- かねてから取り交わしていた契約を反故にすることになるのではないかと、気が咎めた。
「反故にする」の類語
「反故」の類義語を紹介します。「反故」には2つの意味があり、使うシーンによって意味合いも変わるので、それぞれの類語をチェックしておきましょう。
「書き損じた紙」や「不要なもの」の類義語は下記のとおりです。
- 書き損じ
- 紙屑
- 書き損ない
- 無用
- ゴミ(反故同然=ゴミ同然)
- 御釈迦(おしゃか)
※欠陥があり、役に立たないものになってしまうことを「御釈迦になる」と言います。もともと町工場から生まれた言葉で、はんだ付けをするとき火が強すぎて失敗したときに「火が強かった=しがつようか(った)」という駄洒落で、四月八日はお釈迦様の誕生日であることから、「御釈迦になった」と言われるようになりました。
「契約や約束を一方的に破る」という意味での「約束を反故にする」の似た表現は下記のとおりです。
- 約束を破る
- 約束を翻す(ひるがえす)
- 約束をすっぽかす
- 契約を破棄する
- 前言を翻す
- 契約を無効にする
- 白紙にする
- なかったことにする
などがあります。
「反故にする」の対義語・反対語
「反故にする」の対義語は「守る」です。その他の言い回しは下記のとおりです。
- 約束を守る
- 約束を果たす
- 約束に従う
- 約束の遂行
- 約束の実行
- 契約を履行する
さいごに
ここでは「反故」という言葉の意味や使い方、語源について解説しましたが、いかがでしょうか。
平安時代からある言葉であり、日本が紙の文化の国だということがよくわかる言葉ですね。
私たちが日常語として使う言葉ではありませんが、契約が重要なビジネスシーンではよく使われる言葉です。
以前「はんこにする」と言っている人がいて、何のことを言っているのだろうとよくよく聞けば、「反故にする」と言いたかったのだとわかりました。こういう間違いをしないように気を付けてくださいね。