あなたは「早い」と「速い」の違いを正しく理解できていますか?
日常生活の中で使う機会の多い「はやい」という言葉。「早い」と「速い」の2種類の漢字で表すことができますね。
使うシーンによって、漢字を使い分ける必要がありますが、正しい使い分け方を理解している自信はありますか?
「スピードがはやい」「朝がはやい」「仕事がはやい」「話がはやい」などの言い回しのときに、どちらの漢字を使うのが正しいかを答えられますか。
ここでは「早い」と「速い」の違いや使い分け方についてご説明します。それぞれの意味や使い方はもちろん、類語や対義語についてもお伝えするので参考にしてくださいね。
目次
「早い」と「速い」の違い
まずは「早い」と「速い」の違いについて解説します。
それぞれの意味と使い方を例文つきで紹介しているのでご覧ください。
「早い」の意味・使い方
「早い」を辞書で調べると、下記の4つの意味が出てきます。
- 1:ある基準より時間があまり過ぎていない。また、ある基準より時期が前である。
- 2:まだその時期ではない。その時がまだきていない。
- 3:簡単である。てっとり早い。
- 4:時間をおかないで次の動作や物事が行われるさまを表す。
1の意味で使うときは「朝早い電車に乗る」や「早いうちに手を打つ」などがあります。
2の意味だと「諦めるのはまだ早い」「結婚はまだ早い」という使い方ですね。3の使い方では「人に指示するより自分でやるほうが早い」「聞く方が早い」などがあります。
簡単に言えば、「早い」は「時間」について言及している言葉といえます。
「早い」の「早」の漢字は「早急」「早速」「早退」などでも使われ、「時間をおかないさま」「通常の時期より早い」という意味があるように、ある基準となる時間や時期より前であることを表す語なのです。
【例文】
- 今年は、例年に比べて梅雨明けが早い。(ある基準より時期が前である意)
- その件を報告するのは、まだ早いのではないですか?(まだその時期ではないという意)
- メールでやりとりするよりも直接会って話したほうが早い。(手間がかからない)
- 早い話、左遷されたということだ。(手っ取り早く言うと)
- 病状の回復が早い。(ある基準より時間があまり過ぎていない)
「速い」の意味・使い方
「速い」の意味は「物事の進む度合いが大きい。動作・進行などがすみやかである」です。
ある動作の完了に要する時間が短いときや、一定時間に動いた距離が大きいときに使われます。
たとえば「返事が速い」や「足が速い」「川の流れが速い」などですね。
「速い」の「速」の漢字は「加速」「高速」「速達」といった熟語でも使われますが、「スピードがはやい。はやさ」という意味を持ちます。
つまり「速い」は、速度やスピードについて言及するときに使うといえます。
【例文】
- 彼は、企画書を作成するのが誰よりも速い。(事務処理のスピード)
- 頭の回転が早い山田さんは、いつも気の利いた返答をしてくれる。(頭の働くスピード)
- 普通電車より速い電車に乗ったので、目的地に到着できた。(スピードが速い電車に乗った)
「早い」と「速い」の使い分け方
前章では「早い」と「速い」の意味と使い方についてご説明しました。それぞれの違いをあらためて簡潔に書くと、下記のとおりとなります。
- 早い:「時間」について言及するとき
- 速い:「速度」や「スピード」について言及するとき
どちらの漢字がふさわしいのか迷った時は、時間とスピードのどちらが「はやい」のかを考えれば自然と答えが見えてきますね。
ただし、「早口」「早業」などの例外もあります。
「早口」は話すスピードが速い人のことを指すので、「速い」の漢字がふさわしいような気がしますね。「早業」も行動がすばやいことを意味するので「速」という漢字を思い浮かべる方も多いですが、どちらも漢字は「早」を使います。
また、よく間違えやすい言葉に「時間が経つのがはやい」があります。ここでは「早い」を使ってしまう方が多いですが、正しくは「時間が経つのが速い」です。
「時間が経つのがはやい」は「物事の進む度合いが大きい」という意味で使われるため、「速い」と書きましょう。
また、「早い」と「速い」のどちらの漢字を使うかによって、言葉の意味合いが変わることもあります。その点を整理しておきましょう。
「足が速い」と「足が早い」の違い
「足が速い」は、走ったり歩いたりするスピードが速いときに使う言葉です。
ですが同じ「はやい」でも、「足が早い」と書くと「食物などが腐りやすい」や「商品などの売れ行きがよい」という意味になります。
「速い」と「早い」の使い方を間違えると、相手に伝わる意味合いも変わってくるので気をつけましょう。
「速い電車」と「早い電車」の違い
なお、「速い電車」とは、各駅停車の普通電車よりも目的地までの到着時間が短いことや、特急や快速などの電車のことを表します。
一方で「早い電車」は、発車時刻が早い電車や朝早くに出発する電車のことをいいます。
両者の使い分けをしっかり覚えておきましょう。
「早い」の類語・言い換え表現
「早い」には下記の類語や言い換え表現があります。
【類語】
- 早期:はやい時期。まだ物事が十分に進行していない時期。
- 早々に:はじめの方に・早めに
- 間もない:物事の始まりから日が浅いこと
【例文】
- 毎年受けている健康診断が、病気の早期発見につながった。
- 彼は、自分の言いたいことだけ言って、早々に帰っていった。
- 入社して間もない社員には、そんなことを説明しても理解できないだろう。
「速い」の類語・言い換え表現
「速い」には下記の類語や言い換え表現があります。
【類語】
- 迅速:物事の進み具合が非常に早いこと
- 速やか:物事の進行がはやいさま。時間をおかずにすぐ行うさま。
- 素早い:行動が非常に早い。敏速である。
- スピーディー:動きが早い様子・物事が能率よく行われるさま
【例文】
- その件に関しては、迅速な対処を求めます。
- まだ報告書を出していない人は、速やかに提出してください。
- 彼の素早いフォローのおかげで、深刻な事態を避けることができた。
- 彼女のスピーディーな伝票処理のおかげで、月末に慌しい思いをせずに済んだ。
「早い」と「速い」の対義語
次は、「早い」と「速い」の対義語を紹介します。
「早い」の対義語には
- 遅い:ある基準より時が過ぎている・時期が遅れている
- 晩い(おそい):ある基準より時が過ぎている・時期が遅れている
があります。また「速い」の対義語は
- 遅い:物事の進む度合いが小さい・動作や進行などに時間がかかる
- 鈍い(のろい):進み具合が遅い・動きがにぶい
があります。「遅い」は「早い」と「速い」両方の対義語となる意味を含むことが分かりますね。「晩婚」などに使われる「晩い」も「おそい」と読みますが、一般的には「遅い」という漢字を使います。
また、「鈍い」は、各駅に停車して進みが遅い「鈍行電車」を思い浮かべると覚えやすいですね。
さいごに
ここでは同じ読みをする「早い」と「速い」の違いや使い分け方について詳しく解説しましたが、いかがでしょうか。
それぞれ時期の早さやスピードの速さを意味していることが分かりましたね。類語からも、意味の違いがはっきり理解できたと思います。
「早い」と「速い」の違いが分かれば、使い分け方で迷うこともないでしょう。ただ、「早口」や「早業」など、例外もあることを忘れないでください。
また、対義語としてはどちらも「遅い」が挙げられます。「晩い」や「鈍い」がどちらの「はやい」の対義語か分からなくなった場合は、「晩婚」「鈍行」という言葉を思い浮かべるとイメージしやすいですよ。
この機会に覚えておいてくださいね。